セットポジションからキレのあるボールをテンポよく投げ込んでいく姿は、見ていて気持ちがいい。去年7月の社会人・都市対抗野球1回戦。NTT西日本の先発マウンドに上がったのは入社1年目のサウスポー伊原陵人(23)。

 三菱重工East相手に6回7安打2失点の好投。試合には敗れたものの、堂々たる投球を見せた。智弁学園(奈良)で甲子園に、大商大では大学野球選手権に出場しているが、大舞台で積んだ経験値を1年目から発揮した。

 伊原は「たくさん投げさせてもらっていろんな経験ができた1年だった。自信のあるコントロールであったり変化球であったり、(社会人でも)通用するなと感じた部分もあった。」と2023年シーズンを振り返る。

社会人2年目の進化へ ストレート球速アップに取り組む

 しかし、それ以上に課題を感じた1年でもあった。「どうしても、もう一つ何かないといけない。真っすぐのスピードであったり、三振を奪える変化球であったり。今年はそういう所を突き詰めていかないと去年のようには行かない。」

 2年目の進化へ、まず取り組んでいるのはストレートの平均球速アップだ。自身最速の147キロは大商大2年時に計測したもの。NTT西日本入社後は、最速144キロと球速に伸び悩みを感じていたという。「先発として1回から9回まで143~144キロで投げて、力を入れたら147~148キロというのを目指しています」。

 武器となる変化球の習得にも励んでいる。「落ち球(フォークボール)ですね。もともと持ってはいるんですけど、3ボール2ストライクなど、ここ一番で投げられるかというと、そういうボールではなかった。もともと膨らんでしまうフォークボールだったので、できるだけストレートに近いように落とすことができれば、投球の幅も広がってくると思う」。

高校の先輩、村上頌樹(阪神)追いかけて

 伊原には、高校時代から追いかけ続けている人物がいる。奈良・智弁学園の2年先輩にあたる村上頌樹(阪神タイガース)だ。

 「高校1年の夏までキャッチボールを一緒にさせて頂いていたんですが、とにかく真っすぐの回転が凄く、低めから伸びてくるイメージがあった。自分もそういう球を投げたいと追いかけていました」

 憧れの先輩とは今でも連絡を取り合っているという。「何かあったら、自分から連絡することが多いですね。去年だったらリーグ優勝おめでとうございます。とか、最優秀選手おめでとうございます。とかLINEするんですが、いつも言われるのが『お前に負けないように頑張るわ』と。」

 「いつまでたっても村上さんも進化しようとしている。『頑張れよ』ではなく、『お前も頑張ってるけど、おれもまだまだやるよ』と。自分が追いかけてきた人も一生懸命野球をしているということは、刺激になっている。」

 伊原は2024年シーズンの目標を、「チームとして、とにかく全大会で優勝できるように、そこだけを目指してやっていきたい」と熱く語る。ドラフト解禁年にもなる2年目の今季。目標とする先輩と同じ舞台に立つため、まずはチームのために腕を振る。(MBSアナウンサー金山泉)

B’zで紹介する注目選手 先輩・村上から学んだ「STAY GREEN」

◇伊原陵人(いはら・たかと)
2000年8月7日生 奈良県橿原市出身 170㎝75㎏ 左投左打。智弁学園~大阪商業大~NTT西日本。智弁学園3年春に甲子園出場(3回戦敗退)。大商大2年秋に関西六大学リーグで最優秀投手に輝く。趣味はゴルフ。好きなアイスは濃厚ミルクアイス。

【野球サイコー!取材後記】
先輩・村上から学んだ「STAY GREEN」。その気持ち忘れず「ねがい」叶える。※STAY GREEN~未熟な旅はとまらない~…2002年7月発売、B’z12枚目のアルバムGREEN収録曲
※ねがい…1995年5月発売、B’z16枚目のシングル

◇取材・文 金山泉(かなやまいずみ)
MBSアナウンサー。1982年6月5日生、新潟県上越市出身。 野球とB’zをこよなく愛する。投手として首都大学リーグ2部で通算11勝(8敗)をマークした。