大阪・西成区にある歓楽街「飛田新地」。その外れにたたずむ元『遊郭』だった歴史ある料亭で、建物の老朽化を止めて保存しようとする新たな取り組みが始まりました。

かつて『遊郭』だった料亭 食事や宴会の部屋は”豪華な装飾”

大阪市西成区の飛田新地にある料亭「鯛よし百番」。「鯛よし百番」の建物は木造二階建てで、建てられたのは大正末期ごろ。かつては『遊郭』として営業していました。
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店内の食事や宴会などに使われる部屋には、豪華な装飾が施されていて、部屋ごとにテーマに沿った趣向が凝らされています。
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(鯛よし 三宅一守管理部長)
「日光東照宮の陽明門を模して作った入口となっています。いまは応接間として使っていますが、昔、遊郭の時は入り口で(女性の)写真を見たお客さんが、女性と顔合わせをする場所として使っていました」

建築から100年超で老朽化進む…修復計画もコロナの影響で費用捻出が困難に

「鯛よし百番」の建物は2000年に国の『登録有形文化財』にも指定されました。しかし、建築から約100年が経過して老朽化が進んで至るところで傷みが目立つようになりました。
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そのため「鯛よし百番」では建物の修復を計画していました。しかし、新型コロナウイルスにより売上が減少した影響で、修復にかかる費用の捻出が難しい状況になりました。
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(鯛よし 三宅一守管理部長)
「新型コロナウイルス(の感染拡大)が始まって1年半ぐらい経ちますけど、半分以上は休業。全面的に閉めていました。(売り上げは)大体1割~2割もいってないでしょう。1年半を通して見たらその程度やと思います」

『保存プロジェクト』立ち上げ 修復費用集める「クラウドファンディング」開始

そこで立ち上がったのが地元の大阪市西成区で不動産会社「サミット不動産」を営む杉浦正彦さんでした。杉浦さんは保存・修復のプロジェクトを立ち上げて資金を集める“クラウドファンディング”を6月30日にスタートさせました。
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(サミット不動産 杉浦正彦さん)
「(鯛よし百番を)地域の財産・宝として考えて、地域の人間がきちんと力をあわせて大切に保存していくという活動が重要だと」
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また、クラウドファンディングのPRも兼ねて「鯛よし百番」の内部をVR(仮想現実)の映像で一般公開することにしたのです。

(サミット不動産 杉浦正彦さん)
「店内の良さはなかなか見ることはできないし、鯛よし百番に食事に来ないとわからない。“鯛よし百番の良さ”というのを広く知ってもらうためにVRを採用しました」

保存プロジェクトの助っ人に"建築を学ぶ大学生たち"

6月28日に「鯛よし百番」では、保存・修復のための建物の実測調査が行われました。
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作業を行っていたのは、大阪市立大学建築学科の学生たちです。今回の保存・修復のプロジェクトでは、建物の現況調査からそれに基づく図面の作成、改修の設計などを大阪市立大学と連携して行うことになったのです。
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(大阪市立大学・講師 西野雄一郎さん)
「建物を保存・活用していくには、かなりお金が必要ですので、周りの人を巻き込んでそれを実現していくというところを、一連の流れで関わらせていただくということは、今後彼ら(学生たち)が活躍していく上では、必須のスキルになると思うので、学生の教育という面でもぜひさせてくださいと」

大阪の歴史を語る上でも重要なこの建物。『次の世代に残したい』という多くの人の思いを受けて、早ければ今年の秋から修復工事を始める予定です。

文化財に詳しい大阪府立大学の橋爪紳也特別教授は「登録有形文化財は『国宝』や『重要文化財』である国指定の文化財ほど国からの支援はありません。登録有形文化財の保存・修復にはお金がかかるので、オーナーの努力だけではできないのが実情です。建物を大事に思う人たちが、一緒になって残す活動をしていくことが必要です」と話しています。
(2021年7月2日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)