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【解説】ゴルバチョフ氏の死を考える「ロシアに地獄の道を開いた人物」「国葬にはならないだろう」...ロシアウォッチャー佐々木教授に聞く

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旧ソ連の元大統領ゴルバチョフ氏の死について、多くの日本人にとってゴルバチョフ氏は米ソ冷戦に幕を下ろし、ソ連を解体して民主化を推し進めた「英雄的人物」と認識されていますが、大和大学の佐々木正明教授によると、ロシアの人々にとっては国を瓦解させた人物として忌み嫌われているといいます。現地新聞のコラムでは「ロシアに地獄の道を開いた」「悪夢の90年代を抱えた」と蔑まれています。一方プーチン大統領は「疲弊したロシアを立て直し国民生活を豊かにした」と国内人気は高く、ゴルバチョフ氏とプーチン大統領は国内外で真逆の評価であることを理解しておくべきといいます。そして「ゴルバチョフ氏は国葬にはならないだろう」としながら、葬儀で「プーチン大統領がどんな弔辞を贈るのかに注目したいと話します。(2022年8月31日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

―――ゴルバチョフ元大統領が91歳でお亡くなりになりました。

佐々木正明教授によりますと「西側のドアを開けて自由をもたらそうとした人物で、『自由』の終焉を示す出来事となりました」と。実は先生、ゴルバチョフさんに大きく影響を受けたそうですが?

1991年は、大学1年生でロシア語を学び始めたときで、ゴルバチョフさんの言葉を自分で訳したりして学んでいた。2014年には、ゴルバチョフさんが幽閉されたクリミア半島の別荘に行きまして。ただクリミア半島ではゴルバチョフさんの別荘がどこか、誰も知らなかったんです。つまり国内では人気が二分というより、ほとんどの人が忌み嫌っている存在、「国を崩壊させた人物である」ということだと思います。

―――世界的には評価された人物ですが、ロシア国内ではそうじゃないのですね?"

朝のニュースでは、ロシア国営通信のコラムニストが「ゴルバチョフ氏はロシアの地獄の道を開いた。90年代にギャングが蔓延して、多くの人が悪夢の90年代を抱えて内戦で多くの人が亡くなった。ゴルバチョフ氏は善意でその道を開いてしまった」という論評がありました。その言葉はまさにロシア人、特に“ソ連人”が共通して持っている考えだと思います。1980年代末は、スーパーに物がなかった。失業者も、犯罪も多くなった。その後、エリツィン時代も立て直せなかった。ゴルバチョフ氏がいなければ、国は崩壊しなかったということだと思います。

―――いっぽうプーチン大統領は、疲弊したロシアを立て直し、国民の生活を豊かにしたということでぐっと評価を上げました。

この2人は全く評価が異なる。プーチン大統領は国内で人気ですけども、果たして海外でどうなのか、ゴルバチョフ氏は全く逆なんですよね。この2人はロシアのそのものを物語る評価なのかなというふうに思います。一言で言えばゴルバチョフさん、エリツィンさんが崩壊させた国を、経済的にゆとりをもたらしたというのが大きい。

―――佐々木先生によると、どこに葬られるのかが焦点の一つになりますとのこと。ソ連時代のレーニン・スターリンは「赤の広場」、ゴルバチョフさんは「ノヴォテヴィチ墓地(モスクワ)」に葬られる可能性もある。エリツィン氏やらライサ(ゴルバチョフ)夫人の墓もあります。

赤の広場には共産党の幹部、レーニン・スターリンの廟があるんです。レーニンさんに限っては遺体が保存されている状況にあります。いっぽうノヴォテヴィチ墓地にはライサ夫人のお墓があるんですが、その隣にスペースがありまして、過去に訪問した際「(ゴルバチョフさんは)ここに入るんだろうね」と思ったことを覚えています。最新の報道を見ても、ノヴォテヴィチ墓地に葬られるのではないかと言われていますので、おそらくゴルバチョフ氏は1999年にライサ夫人が葬られたようなときから、「もう自分は赤の広場に入らない」とソ連を否定していたのかな、という印象があります。

―――ゴルバチョフ大統領は1991年に来日し、海部総理と向き合った際にこんなやりとりがあったんだそうです。
海部氏「怒らないで聞いてくれ、日本国民はソ連に不信感を持っている。」
ゴルバチョフ氏「言いにくいことを言うな、君は。」
実際に、こんなやりとりがあったのですか?
はい。私、海部元総理に2009年ぐらいにインタビューをした際に裏話を聞きました。海部さんは当時ロシア語を覚えすごい準備をして、それはサッチャー英国首相から聞いたって言うんですよ、西ドイツのコール首相からもアドバイスをいただいたと。「まず胸襟を開いて話してみなさい」と。そして海部さんは、ゴルバチョフ氏に何度も何度も迫り、このようなエピソードがあったということをお聞きしました。

―――そして海部さんは、最後に指切りげんまんを交わし、「うそついたら針千本飲ます」を教えたというそうです。ロングランの会談で最後までどうなるかわからなかったがまとまった。その直前に海部さんはゴルバチョフさんに寄り添って、「日本では、親は子どもに嘘をついてはいかんと教えてる。小指と小指を重ねようじゃないか」と言ったらゴルバチョフさんは「やろう、やろう」と言って指切りげんまんをした。そして「ドッ」と沸いたっていうんです。

―――ゴルバチョフさんは国葬にはならないんですか?

これは、ならないですね。「反プーチン」になりかねないので、ウクライナ侵攻を否定しておりましたし、集まる人も、もしかしたらマークされるかもしれませんので、ひっそりと行われる可能性があるだろう。ただそこでプーチンさんが何を言うのか。これは歴史的な転換点になる弔辞になると思います。

2022年08月31日(水)現在の情報です

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