2021年09月28日(火)公開
社長を直撃!人気スーパー『オーケー』が「関西スーパー」買収に本気なワケ 大手『H2O』と...株主が選ぶのはどっち?
コダワリ
関西ではお馴染みの「関西スーパー」を巡る争奪戦が起きています。今年8月、阪急阪神百貨店や阪急オアシスなどを傘下にもつ筆頭株主「エイチ・ツー・オーリテイリング」が関西スーパーを傘下に収めると発表しました。その一方で、首都圏を中心に131店舗を展開しているスーパー「オーケー」が今年6月に買収案を提示していたことがわかっています。関西スーパーとエイチ・ツー・オーリテイリングは相思相愛で、オーケーは関西スーパーに手を差し出している状況です。今年10月の臨時株主総会で道筋が決まると言われていますが、今回、オーケーへの独自取材で社長に直撃してきました。
首都圏で人気の「オーケー」
関西スーパーの争奪戦で一躍脚光を浴びることになったオーケーは関西人に受け入れられるのか。9月22日、横浜市内にある「オーケーみなとみらい店」を訪れると、平日にもかかわらず買い物客で賑わっていました。気になる商品の価格は?
(記者リポート)
「国産若鶏むね肉で1kg379円ということは100gで37円。お買い得な感じがしますね」
陳列された商品の値札には“特売”などの安さを強調するポップはありません。しかし、おにぎりは1個49円と破格です。
(記者リポート)
「大きいサイズのお弁当が全部291円。ボリュームもしっかりあります」
店内を見渡すとカートにカゴを3つも4つも載せて大量買いする客の姿がありました。
(記者)「大量買いされていますけど」
(5人家族の父親)「はい。1週間分まとめて」
(記者)「すごい量ですね」
(5人家族の父親)「そうじゃないと、結構減るので食材が」
(記者)「お仕事用?」
(5人家族の父親)「いいえ、家用で。安いんでね、大量に買って」
こちらの家族はわざわざ車で約1時間かけて買いに来ていました。
(家族)
「引っ越しちゃったんですけれど、やっぱりこっちがいいので、来ちゃうんです。生ものが新鮮なんですよ。野菜も青果店よりいいものを置いているし。常に安い」
オーケー社長が解説 安さの理由
オーケーの魅力はやはり“安さ”のようです。なぜ商品を安く提供できるのか、その訳を社長に聞いてみました。
(オーケー 二宮涼太郎社長)
「“競合店対抗値下げ”というのをやっているんですね。店の従業員がいろんな競合店を回って、そこでしっかり商品の値段をチェックして、それでもしオーケーが負けていたら、すかさず“競合店対抗値下げ”をお店の判断でする」
競合店より1円でも安く。商品を絞り、メーカー側と大量販売を約束することで低価格を実現。
黒毛和牛や豚肉も契約農家から一頭買いすることで上質な肉を低価格で提供しています。
そして納豆や豆腐など毎日商品が入荷するものには『3%引』のシールが貼ってあるものがありました。
(オーケー 二宮涼太郎社長)
「こちら例えば(値引きシールが貼っているのは)賞味期限が9月29日なんですね。こちら(シールなし)は9月30日。どうしてもシールを貼らないとお客さまの心理とすると賞味期限が長い商品を買いたくなりますから。お値引きをして早めに賞味期限が短い商品からご購入いただくと」
賞味期限がまだ1週間あっても値引きをすることで、賞味期限が短いものから売れていき、廃棄を減らすことができるのです。
また、刺身の盛り合わせには、よく見るアレが入っていません。
(オーケー 二宮涼太郎社長)
「たとえば大葉とかツマは除いていまして、その分しっかりお安くさせていただいている」
値段は正味の刺身代。ツマが必要な人には別売りで対応しています。
ビール売り場も少し様子が違います。
(オーケー 二宮涼太郎社長)
「常温で販売できるものは常温で販売するということで、お店で冷やすコストを減らして、その分お値段に還元する。冷やして飲みたいお客さまは家に持って帰って冷やして飲んでくださいと」
徹底的にコストカットすることも安さの要因でした。特売をせず、年間を通して低価格で販売する“Everyday Low Price”が店のポリシーにもなっているのです。
