ジャニーズ事務所・故ジャニー喜多川氏による性加害問題について、外部専門家による再発防止特別チームが8月29日に会見を開き、調査結果を公表しました。会見には元検事総長の林眞琴座長らが出席。3か月間で41人にヒアリングするなどした結果、ジャニー喜多川氏が長期間にわたってジャニーズJr.ら複数の所属タレントに対して性加害を行っていたと認定して、藤島ジュリー景子氏の代表取締役社長辞任も求めました。この会見について、LGBT問題に詳しく自ら同性婚を明らかにしている南和行弁護士は「第三者委員会の役割は果たされた。正直言って火消し側かなと思っていたが、具体的事実に基づいてはっきり言及したことに衝撃を受けた」とコメント。またこれまで顔と名前を出して被害を告白してきた元ジャニーズJr.でジャニーズ性加害問題当事者の会の二本樹顕理さんも「半信半疑だった部分がありましたが、想像以上の報告内容で驚いている」と受け止めた上で、ジュリー氏については「辞めてしまえばいいというものでもなく、トップの説明責任は最後まで果たしていただきたい」と話しました。

――南弁護士にまずうかがいたいのは、「事務所が設置したチームが、第三者としての役割を果たせたかどうか」です、どのように感じましたか。

南和行弁護士:記者会見を聞いた限り、第三者委員会と言えるべき役割を果たされたと思います。正直聞くまで火消し側かなと、すこし穿って見ていたんですけれど、実際の記者会見の内容を聞きましたら具体的な事実に基づいて、何に責任があるのかということをはっきり言ったところに衝撃を受けました。

――再発防止策については、被害者の救済委員会(仮称)を立ち上げるべきではないか、被害者をとにかく救わなければならないという話がありましたね。

「今活躍されている人」への救済も配慮している印象

南和行弁護士:被害者救済措置に関しては、被害者の定義について、例えば裁判だとかなり高度な確実性の証明が必要なわけですけど、そういうことを言ってるんじゃないっていうこと、時効の問題もそう、金銭の補償額も、何となくではなくて、客観的に法律の専門家等による検討とまで言っていましたので、被害者の方が、今なお苦しんでいるということと二次被害、たとえば今活躍されている人にもそういう目が向けられるわけですが、そういうところへの救済も配慮していると思いました。それと、私が大きい言及があったと思うのは、絶対的な権力構造があったと。被害者の方も言えなかったし、メリーさんも隠蔽したし、事務所も組織として知っていたし、今になっても今の社長のジュリーさんが見て見ぬふりを維持したと。

そして最後に言及されたメディアとの関係です。厳しい質問が記者会見場でありました。質問した方は「相互隠蔽ではないか」というような言い方をされました。なんで相互隠蔽になったのかというのは、事務所内での絶対的な権力関係が、実はテレビなどのメディアとの関係でもジャニーズ事務所にあったのではないかと。また、政府のいろんなイベントのアンバサダーにタレントを派遣するとか、大企業のCMキャラクターになっているところも含めて、結局メディアと、あるいは社会との関係でジャニーズ事務所が権力的な立場になっていたんじゃないかっていうことが今回のチームの指摘にあった、というところも重要だと思います。

質疑では「ジュリーさんはこの間嘘をついていたのか」っていう質問も飛んでいたんですね。ただそれについては「疑惑は知っていただろう。だけども今年になってからの問題になるまで、やはり実際の事実があったというところまで知って嘘を言っているというところまでは、被害者さんからのヒアリングでも、言えなかった」ということはおっしゃってました。

会見を見た当事者の元Jr.「正直言いまして、大変驚いています」

――当事者の方はどのように会見を見たのでしょうか。元ジャニーズJr.で、性加害問題当事者の会の二本樹顕理さんにお話を伺います。

二本樹顕理さん:正直言いまして、想像以上の報告内容で大変驚いています。調査に基づく事実をしっかりと踏み込む形で伝えていただいて、私自身、最初は半信半疑だった部分もあったんですけれども、被害者の気持ちも非常に反映されているなと思いました。

――ジャニー氏について「多数のジャニーズJr.に対して長期間にわたって広範に性加害を繰り返していた事実が認められた」と特別チームは認定しました。ここに関しては。

二本樹顕理さん:やはりそうですね。私達も被害に遭ってからだいぶ年数も経っておりますし、性加害という非常に証明が難しいものであったと思うんですけれども、当初から再発防止特別チームの方々は、性加害があったものとして調査を行うとおっしゃってくださっていたので、それを初志貫徹してくださったっていうのには非常に感謝を覚えます。

――国連の人権理事会によると被害者は数百人にも上るのではないかという指摘もあるんですが、このあたりに関しては二本樹さんはどんなことを感じますか。

二本樹顕理さん:実際、私達当事者の会も被害規模はもっと大きかったものだと思っております。ただし特別チームによる調査は3か月というものであったようですし、数はある種妥当なのかなと感じる部分もあります。

「この提言を受けて被害者救済に動いてほしい」

――メリー氏は事実をわかっていたんだけども隠蔽していたという趣旨の発言もありました、「隠蔽」に関して、当事者として二本樹さんはどう感じてますか。

二本樹顕理さん:そうですね。これがジャニー氏個人の問題であったというような声も上がっていたと思うんですけれども、やはりこれがジャニー氏個人によるものだったというには非常に無理があるものだと感じておりますし、当時在籍していた役員の方たち、スタッフの方たち、みんな知った上で黙認していたと思いますので、そうした事実を暴いてくださったことには同様に感謝を覚えます。

――被害者救済についても言及があったんですけれども、そのあたりに関して当事者としていかがでしょうか。

二本樹顕理さん:やはり、提言を受けて被害者救済に動いてほしいと私達は願っております。過去のウミを完全に出し切って、本当にこの問題を解決することに取り組んでいただき、きちんと清算した上での活動を続けていただきたいと思っております。

――「ジュリー社長の辞任」というところの話が出ましたけども、これに関しては二本樹さんはどう思われますか。

「辞任という言葉に驚きを隠せない」

二本樹顕理さん:そうですね、辞任という言葉にも驚きが隠せないんですけれども、それが特別チームによる見解であったなら、それを非常に重く受け止めていただきたいということはあります。しかし、単純に辞めてしまえばいいというものでもなく、組織のトップとしての説明責任というものは最後まで果たしていただきたいと思っております。

南和行弁護士:二本樹さんは顔も名前も出されてっていうのは、実は本当に大変なことだと思うんです。こういう性被害を訴えられた方に対する二次被害といいますか、例えばインターネット上なんかでね、切実なことを訴えてるにもかかわらず、そこにひどいことを言い返してくるっていうような社会状況があるんですけれども、私はそれが、今回報告書にあったメディアの沈黙みたいなことにも繋がると思うんですけれど、二本樹さんはどうお考えになりますか。

二本樹顕理さん:そうですね、声を上げた被害者たちが誹謗中傷にさらされてしまうってのは本当に悲しい事実だと思いますし、そうした社会的風潮を許容してしまったメディアにも責任はあると感じておりますので、メディアの方々にもしっかりと考えていただき、やはり自浄作用を働かせていただきたいなと感じております。

――そういった言葉、我々メディアも真摯に受け止めなければならないと思います。元ジャニーズJr.の二本樹さん、南弁護士、ありがとうございました。(2023年8月29日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)