兄弟同時ドラフト指名――。漫画の世界でありそうな話が、今年、実話になるかもしれない。社会人野球のNTT西日本で活躍する兄の徳丸天晴(てんせい 20)と高校球界屈指の強打者、大阪桐蔭で今春3年になる弟、徳丸快晴(かいせい 17)の兄弟だ。兄の天晴はドラフト解禁を迎える社会人3年目に突入した。兄弟での夢実現へ、高鳴る胸の内を聞くために、京都府久御山町にあるNTT西日本野球部グラウンドを訪れた。(MBSアナウンサー金山泉)

智弁和歌山で通算42本塁打 屈指のスラッガーは社会人へ進んだ

 徳丸天晴にとって、去年は社会人に進んで初めて手応えを感じたシーズンだった。「入社1年目は公式戦に出られなかった。2年目(2023年)はとにかくアピールすることを意識して、ケガもあったけど1年間通して公式戦に出続けることができた。いい一年になったかな」。7番打者での出場が多かったが、9月の日本選手権近畿地区最終予選では4番に。社会人選抜メンバーとして出場した12月の台湾ウィンターリーグでは巨人期待の若手左腕・山田龍聖から右前安打を放った。

 天晴の名は、高校時代から全国区だった。智弁和歌山高時代は通算42本塁打を放ち、高校球界屈指のスラッガーとして注目。プロ入りも噂される実力者だったが、プロ志望届を提出しなかった。「(智弁和歌山の)中谷仁監督と相談して、決断しました。『プロで活躍すること』を目指した時に、しっかり勝負できる所を作ろうと思って、社会人に進みました」

 決断を生かすも殺すも自分次第。天晴は社会人に進んだ今も必死にバットを振っている。長所の長打力を更に伸ばすため、このオフは肉体改造に取り組んでいる。「体重は91㎏だったのが、96㎏ぐらいに増えた。体幹がぶれずに打てている感覚があるし、スイングスピードも10キロくらい上がっている」。そう話す目に、自信の色が見え隠れする。

 先にプロ入りした“ライバル”からも刺激を受ける。“智弁対決”が話題になった2021年夏の甲子園。決勝で対戦した智弁学園(奈良)の主軸・前川右京は、その年のドラフト会議で阪神タイガースから4位指名を受けた。天晴の夢でもあるNPBの舞台で試合出場する前川を見て、「去年は1軍で結構打っていたし、自分も早く同じ舞台に立って、という所もある。智弁和歌山と智弁学園は修学旅行は一緒に行くんですけど、(前川とは)高校2年秋の修学旅行ですごく仲良くなったんです。負けずに頑張りたい」。

注目される“兄弟同時ドラフト指名” 天晴は…

 勝負の2024シーズン。天晴は「今年は都市対抗・日本選手権に出て優勝できるように貢献したい。チームを勝たせることができる選手になりたい」と熱く語る。また、注目される“兄弟同時ドラフト指名”に関しては、「(弟と)お互いのステージで結果を出すことができれば、そういう結果はついてくると思う。今まで両親やおじいちゃん、おばあちゃんもずっと気にかけてくれていた。そういう結果が出れば一つの恩返しではないけれど、形として返せるのかなと思う」。

 チームの勝利の先の、プロ入りへ。「男らしくあっぱれ(天晴)としてもらいたい」と両親に名付けられた天晴。今春のセンバツに挑む弟の快晴と共に、晴れやかな秋を迎えてほしい。

・徳丸天晴(とくまるてんせい)
2003年9月4日生、大阪市出身。185㎝96㎏、右投右打、内野手。
智弁和歌山高~NTT西日本。智弁和歌山高3年時に4番ライトで夏の甲子園優勝。NTT西日本に入社後はサードに転向。趣味はサウナ。好きなアイスはパルム。

【野球サイコー!取材後記】
そのスイングスピードの速さで、近くに立つと風が「BLOWIN’」。肉体改造によって去年よりも体が「Big」、今年は長打力に更なる期待がかかる。
※BLOWIN’…1992年5月発売、B’z10枚目のシングル
 Big…1995年11月発売、B’z8枚目のオリジナルアルバム「LOOSE」収録曲

・取材・文 金山泉(かなやまいずみ)
MBSアナウンサー。1982年6月5日生、新潟県上越市出身。野球とB’zをこよなく愛する。投手として首都大学リーグ2部で通算11勝(8敗)をマークした。