「買わない方がいい」も正直に告白
(オーケー 二宮涼太郎社長)
「今ちょうど天候の影響で価格も高いですし、ちょっと品質もあまり良くない時期なんですね。『できれば今は買わない方がいいですよ』というようなお知らせをしています」
『オネスト(正直)カード』といって、長雨の影響で野菜価格が例年の1.5倍と高い時にはカット野菜を勧めるなど、正直に伝えるシステムも導入しています。
(利用客)
「(売る側が)マイナスのことを書いているということが基本ないかなと思うので、信頼できるかなとは思います」
安さや誠実さが支持されて業績は右肩上がり。コロナ禍の巣ごもり需要もあり、オーケーの2021年3月期の売上高は5082億円、経常利益は314億円と3年前の2倍以上にまで拡大しました。
オーケーには「関西スーパー」から学んだ歴史が
そんなオーケーが40年前にスーパーの基礎を学んだのが『関西スーパー』でした。
当時いち早くアメリカの運営方式を取り入れた関西スーパーは業界のパイオニアとして知られ、鮮魚や精肉を店内加工して小分けにしてパック販売するなど、鮮度を重視した効率的なオペレーションを構築しました。
(関西スーパーマーケット創業者 故・北野祐次さん)
「アメリカで見ましたようなあの素晴らしい食の提供と、即調理したもの・商品化したものを売り場に並べる、これの繰り返しでございます。鮮度のいいものを提供し続けることができる」
その関西スーパーのノウハウを学ぶためにオーケーから研修で社員を派遣していたのです。1980年に創業者から直接教えを受けた人は。
(派遣一期生 中澤俊文内部監査室長)
「魚の切り方、お肉の切り方、野菜の並べ方、もう1品ずつ教えてもらいました。(Qそのマニュアルは今も?)いきています。(関西スーパーは)先生ですからね、足向けて寝られないような」
こうしたつながりが、数ある関西圏のスーパーの中から関西スーパーを選んだ理由のひとつだといいます。
関西スーパーめぐる2社の攻防 軍配はどちらに?
一方、8月31日、関西スーパーは阪急阪神百貨店を傘下に持つ「エイチ・ツー・オーリテイリング」の子会社となることを共同会見で発表しました。
(関西スーパーマーケット 福谷耕治社長)
「H2Oグループの一員となることが最善であると判断をし、H2Oさまとの経営統合契約を締結いたしました。やはり上場しておりますので、株主さまに対してご理解を賜るということが大変重要でございますので」
(エイチ・ツー・オーリテイリング 荒木直也社長)
「関西最強の“地域密着型食品スーパー連合”をぜひ目指していきたい」
会見後にオーケー側も文書を公表。今年6月には関西スーパー側に1株2250円で買い付けるTOB(公開買い付け)を実施する買収案を提示していたことなどを明らかにしました。
(オーケー 二宮涼太郎社長)
「我々が提案した時は、当時の株価の2倍以上の値段を付けましたので、そこは最大限の敬意を表したつもりでございました。関西スーパーさまのお力だとか、あとは我々とご一緒した後、一緒にもっといいスーパーをつくっていこうということで考えれば、十分2250円を出す価値はあると思いました。(Q関西スーパーさまはつれない印象だとお見受けするのですが?)必ず振り向いていただけると思っています」
専門家は、今年7月ごろには1株1000円前後で推移していた関西スーパーの株価に対し、オーケーの2250円の提示額は異例だといいます。
(岩井コスモ証券 有沢正一大阪調査課長)
「(公開買い付けでは)上乗せの幅というのは普通2割とか3割程度。ですから関西スーパーの場合なら1200~1300円。(2250円の提示額は)本気度の表れだと思いますし、それからこれだけの高い値段を出して関西スーパーを買収しても、その後の経営で元は取れるという自信の表れだと思いますね」
競争力強化につなげたい「エイチ・ツー・オーリテイリング」と関西進出を目指す「オーケー」。どちらに軍配があがるのか?関西スーパーの臨時株主総会は10月29日に開催予定で株主の判断に注目です。
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