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難病を患う6歳息子のドナーを待つ家族...骨髄移植には『型の適合』以外にも"関門"が 「知らない誰かの善意に頼らないと実現しない」骨髄バンクの実情

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 骨髄バンクのドナーの年間新規登録者数は、競泳選手の池江璃花子さんが白血病を公表した2019年は5万9994人でしたが、2022年はコロナ禍ということもあり2万8198人と半減しています(2022年10月末時点)。骨髄バンクのドナー登録は18~54歳という年齢制限があります。2021年末時点の骨髄バンク登録者約53万9000人のうち、46~51歳の登録者が最も多く全体の23.3%を占めていて、若い世代のドナー登録を増やすことが喫緊の課題となっています。そうした中で、ドナーを待つ6歳の男の子と、男の子を支える家族の日々を取材しました。

血液の難病と闘い入院生活を送る6歳

 田中謙智君(6)は、去年7月から名古屋市の病院に入院しています。ベッド2台分の小さなスペースが彼の生活場所です。
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 謙智君が患うのは「再生不良性貧血」という血液の難病です。両親が交代で付き添いますが、新型コロナウイルスの影響もあって今は母親のゆきさんが24時間つきっきりです。

 父親の浩章さんは、病院のすぐ近くに借りたアパートで仕事をしながら入院生活に必要なサポートを続けています。家族と離れた生活で一番の楽しみは、病室とオンラインでつないで一緒に食事をする時間です。
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 【オンラインでのやりとり】
 (浩章さん)「zoomつなげられる?お父さんも食べまーす」
  (謙智君)「(Q今、謙智君がいるのはどこ?)病院。何も病気になっていないんだけどいる。お母さんが行くって言ったから」
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 病気がわかったのは謙智君が4歳のとき。39℃の熱が出て新型コロナウイルスのPCR検査を受けたら鼻血が止まらず血液検査を受けました。血小板の値が少ない状態が続き、その後、骨髄検査を受けて再生不良性貧血と診断されました。
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 (謙智君の父 田中浩章さん)
 「『病院に行くよ』とは言っていたので、本人がそれをどう受け止めてどう思っていたのかは、まだまだ言葉で表現できる年ではないので。自分の自由が制限される中で生活しているので、たまに『早くお家に帰りたい』とかは言ったりするのですが、そういう時は悲しくなりますよね」

外出して日常生活送ることが難しい現状…「骨髄移植」を希望することに

 再生不良性貧血は、子どもの場合、100万人に2人が発症する難病です。血液を作る細胞のもととなる造血幹細胞に異常が起きます。免疫力が落ちて感染症にかかったり、貧血や出血の症状が出やすく、まれに白血病になることもあります。入院して免疫抑制療法と呼ばれる投薬治療を受けるのが中心ですが、薬が効かない場合などは移植が必要となります。

 (国立がん研究センター・造血幹細胞移植科 福田隆浩医師)
 「免疫抑制療法が開発されて、(骨髄)移植なしで回復される人も増えてきているんですけれども、特に若い人や小さい子はずっと免疫抑制剤を飲み続けないといけないということを考えると、いいドナーさんがいれば骨髄移植などで治療を終わらせる」
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 謙智君は免疫抑制療法では血液の値が十分回復せず、医師から移植を提案されます。謙智君の血液の状態では感染症にかかりやすく、外出して日常生活を送ることは難しいのです。早く家に帰りたいと願う謙智君の望みが叶う方法は移植だと家族は決断しました。骨髄バンクに登録しドナーが見つかるのを待つことにしましたが、厳しい現実につきあたります。

 (謙智君の父 田中浩章さん)
 「最終的にドナー提供するという意思表示に関しても、ご家族の同意がないと提供者になれないルールもあるので、(ドナーが)見つかったタイミングから(提供まで)3か月はかかると思ってくださいと言われている状況ですね。なので、その間の3か月は病室で提供いただくまでの日々を待つことになると思います」

「HLAが合わない」など移植までに多くの“関門”

 骨髄移植は血液型ではなくHLAという白血球の型が適合しているとうまくいきます。親子で合うことは少なく、兄弟で4分の1、他人となると数百人から数万人に1人適合するといわれています。謙智君の主治医は骨髄バンクに登録されているドナーのデータを頻繁にチェックしますが、HLAが十分に合わないなど様々な理由で提供に結びつかないと話します。

 (名古屋第一赤十字病院 吉田奈央医師)
 「移植に至るまでに患者さん側の問題だったりドナーさん側の問題だったり、とてもたくさんの“関門”がありますね。特にこのコロナ禍においては、患者さんがコロナに感染してしばらく移植ができないとか、実際に移植を延期した患者さんもいらっしゃいます。ドナーさん側も、登録して選ばれてからも健康に気をつけないといけないです」

 謙智君の場合、ドナー候補となる人が11人見つかりましたが、最終的に提供に至りませんでした。

骨髄バンクを通じて移植を受けた「白血病サバイバー」の現役Jリーガー

 白血病サバイバーで現役Jリーガーのアルビレックス新潟・早川史哉選手(28)は6年前、骨髄バンクを通じて移植を受けました。ドナーに対する感謝の気持ちを今も忘れません。
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 (早川史哉選手)
 「自分の細胞じゃなくて、血を作る細胞を他人からいただいても僕自身生きることができて血を作ることができるというのは、ものすごく医療の不思議というか…あんまり想像できないことだなと」

「骨髄移植は知らない誰かの善意に頼らないと実現しない」

 ドナーになると事前に何度も検査を受け、提供する時は入院も必要です。また、ドナーになれる年齢は55歳までと決まっています。「仕事を休めない」「家族の反対」など、いざとなると様々な事情で提供に踏み切れない人もいます。

 (オンラインで骨髄移植の現状を話す田中浩章さん)
 「骨髄バンクを経由してドナー探しをしているのですが、現時点で最適なドナーが見つかっていないのが実情です。親子で提供できる可能性ないので、骨髄移植は知らない誰かの善意に頼らないと実現しない医療です。ドナー登録者が減っていたり、55歳になると(登録が)抹消される」

 謙智君の父・浩章さんはなかなか進まない移植の現状を知り、国などにドナー登録を増やす方法を共に考えたいと呼びかける活動を始めました。

 (謙智君の父 田中浩章さん)
 「思いだけで突っ走っています。だめならだめだし、門前払いされたらそこまでだなと思いながら。行動しないことには波風が立たないので」

 謙智君が入院して1年あまり。田中さんはある決断をしました。赤ちゃんのへその緒・臍帯血(さいたいけつ)で謙智君のHLAに合ったドナーが見つかったため、臍帯血移植を受けることにしたのです。謙智君は11月上旬に移植の手術を受け、経過観察中ということです。骨髄も臍帯血もどれも見ず知らずの誰かの善意。田中さんは移植を待つ患者や家族のために骨髄バンクの実情を多くの人に知ってほしいと話しています。

2022年11月21日(月)現在の情報です

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