2022年01月11日(火)公開
メガソーラー計画地の「盛り土」に産業廃棄物が混入か...『住民らは土石流を懸念』一方で県は「地滑りなど安全基準をクリア」と回答
特盛!憤マン
奈良県平群町で進められている「メガソーラー建設計画」。山々を削って盛り土をしてソーラーパネルが設置される予定ですが、12月末に現地を訪れると新たな問題が見つかりました。パネルを設置するために盛り土される予定の土の中から“コンクリート片やガラス片”などが見つかったのです。現地調査をした専門家は「産業廃棄物が埋まった危険な土地である可能性」を指摘しています。現場では一体何が起きているのでしょうか。
パネル5万枚の『メガソーラー計画』一部住民にしか知らされず業者側とでトラブル
奈良県平群町の山中では、甲子園球場12個分の事業面積に5万枚のパネルを設置する「メガソーラー建設計画」が進められています。
山のふもとには平群町の住宅地が広がっています。
メガソーラーの建設を巡っては3年前、奈良県が業者に開発許可を出し、去年2月に工事が始まりました。しかし、建設計画が一部の住民にしか事前に知らされていなかったなど、住民と業者側との間でトラブルが頻発しました。
(住民説明会の様子 2020年)
(住民)「なんの説明も、なんの告知もなんにもなしに。こんな失礼な交渉ないで!」
(町の職員)「(全住民の)同意は必要ありません。(町の定めには)『必要』とは書いていないんですよ」
去年3月には、住民ら約1000人が工事の差し止めを求めて奈良地裁に提訴する事態に発展しています。
『盛り土による土石流』に住民らから不安の声
住民たちがそこまでして工事の中止を求める訳とは…。
(平群町の住民)
「メガソーラーを作るために盛り土にするんですよね」
「埋め立てて盛り土にすると思うんですよ。やっぱり怖いですよね」
「逃げていく場所とかありませんし、どうしましょう。本当に終の住みかだと思っていましたのでね、ここが」
住民たちが不安に感じているのは「盛り土」です。建設計画によると山頂付近を削って谷に埋め、ソーラーパネルを設置しやすいように起伏のある山肌をなだらかにします。この一連の工事が「盛り土」によって行われる予定になっています。
平群町の住民らに衝撃を与えたのは、去年7月に起きた静岡県熱海市の「土石流」。その原因とされたのが「盛り土」でした。
(静岡県 難波喬司副知事)
「盛り土が(被害を)甚大化させたことは、ほぼ間違いない」
大規模な土石流は山頂付近の「盛り土」が原因だと指摘されていて、「盛り土」には許可を得ていない“コンクリート片などの産業廃棄物”が含まれていたことが分かっています。
計画地からコンクリート片「盛り土」に産業廃棄物が混入か
12月27日、憤懣取材班は平群町のメガソーラー建設予定地である山中を土砂災害の専門家と訪れました。
「立ち入り禁止」と書かれた看板が掲げられた現場を専門家が観察してみると、次のようなことが分かりました。
(京都大学 奥西一夫名誉教授)
「建設残土と思われるものとか、プラスチック製品の欠片とか、そういうものが見られました」
取材班も一帯を撮影すると、人工的なレンガやガラス片、そしてコンクリート片などが地面に散乱していたり、一部地中に埋まっていたりすることが確認できました。
(京都大学 奥西一夫名誉教授)
「こういうもの(コンクリート片など)を含んだ土を使って盛り土をされていたということが推測されます。仮に1m角の中に(コンクリート片が)1個あったとしますと、これは盛り土全体ではかなりの個数のコンクリート片が埋まっているということを意味します」
「盛り土」の中にコンクリート片などの『産業廃棄物』が混入している恐れがあることが分かりました。
(京都大学 奥西一夫名誉教授)
「(Q現場を見てどうでしたか?)盛り土全体の中には多数のコンクリート片とか、そのほか地表で見られたようなものも(盛り土の)中に含まれている可能性が高い。(盛り土の)強度が全く期待できないということですので、現状では非常に危険な計画になってしまっている」
業者側が開発許可を得るために奈良県に提出した書面には、業者は建設予定地の土地の安全性を確認するため工事前に4か所でボーリング調査を実施していて、「4か所のうち1か所で地中11m付近にコンクリート片が見つかった」という記載がありました。
実はこの場所では、12年前に別の業者が「農園を作る計画」を進めていました。その際、工事の過程で使われた「盛り土」の中に、コンクリート片などの産業廃棄物が混入された疑いがあるというのです。
つまり、今回のメガソーラー建設で「盛り土」される場所にはすでに「盛り土」があり、その一部に産業廃棄物が混入している可能性があるのです。一方で奈良県は業者側に開発許可を出していました。
県は『地滑り等の安全基準をクリアしている』と回答
こうした実態を知った住民たちは、そもそもなぜ事業計画が許可されたのか怒りを募らせています。
(平群町の住民 須藤啓一さん)
「本来こういうもの(コンクリート片)が入っているというのは許されないこと。土を入れ替えるとかですね、そういうことを当然検討していかないといけないのに、(書面を)奈良県が認めたということですから。これはとんでもないことだと思うんです」
須藤さんらは12月、「盛り土」のコンクリート片などについて平群町に見解を求めました。すると、平群町は次のように回答しました。
(平群町の回答)
「コンクリート片等については、ご指摘が有るまでは確認出来ておりませんでした。混入した経緯や理由について判明しておりません」
住民らは町に対して現場の調査を求めていますが、明確は回答はないといいます。
メガソーラーの建設工事を巡っては、県が去年6月に工事の停止を業者に指示しています。
(奈良県 荒井正吾知事 2020年7月)
「信用して(開発)許可をしたけれども、(提出された)書類がわざとかもしれないんだけれども、偽りがあったということが事後分かったから、申請書をそのまま鵜呑みにしないようにと再三私から担当に注意をしている点でありますので」
業者側が提出していたボーリング調査とは別の書面に誤りがあることが分かったのです。
そして今回、取材で産業廃棄物とみられるコンクリート片が「盛り土」に混入していることが判明。奈良県に見解を求めると、1月6日に回答がありました。
(奈良県の回答)
「コンクリート片が混入していることを確認しています。国土交通省の通知に基づき審査した結果、地滑り等の安全基準をクリアしていることを確認しています」
奈良県は「コンクリート片はボーリング調査が行われた15cmの層でしか確認されておらず、現時点で再調査や是正などを業者に求めるつもりはない」とも主張しています。
これを受けて、改めて土砂災害の専門家の京都大学・奥西一夫名誉教授に話を聞くと、「それはボーリング調査をした範囲だけの結果にすぎず、盛り土一帯を調査すべき」と話しています。
今後、計画はどうなっていくのでしょうか。住民側が工事の差し止めを求めている裁判は1月13日、3回目の口頭弁論が行われます。
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