第103回全国高校ラグビー大会が開幕。参加51校の選手が、高校ラガーマンのあこがれの地、花園ラグビー場の芝生を踏みしめました。開会式は、4年ぶりに選手の入場行進が実現。秋田工業の大沢空主将が「見ている方の胸が、熱くなるような試合、私たちにしかできない最高の103回大会にします」と、力強く選手宣誓しました。

史上初の合同チーム、健闘及ばずも歴史刻む

 直後の第1試合では、合同チームとして初めて花園への出場を果たした福井県代表の若狭東・敦賀工業チームが登場、東京代表の目黒学院と対戦しました。FW8人の平均体重で10キロ以上うわまわる目黒学院が、持ち前のパワーを見せつけて試合開始から10分までに3つのトライを奪います。

 それでも、福井の合同チームは、諦めません。粘り強いディフェンスで、目黒学院の攻撃を抑えると、15分にはFW陣が一つになって、自分たちよりはるかに大きい相手を押し込みます。最後は、NO8清水大和選手がトライ。高橋仁選手がゴールも決めて、歴史に刻む7点を奪います。

 トライを奪われると、さらに迫力を増した目黒学院の攻撃。合同チームも、懸命の反撃を試みますが、外国人留学生を中心に、パワー、スピードを兼ねそなえた目黒学院の攻撃を止めることができませんでした。後半にも、得点を奪われて62対7。史上初めて、全国大会に登場した合同チームは、健闘及ばず1回戦で姿を消しました。

 敗れはしたものの、歴史的なトライをあげた若狭東・敦賀工業の合同チーム。若狭東に誘われる形でチームに合流し、途中出場で夢舞台に立った敦賀工業の浜野悠人主将は、「交代出場を告げられた時はうれしかった。自分のできることを、最大限にしようとフィールドに入ったが、流れを変えることができなかった」と憧れの舞台に立てた感動とともに、悔しさをにじませました。

父は元日本代表「お父さんから準備の大切さ学んだ」

 第2グラウンドで行われた第1試合では、静岡聖光学院のFB小野澤謙真選手が、名門・秋田工相手に躍動しました。父親はサントリー、日本代表でも活躍した小野澤宏時さん。前半7分には、お父さんを彷彿とさせる鮮やかなステップで、3人を抜き去って、先制トライを奪います。17対5とリードして迎えた後半開始直後、今度は、キックオフのボールをキャッチすると緩急をうまく使いながら60メート以上を一人で走り切ってトライ。小野澤謙真選手が圧巻の快走で試合の流れを決定づけました。

「お父さんから準備の大切さを学んだ。ボールを持ったら行こうと思って準備していた。どんなエリアからもアタックするのが、僕たちのラグビー」と、父の前でも話した小野澤謙真選手。勢いにのった静岡聖光学院が、36対15で秋田工業を振り切り、見事2回戦進出を果たしました。

屈指の好カード 天理×早実

 第2グラウンド第2試合は、奈良の天理と東京の早稲田実が激突。1回戦屈指の好カードは予想どおりの大激戦になりました。前半、風上にたった天理が、2本のトライで14対0とリードを奪いますが、後半に早稲田実が反撃、キックを有効に使って、天理を自陣にくぎ付けします。開始2分、大内颯真選手がトライ。むずかしいコンバージョンキックも決めて7点差に詰め寄ります。

 残り時間25分以上。ここから早実の怒涛の攻撃が始まります。素早い出足で、FW陣が前に出ると、天理にプレッシャーをかけ続けます。その圧力の前に、ペナルティーが重なって、なかなかピンチを脱出できない天理。しかし、ここから伝統校の底力を発揮しました。ゴールラインを背に、すさまじい執念で得点を許しません。2度にわたり、インゴールにボールを持ち込まれますが、最後まであきらめない集中力抜群のディフェンスで、グラウンディングをさせません。

「(奈良のライバル)御所実との対戦を通して、ディフェンスには自信を持っていた。特にモールディフェンスは、常に練習してきた。いつもどおりの自分たちのひたむきなプレーが出せた」と振り返った内田涼主将率いる天理。最後の最後まで攻め続けた早稲田実業の反撃を、防ぎ切って14対7で勝利して、シード校の関大北陽が待つ2回戦進出を決めました。

山梨学院×長崎南山はシーソーゲーム

 第1グラウンド第3試合、初出場の山梨学院と長崎南山の試合は、逆転につぐ逆転、最後まで目が離せない白熱の展開となりました。先制したのは、長崎北陽台との激闘を引き分けで終え、抽選で花園へ出場した長崎南山。前半10分、攻撃の要SH山下蓮選手のトライで、7点のリードを奪います。

 一方、強豪の日川を破って、花園初出場を果たした山梨学院も反撃。18分にNO8佐野涼太選手のトライで同点に追いつくと、27分には、BK陣が鮮やかなコンビネーションをみせてトライ、12対7と逆転して前半を折り返します。それでも、長崎南山は慌てません。激戦区長崎を戦い抜いてきた試合巧者ぶりを見せます。後半6分、11分と山下蓮選手が確実にPGを決めて13対12と再逆転に成功します。

 しかし、その直後、山梨学院がキックオフからの攻撃をすぐさまトライに結びつけます。FW陣が勢いよく前に出て攻め込むと、連続攻撃から、最後はFB篠原悠士選手がトライ、ゴールも決めて、再び19対13と逆転です。残り15分、ここから信じられないようなドラマが待ち受けていました。

 6点リードを許した長崎南山が、高校日本代表候補にも選ばれた本山佳龍選手のパワフルなトライからゴールも決めて20対19と再度逆転すると、山梨学院は20分、粘り強くボールをつなぎフェイズを重ねると最後は篠原選手が、この日2本目のトライ、難しい角度のキックも自ら決めて26対20、またしても6点のリードを奪います。

 それでも、長崎南山はあきらめません。直後の22分、SH山下蓮選手が絶妙のランニングで裏に抜け出すと、フォローしたFL長渕零選手が抜群のコース取りで最後はCTB池田太陽選手がトライ。これぞ長崎のラグビーというランニングスキルの高さをみせて、26対25と1点差に詰め寄ります。

 そして、最後にチャンスをつかんだのは長崎南山でした。27分、ミスが許されない展開の中で、しっかりと攻撃をつなげて、ゴールまで30m地点でPGのチャンスをつかみます。キッカーは、山下蓮選手。

 プレッシャーのかかるこのキックを慎重に決めて28対26。逆転につぐ逆転のシーソーゲーム。長崎南山が勝負強さを見せつけて、山梨学院との激闘に終止符を打ちました。

1回戦の結果を一覧

1回戦、第1日(27日)の結果です。高松北(香川)が花園初勝利を飾っています。


青森山田(青森)14-33 高鍋(宮崎)
静岡聖光(静岡)36-15 秋田工(秋田)
若狭東・敦賀工業(福井)7-62 目黒学院(東京)
天理(奈良) 14-7 早稲田実業(東京)
高知中央(高知)6-67 流経大柏(千葉)
高松北(香川)48-3 倉吉東 (鳥取)
山梨学院(山梨)26-28 長崎南山(長崎)
日本航空石川(石川)33-21 関商工 (岐阜)
仙台育英 (宮城)46-10 黒沢尻工(岩手)


(MBSスポーツ解説委員 宮前 徳弘)