2024年12月06日(金)公開
ワンルーム平屋の弱点を克服したのは、宇宙船のコンセプトとなった「凹(おう)レンズ」窓! 築33年をフルリノベーションした宇宙船のような家【住人十色】
編集部セレクト
舞台は愛媛県西条市。「宇宙船」をコンセプトに、築33年の平屋をワンルームにフルリノベーションした家を紹介する。
住人(アルジ)は、2人の子どもがいる4人家族。夫は建築家で、東京から故郷にUターンし、昨年新居を構えた。屋根も壁もシルバーのガルバリウム鋼板で覆われたスタイリッシュな平屋は、長い間空き家だった築33年の古い家を全面改修したものだという。
鉄の板でできた重厚感のある玄関扉を開けると、間仕切り壁を取り払ったひと繋がりの大空間が広がる。元々4部屋ほどあった平屋を柱と梁(はり)だけにした状態から改修し、完全なワンルームとして設計したという。
そんな家の中で目を引くのが、丸い形をした天井の窓。実は、夫が家を作るときに想定したコンセプトが「宇宙船」で、玄関の重い扉も宇宙船の着陸ハッチをイメージしていたのだった。
結婚後、大阪や東京で暮らしていた住人(アルジ)一家。子育てのことを考え、自然豊かな夫の地元へのUターンを決意する。そこで憧れだった平屋を中古で手にするが、平屋は建築面積が広くなる分、家の真ん中まで光が届かず暗くなってしまうというデメリットがあった。その対策として一般的にはガラスの天窓を設置するが、直射日光で部屋が暑くなってしまうことも。
そこで採用した秘策が、6つの丸い天窓。しかもただの窓ではなく、アクリルを削り込んで作った「凹(おう)レンズ」が入っている。虫眼鏡などに使われる「凸(とつ)レンズ」が光を集めるのに対し、凹レンズには光を拡散する性質があり、小さな窓でも広範囲に光を採り込める。
しかもガラスより断熱性に優れたアクリル製なので、冬も快適。平屋の弱点だけでなく、一般的な天窓の弱点も克服できた。そして丸い天窓や、正方形だった平屋からインスピレーションを得たのが宇宙船。「家族を乗せた宇宙船」をリノベーションのテーマに掲げたのだった。
リビングの窓に面して設けたのは、合計10メートルのL字カウンター。実は、築33年の古家には耐震性の不安があった。そこで元々あったひさしの下まで外壁を70センチほどせり出して、基礎を新設。家の周りの6割ほどを70センチ増築したことで、耐震補強と同時に約10帖分も増築することができた。カフェのようなカウンタースペースも増築したこの70センチから生まれたものだ。
リビングの窓は、宇宙船のコックピットをイメージ。大開口からは四国山地など、のどかな風景が望める。窓に採用したのは、ハーフミラーというガラス。いわゆるマジックミラーで、日中は外の方が明るいので家の中がほぼ見えず、カーテンなしでも外の視線を気にすることなく過ごせる。
ただ、夜は室内の方が明るく丸見えになるので、ロールカーテンをつけている。一般的な窓ガラスより高額で、住宅に採用されることはほぼないというマジックミラーをわざわざ取り入れたわけは、宇宙船っぽい外観を意識しているからだそう。
ワンルームの家は、洗面スペースや寝室もオープン。ただ、どうしてもこもりたい時のためにスペースを仕切れるカーテンを設置している。カーテンレールは病院用のもので、頑丈に作られている分、開閉がスムーズで静か。音が伝わりやすいワンルーム平屋にはぴったりだ。
壁のないワンルーム平屋の中で限られた個室が、トイレと浴室ともう1つ。一見壁のようなキッチン横の扉を開けると、なんと立派な和室が出現する。実は15年前に元の持ち主が増築した奥座敷の部分で、リノベーション前は母屋と奥座敷は離れていたが、70センチ増築したことでくっついたのだという。奥座敷は築年数が浅かったので手を加えず、客間として活用している。
宇宙船のような家に住んでみて、「日中は外側から見えないという安心感があるので、純粋に景色を楽しんでいますし、景色を日常の中に取り込んで住めていることで、すごく心が豊かになるような感じを覚えてます」と妻。地元の自然や季節がすっかり生活に溶け込んでいるようだ。一方、夫も「どこにいても人の気配を感じられる。子どもがどこでも走り回れるとかそういうメリットはたくさんあるかなと思います」とワンルームの良さを語る。
無限に広がる宇宙のように、家族の楽しみがどんどん広がる家になりそうだ。(MBS『住人十色』2024年12月7日放送より TVerでも放送後1週間配信中)
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