前原誠司衆議院議員「新しい政党、教育無償化を実現する会を設立させていただきます。少ない人数ながらも新たな道を歩んでいきたい」

国民離脱の前原氏 新党は"教育無償化を実現する会"

国民民主党の代表代行だった前原誠司衆議院議員は11月30日、国会内で会見を開き、国民の所属議員3人と無所属の議員1人を引き連れ、5人で新党"教育無償化を実現する会"を発足すると発表した。

なぜこのタイミングだったのか?たしかに玉木代表と争ったこの夏の代表選挙ではまさに党の路線を問う激しい議論が展開された。自民党に対抗する野党結集を訴える前原氏に対し、玉木氏はいま野党勢力が結集することは難しいとし、与党と政策連携を模索したほうがよいと主張した。

代表戦の結果は前原氏の敗北。その後、党にはとどまり役職も継続されたもののいったん入った亀裂は埋まらなかった。

新党立ち上げの引き金は「トリガー条項」

そして今回、引き金を引いたのがトリガー条項だ。前原氏は国民離脱の理由を会見でこう語った。

前原誠司衆議院議員「今の国民民主党はトリガー条項の凍結解除というものに体重をほとんど乗せて、そして極めて支持率の低い岸田政権との協力を模索する。そういう路線にあるのではないかと思っております。ガソリン代を下げることは大変重要なことですが、それが全てではない」

来るべくして玉木路線との決別の時が来たということなのだろう。そしてこの党名である。

教育無償化を実現する会、いまや多くの政治家、政党が主張する政策がそのまま採用された。 

なぜこの党名に?背景に「連合」と「維新」"前原氏のニ刀流戦術の表れ"

 「教育無償化を実現し、教育予算を少なくとも倍にするということは、日本の今の根本問題を解決するセンターピンになる。我々は政策本位で非自民非共産の野党協力、野党結集を求めていく」

 これは前原氏の発言である。なぜこの党名になったのだろうか?理由は大きく2つ、『連合と維新』である。

 新党関係者によると、国民民主党を抜けたメンバーが主体となる新党のため、そもそもの支持母体である連合からの支援は引き続き受けたい意向がある。その支援を受けやすい政策を掲げなければと考えたのだという。そこで出てきたのが教育無償化である。

 また、「教育無償化」といえば、日本維新の会が看板に掲げている政策である。もとより前原氏と関係が近い日本維新の会の馬場代表は、前原氏の新党発表会見の数時間前に行われた会見で、前原氏に先んじて党名を明かした。そのうえで次のように発言していた。

 日本維新の会 馬場伸幸代表「いつとは言えませんけれども、そういうことを考えているということは事前にお話を聞かせていただいていたという経緯はあります。(新党とは)協調できる部分は積極的に協調していくとそういうことになると思います」

 実際、維新と前原氏は前回の参院選京都選挙区に続き、来年2月の京都市長選挙でも連携をすでに表明している。連合とも維新とも連携しておきたい。党名はいわば前原氏の二刀流戦術の表れなのだ。

新党命名の舞台裏「存在感を発揮するためワンイシューで」

さらに、"教育無償化を実現する会"と命名された舞台裏を取材すると...新党関係者は次のように話した。

教育無償化を実現する会 関係者「この政党名は新党メンバーで話し合い、小さな政治集団が存在感を発揮するためには政策が分かりやすく伝わるようにするべきだという話になり、ワンイシューを党名に打ち出すことを決定しました」

さまざまな党名案が出た中で、自分たちの公約で最も野党が結集しやすいのは「教育無償化」だと、看板として掲げることを決めたという。

教育無償化を実現する会 関係者「教育無償化というワードを入れようというのは最初の方に皆で合致しました。あとは会にするのか?党にするのか?フォーラムにするのか?どうしようかな、という議論でしたね」

ただ、筆者の中で前原氏と教育無償化があまり結びつかない。この点を聞いてみると...

教育無償化を実現する会 関係者「前原氏は2017年ごろから教育無償化や教育予算倍増について強く訴えています。教育無償化は維新だけでなく立憲も掲げている政策で、野党側が一致しやすい政策だと思います。一方、与党側はこれに消極的な姿勢で、教育無償化の必要性は旗印として前面に打ち出すのに、とてもいい政策だと思っていますよ」と返した。

野党再編は実現するのか?維新議員「前原さん=教育?と率直に感じた」

新党は5人で船出した。一寸先は闇の政治の世界、今後の展開によっては維新との合流もあるのではと早くも囁かれている。

では野党再編は実現していくのか?維新側を取材した。日本維新の会所属議員からは新党の党名について、こんな本音も聞こえてくる。

日本維新の会 所属国会議員「政党名は正直びっくりしました。ワンイシューとするにしても前原さん=教育なのか?というところは率直に感じましたね。維新との政策協定も将来的に見据えたものなのかなとこっちは受け止めますよ」と新党の将来的な合流についても、やぶさかではない様子だ。

さらに...

日本維新の会 所属国会議員「党として合流してくれるのも個人的には歓迎、うちは組織を大きくすることを目標に経営計画を作ってやっているので、プラスになる話だと思います。合流するとなれば、1つになった後、主導権を握るのはわが党であってほしいという思いは当然ありますがね」

ただ新党が目指すのはあくまで非自民非共産の野党勢力の結集。教育無償化を実現する会は、維新だけでなく、立憲内部の中道派とも歩調を合わせたいという考えもあるようだ。

一方維新は、立憲も含めた合流や協力に対しては抵抗感を隠せない。

日本維新の会 所属国会議員「僕の懸念は同じ傘の枠組みに立憲まで入るのか?というところです。立憲まで入ることを僕は想定していないです」

去年の臨時国会では政策協調したものの、そもそも憲法や安保防衛など主要政策では水と油の立憲と維新。

設立会見で、前原氏は次のように語っていた。

前原誠司衆議院議員「日本維新の会の馬場代表からエールを送っていただいたということありますが、"頑張ってほしい"というエールを立憲の方々からいただいております。そういう思いも踏まえて、野党結集をどうやっていくのか、今後あらゆる方々や団体に相談をさせていただきたい」

果たして前原氏の野党2党にらんだ二刀流は、功を奏すのだろうか。

MBS東京報道 尾藤貴裕