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「入れてくれればどこでもいい」退去日が迫る78歳、住まい探しに奔走 収入・貯蓄あってもオーナー側は『孤独死』など懸念 「決まらなかったらホームレスだよって冗談で...」

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 持ち家の建て替えや熟年離婚などさまざまな理由で、65歳以上の高齢者の賃貸住宅の需要が増えています。一方で、高齢者が賃貸住宅を借りづらい現状があります。オーナー側の懸念、『高齢者専門』の賃貸仲介会社や行政による対策を取材しました。

退去日が迫る中…「入れてくれればどこでもいい」

 10月2日、新しく部屋を借りようと物件を見に来たのは78歳のAさん。Aさんは、いま住んでいる10年契約の部屋の退去日が1か月後に迫っていて、急いで次の住まいを探しているといいます。

 (賃貸仲介会社「R65」 岡田真治さん)「広さはどうですか?」
 (Aさん)「広さはちょっとこっちの方が狭いですけど。まぁそんな気にならないですね」
 (賃貸仲介会社「R65」 岡田真治さん)「荷物というか、例えばベッドとか、テレビとか」
 (Aさん)「荷物はもうあまりないんで、大丈夫です」

 (Aさん)「9月の初めからちょっと探したんですけれど、なかなかやっぱり年配者っていうと(仲介会社側が)『う~ん…』みたいな感じ。若いときだったら『冗談じゃない!』っていうことになるかもしれないけれど。とにかく条件は『入れてくれればどこでもいい』です」

 退去に伴う住まい探し。これが3軒目の仲介会社だといいます。物件は最寄り駅から徒歩2分。間取りは1K、家賃は6万3000円です。Aさんは前の住まいと生活エリアが同じであることなどからこの部屋に決めたいと考えています。

 (Aさん)「1軒目・2軒目は高齢者ということで、あまり(仲介会社の)やる気がないというか…。(契約には)保証人がいりますからって保証人を用意すると、『もうちょっと年齢が若い人いませんか』とかね。そういうので延ばされて、20日間ぐらいかかっちゃいましたね、1軒目で。結局はだめ」

大家や管理会社は「収入面」より「何かあったとき」を心配

 いま65歳以上の高齢者が賃貸住宅を借りづらいことが大きな問題となっています。

 仲介を行う会社の担当者は…

 (賃貸仲介会社「R65」 岡田真治さん)「貯蓄が結構ある人でも、審査は通るけど、オーナーさんに断られるケースがほとんどなので、収入面というよりは、ここで何かあったときっていうのが、一番大家さんとか管理会社さんが心配しているところだと思います」

 約30年前に離婚してから単身で暮らしてきたAさん。身体の調子はよく、いまでも週5日、飲食店で働いています。収入は月に約25万円と年金、さらに預貯金もあり、金銭面では生活に困っていませんが、年齢がネックとなり住まい探しは困難を極めているといいます。

 (Aさん)「勤めているお店で、『今月決まらなかったらホームレスだよ、どうしよう』とかっていう、そんな冗談を言って紛らわせています」

高齢者の入居を「受け入れていない」賃貸オーナーが約4割

 途方に暮れる中、今回Aさんが頼ったのは高齢者向けの賃貸仲介会社「R65」でした。代表を務めるのは山本遼さん。高齢者の入居に理解がある全国の仲介会社と提携して物件を紹介しています。

 年間300件以上の住まい探しを支援していますが、そもそもなぜ高齢者専門にしたのでしょうか?

 (賃貸仲介会社「R65」 山本遼代表)「80歳の女性の方だったんですけれども、不動産会社に勤めていた頃に(相談に)来られたときに、『ここで不動産会社5件目です』とおっしゃっていて、5社回って、なかなか物件が見つからなかったということでしたし、僕自身、お部屋を探してみたときに200件ぐらい電話をして、借りられるところが5件しかなかった」

 「R65」の調査では高齢者の入居を「受け入れていない」賃貸オーナーが約4割を超えていることがわかりました。その背景にはオーナー側が高齢者の入居はリスクが高いと考える傾向があるからだといいます。

 (賃貸仲介会社「R65」 山本遼代表)「例えば孤独死や認知症になってしまうんじゃないか、家賃を滞納されるんじゃないかと、大家さんが恐れている。一番大きいところでいうと、いままで大家・不動産会社が、高齢者に(ほとんど)賃貸住宅を貸していない。この経験不足も非常に大きく関与していると思います」

 賃貸での孤独死などは、残された荷物の処理や清掃で、次の人に貸すことができるまで多くの時間と費用がかかります。これらを未然に防ぐため、見守りサービスの活用や緊急連絡先を決めておくなどの対策が重要だといいます。

豊中市がいち早く相談窓口を開設

 行政も課題解決に動いています。大阪府内でいち早く相談窓口を開設した豊中市。高齢者の民間賃貸住宅への入居を支援しています。昨年度は175人の高齢者が相談に訪れました。

 (豊中市住宅課 岩下歌課長)「相談に来られる人の中には、複数の課題を抱えている人もたくさんいらっしゃいます。生活支援、介護保険制度、債務整理など、そういったところの市の窓口におつなぎしています」

 豊中市では福祉や自立支援の担当者と連携して住まいを探すサポートをしています。相談者の課題を先に解決することで、入居の条件を満たす場合があるといいます。

「高齢者?いいですよ、どうぞどうぞ。となれば最高」

 退去日が迫るAさん。内覧から1週間後の10月8日、入居できることが決まりました。ただ、当初オーナーはAさんに部屋を貸すために懸念していたことがあります。

 それは、「緊急連絡先」でした。

 Aさん「私の実の姉(80代)が同じ区に住んでるので、緊急連絡先を姉にお願いするのが一番いいかなと思ったんですけど、私の姉も高齢ですので、管理会社から『高齢なので別の人にしてくれないか』って言われましたね」

 オーナーは血縁関係がなくても高齢者ではない人を求めました。そこで、男性は職場の40代の店長に頼み、了承を得ることができました。すると、オーナーも貸すことに同意したといいます。

 (Aさん)「まだ私もこれからあと何年生きるかわかりませんけど、かなり年を取ったときも、『高齢者?いいですよ。どうぞどうぞ』っていうぐらいのところがあれば最高だと思いますけどね」

2024年10月10日(木)現在の情報です

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