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『もう一度ホームランを』交通事故で頸髄損傷..."一生車いす"の宣告受けプロの夢を断たれた青年が再びバッターボックスに

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 プロ野球選手を目指していた男性が8年前に交通事故で頸髄を損傷し、医師から「一生車いす」の宣告を受けました。道半ばで夢を断たれましたが、男性はいまも挑戦を続けています。

大学1年時に事故で頸髄を損傷…突如断たれた“プロ野球選手になる夢”

 上野遥介さん(26)は小学2年から野球を始め、強豪校である「京都府立鳥羽高校」に進学。高校通算21本のホームランを打ち、3年夏の京都府大会では準優勝に貢献しました。
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 (上野遥介さん)
 「(Q将来の夢は?)プロ野球選手を目指してやっていましたね」
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 大学でも「プロ入り」の夢を追い、野球漬けの毎日を送っていました。ところが大学1年、19歳のときに上野さんは交通事故に遭いました。一命は取り留めましたが、頸髄を損傷し、医師から「もう歩くことはできない」と宣告されました。

 (上野遥介さん)
 「野球にかけていたので、野球ができなくなった自分に価値があるのかなと。(野球を)見ることもできなかったですし、嫉妬してしまうというか、過去の自分と比べてしまう」
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 母親の久仁子さんも、「一生車いす」と告げられた瞬間が忘れられません。

 (母・久仁子さん)
 「最初、(医師の)先生から『車いすの生活になる』と言われたので、本当に真っ白になるというか、『あぁ、こういうことなんだな』と思いました。(息子は)ずっと野球中心の生活をしていたので この子の未来はここで終わってしまうんじゃないかという不安をすごく感じましたね」
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 突然、一変した生活。8年間のリハビリを続け、いまは歩けるようになりましたが、事故の前の状態には戻れません。

 (上野遥介さん)
 「車がなかったら結構しんどいというか、あんまり電車とかバスとか乗る機会がないので。やっぱり移動というのが一番ハードルが高いというか、しんどいところ」

『ホームランを打って応援してくれた方々に感謝を返したい』

 退院後からいまも上野さんが通っているのが、大阪市北区にある「J-Workout」。脊髄を損傷した人が再び立ち上がって歩くことを目指すトレーニングジムです。脊髄を損傷すると脳と体を行き来する神経(ネットワーク)が途絶え、手足や体などに障がいが現れます。
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 (J‐Workout 谷野雅紀代表)
 「神経の再建・再教育というところがベースです。赤ちゃんが最初、例えば寝返りしたり四つんばいしたり膝立ちしたり歩く練習をしたり、そういった過程を脊髄損傷後にもう一度、損傷者の方にも順々に追いなおしていっていただくやり方がベースになっています」
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 上野さんも通い始めた時には補助がないと歩けませんでしたが、いまでは補助なしで縄跳びができるようになるまで回復しました。

 (上野遥介さん)
 「(Q初めてこのジムにきた時はどんな気持ちだった?)本当に希望というか。(きょうまで)あっという間ではなかったかもしれないです。トレーニングもそうですし、日常でどれだけ歩けるかというのは日々自分の挑戦なので。濃い一日一日を過ごせてきたかなと思いますね」
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 事故の後、向き合うことができなかった野球。上野さんは「もう一度とホームランを打ちたい」と思うようになりました。この挑戦は母校のバッターボックスに立ち、ピッチングマシーンからホームランを打つというものです。

 (上野遥介さん)
 「ホームランを打って、いままで応援してくれた方々に感謝を返したい。諦めない姿勢というか、夢を追うことの素晴らしさを伝えられたらいいなと思っています」

「中日ドラゴンズ」の大野雄大投手が練習相手としてかけつける

 そんな上野さんに、野球仲間がすごい人を連れて来てくれました。「中日ドラゴンズ」のエースで、京都出身の大野雄大投手が練習相手としてかけつけてくれたのです。急遽、3打席の実力試しが実現しました。
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 結果、ヒットは打てませんでしたが、打席に立つ喜びを噛みしめます。
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 (上野さん)「めちゃくちゃ楽しかったです」
 (大野投手)「ほんまに全力でいきましたよ、僕も」
 (上野さん)「僕もフルスイングで」
 (大野投手)「いろんな方の希望になると思います、すけ兄(上野さん)のこういう行動が。全力でスイングしてこけていた姿とか。応援しています」

目指すは“70m先の柵越え” グラウンドには家族や友人らの姿

 脚を上げて踏み込むバッティングフォームは難しく、飛距離のカギは“上半身”。上野さんは8年ぶりに打ち方を学びなおします。

 (上野さんに話すジム&スタジオNeeDSの中務正幸ヘッドトレーナー)
 「おなかが効いた状態で伸びていくのか、抜けた状態で伸びるのかで全然違うので…」
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 そして迎えた本番の日。母校のグラウンドには家族や友人たちが駆けつけました。

 (母・久仁子さん)
 「懐かしい思いと、試合前にドキドキしたときの気持ちをきのう思い出しました。とっても楽しみにしています」
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 高校時代の監督は、この日のために上野さんの名前が入ったボールを用意してくれていました。目指すは、70m先の柵越えです。
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 1球目は…あと数m届きません。その後は柵の手前まで打球を放つ場面も。
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 途中、バランスを崩して転んでしまいますが、笑顔で立ち上がります。
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 そして、粘り続けた12球目。打った球は大きな弧を描き、柵の向こうへ。見事ホームランを放ちました。
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 上野さんはダイヤモンドを1周。自分の足で踏みしめます。
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 二塁にはかつての野球仲間たちがハイタッチで、三塁には少年野球の後輩たちや、一緒に頑張ったジムのトレーナーが出迎えてくれました。
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 (上野遥介さん)
 「母は僕が野球をやっている姿を見るのが大好きだったと思うので、こうやって多くの人の前でホームランを打つことができて、母さんも喜んでいると思います。またこれからも僕自身の挑戦は続いていくので、今後もよければ応援よろしくお願いします。ありがとうございました!」
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 「諦めなければ、夢は叶う」。上野さんは自分らしい一歩を踏み出しました。

2022年06月17日(金)現在の情報です

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