2022年04月07日(木)公開
【専門家解説】ロシア・プーチン大統領の支持率が上昇...背景に『密告社会』で本音を伝えられない?極右政党の党首死去で「ウクライナへの攻撃の正当化」をあおる恐れを指摘
編集部セレクト
ウクライナによる軍事侵攻後、ロシア国内でプーチン大統領の支持率が上昇しているという結果をロシア独立系調査機関「レバダセンター」が明らかにしています。産経新聞元モスクワ支局長で大和大学教授・佐々木正明氏は、支持率上昇の背景に「ロシア国民の反米感情の刺激されている」ことや「密告社会で仮に不支持と言えばいずれバレてしまうことを恐れて本当の心情を伝えられない」などと指摘しています。また、アメリカによるロシアへの追加の経済制裁やロシア極右政党の党首の死去によるロシア国内への影響について専門家の知見から解説をしています。
民間人の遺体について…プーチン大統領「下品でシニカルな挑発行為だ」
ーープーチン大統領はウクライナの都市ブチャで見つかった民間人の遺体について、「下品でシニカルな挑発行為だ」とハンガリー首相との電話会談で話しました。基本的にロシアとしては、フェイクでやってないと、ウクライナが自分たちででっち上げたというスタンスはもうずっと変わらないですよね?
(佐々木正明教授)
「これはずっと変わらないと思います。この発言は、西側の社会にいますとおかしいなというのははっきりとわかるんですが、国内向けでありますと、やはり大統領が言っているのだから挑発行為だと信じるんだと思いますね。西側のメディアと一緒になってこの挑発行為をしているというようなことを繰り返し言っております」
プーチン大統領の支持率が侵攻後に上昇…背景に「反米意識への刺激」「怖くてノーと言えない雰囲気」
ーーロシアの独立系調査機関の「レバダセンター」がプーチン大統領への支持率が上昇しているという世論調査の結果を公表しています。そもそもこの独立系の調査機関とはどのような機関なのでしょうか?
(佐々木正明教授)
「ロシアには世論調査機関が大きく3つあるんですね。そのうちの1つであるレバダセンターは、西側のスパイであるという指定をしている調査機関ですので、この独立調査機関の数字はそれほど作られていないというようなことにもなるんです」
ーー支持率が上昇しているという背景についてはどのように考えますか?
(佐々木正明教授)
「ゼレンスキー大統領支持が上がりましたよね。それと同じようにロシア国内でも逆の数字が出ていると。そして戦っている相手はアメリカなんですよね。ソ連時代から続く反米意識・反西側意識が刺激されている。そして戦おうとするプーチン大統領を支持しているという点があります。さらにロシアは情報統制がありますので、圧倒的に限られた情報しか受け取られていない。ブチャ、マリウポリ、キエフ近郊の惨劇については全く伝えられていないと思っていただければと思います。そして独立系調査機関とはいえ、自分が大統領を指示しているかという問いについてノーというと、いずれバレてしまい裏切り者の烙印が押されかねない、そして怖くなってイエスということを言ってる可能性はあります」
ーー数週間前までは反戦運動みたいなものが報じられていましたけれどもあの人たちはどうなってしまったんですか?
(佐々木正明教授)
「当時は反戦と反プーチンは違うと指摘しましたが、現在は反戦イコール反プーチンなんです。となるとやはり意識がどんどん絡め取られてしまっている。抵抗する意識がなくなってきて、それをやはり狙ってるんだと思いますね」
アメリカが追加制裁…プーチン氏一族など全てが今後対象になる可能性も
ーーアメリカはロシアへの追加制裁を発表し、対象の銀行の追加や、個人の制裁対象をプーチン大統領の成人した2人の娘・ラブロフ外相の妻や娘・メドヴェージェフ前大統領などに拡大しました。制裁対象は今後どのようになっていくと予想されますか?
(佐々木正明教授)
「もちろん対象はどんどん広がっていくと思います。やはりプーチン大統領の娘、親戚もしくはラブロフ外相の一族全てが制裁対象になる可能性もあります。やはり、アメリカ、スイス、イギリス、日本、そして大阪にもプーチン大統領のインナーサークル(側近)になる資産がある可能性はあります」
ーー経済制裁は果たして効いているのでしょうか?
(佐々木正明教授)
「効いています。今後じわじわと広がってくると思います。時間はそんなにかからないと思います。つまりもう資産を引き出せないということなんですね、プーチン大統領の求心力を失わせるためのこの制裁ということだと思います」
「ウクライナの大統領府を爆撃すべき」と発言の極右政党の党首が死去『攻撃をあおる可能性」
ーーロシア極右政党の党首ジリノフスキー氏が75歳で死去しました。ジリノフスキー氏は30年以上にわたり政界で活動し、2018年の大統領選では3位ということでした。そしてこの人物は過激な言動で知られていて、過去には『ウクライナの大統領府を爆撃すべき』というふうにも話していました。ジリノフスキー氏の死去をきっかけにどのような影響が考えられますか?
(佐々木正明教授)
「生前の言動がロシア国内で繰り返し報道され、ウクライナへの攻撃をさらに煽ることになるんじゃないかということが考えられます。ジリノフスキー氏は非常に人気の政治家です。私も会ったことがあって、パーティーで会うと『日本で一緒にアメリカと戦争しよう』と『日露で組んでアメリカに対して戦争しよう』と言っていました。つまり、今そういった言動が、亡くなったことによってメモワール(回想)として刺激をして、さらにウクライナに対して厳しい措置を取るべきだという論調が巻き上がる可能性がありまず。プーチンとも親しい。野党の政治家なんですけども、野党なんだけどもその自分の居場所を踏まえてプーチンの言えないようなことを言ってきたということだと思います」
2022年04月07日(木)現在の情報です