京都駅北側にある「七条通」。交通量が多いのですが、急に道幅が狭くなる区間があるといいます。その幅は一番狭いところで6mほど。路線バスや工事車両も行き交い、朝は中学生らの通学路にもなっていて、近隣住民はこの“危険な道”を拡幅しない行政側の対応に憤っています。

一番狭いところで幅約6m 路線バス往来の幹線道路が一部区間から急に狭く

 京都市右京区にある七条通。この通り沿いに60年近く住む中村さん(80)は、ある不安を抱えながら生活しています。

 (中村さん)「危ないしね。ここは事故もしょっちゅうあったし。こんな狭い道ではあかん」
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 七条通は京都市の東西を結び、東に進めば京都駅、西は桂駅方面に繋がる主要な幹線道路です。ただ、交通量の割にこの付近から急に道幅が狭くなるというのです。
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 道幅が狭まるのは木辻通付近から葛野大路までの約700mの区間で、一番狭いところで幅は約6m。市によりますと、1日の通行量は約9300台で、午前8時台には路線バス18本が往来するといいます。
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 (中村さん)「バスは通るし工事車両は通るし、めちゃくちゃですもん。朝晩なんかひどいもんですわ。うちの子どもに、出るたびに言いましたもん、『飛んで出たらあかんで』『走って出たらあかんで』って。それこそ何千回、何万回って言うてますわ」

通学路にもなっている道路…白線ギリギリを走っていく車両

 では、実際どれほど危険なのか。取材班が交通量が最も多いとされる午前8時に行ってみると…

 (記者リポート)「白線の内側で待っていたのですが、少しヒヤッとするくらいバスが近い距離だなと感じました。こちらは2車線の道路ですが、バス1台通るのがやっとのように見えます」
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 (記者リポート)「白線ギリギリですね…狭いですね、これではなかなか歩行者の方は歩けません。いま、車と車がすれ違っていきましたが、白線を越えてすれ違っていきましたね」

 確かに、ひっきりなしに車が走っていて交通量は多いようです。バスや工事車両も朝から走ります。
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 (記者リポート)「午前8時15分ごろですが、歩行者もかなり多く見受けられます」

 また、通学時間とあって、車だけでなく歩行者や自転車に乗る人も多くみられます。
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 さらに現場の様子をうかがうと、バスと工事車両がうまくすれ違うことができない場面も。バスも工事車両も白線を越えて通り沿いの家スレスレを通り過ぎようとしますが…進めません。2分ほどしてようやくすれ違うことができました。
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 家のすぐ目の前で起きているこの状況に、中村さんは、出かける度にそろりそろりとドアを開ける毎日です。

約6年で73件の事故…それでも交通量が多いのは“抜け道”だから

 こうした日々を過ごすのは中村さんだけではありません。

 (通り沿いの住民)「大変なんです。(Q外に出るのもひと苦労?)ひと苦労です」

 取材中にもバスとバスがすれ違うことができずに止まる場面もありました。

 (通り沿いの住民)「すれ違いになったら大変なんですよ、しょっちゅう」
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 別の住民は、店先の自動販売機に飲み物を補充するとき、車がスレスレを走っていることに危険を感じています。

 (通り沿いの住民)「(自販機に)ドーンと当たったら挟み撃ちなるやん。(事故がないのは)運がいいというだけ」
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 道路と家の距離が近いため、車が雨どいにぶつかり破損することも珍しくないといいます。

 (通り沿いの住民)「しょっちゅう、そこひっかけられてるさかいにね」
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 警察によりますと、2018年1月~2023年11月の期間に73件の事故(人身事故は7件)が起きているということです。

 事故も多くこれだけ狭い道路にもかかわらず、車の運転手はなぜこの道を選ぶのでしょうか。
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 (タクシー運転手)「もうひとつ向こうの通りを回ると遠回りになるし。道が狭くなっても直進した方が早いですからね」

 交通量が多いのには、この道路を抜け道として使っているという背景があるようです。

住民らが市に「道路の拡幅」訴えるが…なかなか実現せず

 周辺の住民らは10年ほど前に、安全対策のため「すみよい西京極をつくる会」を立ち上げ、市に七条通の拡幅を訴えてきました。これまでに署名活動やアンケート調査を行い、2016年には京都市議会で全会一致で拡幅を求める住民の請願が採択されました。しかし…
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 (すみよい西京極をつくる会 松元敦子さん)「なんで進まへんねんやろうって。だから怒ってるんやん。なんかもうね、60年も前から都市計画をやってね、こんな道置いといていいのって?」

 この道路は60年ほど前に都市計画道路に決定。京都市の一連の都市計画で残っているのはこの区間だけだといいます。市はその後、請願を受けて、2020年度に測量は行ったものの、それ以降はなぜか動きが止まり、拡幅が実現しないまま現在に至っているのです。

背景にある“市の財政難”…行政側『予算の計上が見送られている』

 いつ大きな事故が起きるかもわからない中、なぜ拡幅に向けた動きは進まないのか。京都市を直撃すると…

 (道路建設課・事業促進第一担当 村田昌寛課長)「計上が見送られていますので、過去にやった測量を基にして内部で検討等を進めています。(Q拡幅の見通しは?)令和6年の予算案が現状できておりませんので、現段階で具体的にお答えできることはありません」
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 財政難を脱するための行財政改革の一環で予算計上が見送られているとした上で、拡幅計画がなくなったわけではないと話しました。

 (道路建設課・事業促進第一担当 村田昌寛課長)「請願も全会一致で採択も受けておりますし、地域からのご要望を受けていることも踏まえまして、早期の事業化と完成に向けて取り組んでいきたいと考えています」
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 家の目の前にある狭い道はいつ拡幅されるのか。全く見通しを示さない行政側の対応に中村さんの不安はつきません。

 (中村さん)「やっぱり進まんし、これは死ぬまでないなって。生きている間に何とか決まって(拡幅)してほしいな」

 安全対策を求める声が多い中、行政側はしっかりと向き合い対応していく必要があるのではないでしょうか。