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DV被害者が相談して気付く"私が間違っているんじゃないんだ"...警察など『DV相談8万件超』過去最多 DV加害者を支援する加害経験者も「人は学び変わることができると信じて」

特命取材班 スクープ

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 8万8600件。これは2023年の警察などへのDV相談件数で過去最多となった。DV被害を減らすにはどうすればいいのか。被害者だけでなく、加害者側も、それぞれの支援に取り組む人たちを取材した。

夫からのDV被害に悩む中で知った『女性相談員』の存在

 大阪・堺市南区役所の子育て支援課で働く佐藤さん(仮名)62歳。『女性相談員』として20年以上、女性の悩みに寄り添っている。

 取材した日もDV被害に悩む女性が訪ねてきた。3人の子どもがいる40代のAさん。夫からの暴力を日常的に受けてきたという。

 (佐藤さん)「何か不安なことはありますか?」
 (Aさん)「養育費とか」
 (佐藤さん)「そうやんね」
 (Aさん)「別居になったので、子どもへの面会も」
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 (Aさん)「自分が気に入らないことがあったら、急に物を投げつけるから始まって。髪をわしづかみにして体を倒したりとか。この人に逆らえない、逆らったらこうなるって」

 南区役所では、女性相談員への相談内容の8割以上が配偶者からのDVについてだという。Aさんも夫の暴力に脅えながらの生活が続く中、友人に教えられて女性相談員の存在を知った。

 (Aさん)「暴力を受けていると、私間違っているのかな、私が人と違うのかなって思ったりして。自分が直さなきゃいけないのかなとか。女性相談員に相談することで、そんなことないよって言われて、私違うんじゃないんだって」
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 夫との離婚を決意して子どもたちを連れて家を出た。夫は離婚に応じず、居場所を突き止めて押しかけてくることもあったという。Aさんは女性相談員のアドバイスで警察に相談。夫に接近禁止命令が言い渡された。

女性相談員がいる市町村は全国の約5割

 堺市では7つの区に合計14人の女性相談員が配置されていて、弁護士への相談の同席や裁判所への同行などの支援をしている。しかし、堺市のような自治体は決して多くはなく、全国の約5割の市町村では女性相談員が配置されていない。
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 (女性相談員 佐藤さん)「女性相談員のいない市は、職員さんが相談に応じているところが多くて、手厚い支援がなかなかできなかったり。相談っていうのは一期一会だと思っているんです。この人に相談してもしかたないと思ったらもう来ないじゃないですか」

「子どものいる前でもお構いなしに性的強要」夫の恐怖から解放された今

 30代のBさんも支援を受けた1人だ。夫からは性的・経済的DVがあったという。

 (Bさん)「子どもたちのいる前でもお構いなしに性的強要されて。夫が気に入るまで昼だろうが夜だろうが嫌々されて。(夫の収入は)趣味に全部回してしまっていて、株やギャンブル、飲みだったりとか」

 女性相談員らの支援を受けて、今は夫から離れた場所で子どもたちと暮らしている。

 (Bさん)「この机とか掃除機とかは支援してくださって。テレビも支援してくださったものですね。生活する中で必要なものがあったら急にそろえるのが苦しかったりするので、市からの支援で落ち着くまでは貸してくださる制度があって」
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 支援制度の存在を女性相談員に教えてもらい、夫の恐怖からようやく解放された。

 (Bさん)「子どもたちものびのびして自由に生活できているのがすごくよかったなと思いますね。子どもたちの笑顔も増えたと思います。女性相談員さんがもっと頼っていいんだよって、信頼できる場所が増えたので、女性相談員さんは本当に私の中では一番の支えだなと思っています」

自身の加害経験から『DV加害者が変わるための支援』する人も

 暴力などで配偶者を支配するDV加害者。彼らが変わるきっかけづくりをする人がいる。DV加害者らの自助団体「GADHA」の代表・中川瑛さん(32)。
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 取材した日は「DV加害者の会」を開催していた。自身の加害性に気づけるよう、どんなことをしたのかを互いに共有して、変わる努力をしている。

 【DV加害者の会でのやり取り】
 (参加者)「変われないっていう化け物みたいな扱いじゃなくて、学んで変われるんだっていうことを信じられるようなふうに、もっと広がっていってほしいなと」
 (中川さん)「やっぱり人は学び変わることができると僕はすごく信じていて、必ずしも罰されたり脅されたり責められる形で変わるんじゃなくて、むしろ共感を通して変わっていくことができるっていうことを伝えていくことができたらなとすごく思っています」
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 こう話す中川さんだが、実は妻に対するDV加害の経験がある。

 (中川瑛さん)「愚かとか、お前は間違っている、お前はおかしい、俺が正しい。要するに自分の言うことに従え、そっちが間違っているというスタンスでのコミュニケーションですね。怒鳴るようなトーンだったり、机を叩く、脅すような感じ」

 妻との関係が悪化し続ける中、自身が過去に両親からの悪意のない加害に苦しめられてきたことに気が付き、妻を傷つけていたことを自覚したという。
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 今はSNSなどで自身の加害経験を共有して、加害経験がある人とつながることで、変わるきっかけになればと考えている。

 中川さんの妻は、ここ数年は穏やかな時間が流れていると話す。

 (中川さんの妻)「変わってくれてよかったですね。これって私が頼んでやったわけでもないし、本人が気づいて、努力というか変わろうという行動をした結果、関係が良くなったのは偶然だと思うので。私はそれに対して良かったなという気持ちですね」

女性相談員と一緒に離婚調停の申請へ「これでやっと進むのかな」

 女性相談員の佐藤さん。取材した日、夫からのDVに苦しむ女性と裁判所に来ていた。

 (相談者)「離婚に向けて、調停の申請をしに来ました」
 (佐藤さん)「一緒に来させていただきました。同行です。一緒に行動させていただくことで、不安な気持ちをやわらげていただくという形ですね」
 (相談者)「これでやっと進むのかなという気持ちです。不安と、どうなるんやろうという気持ちがいっぱいなんですけど、その先にゴールっていうのもおかしいかもしれないですけど、ちょっと光が見えてきたのかなと」

 過去最多となったDV相談件数。被害をなくすためにも、被害者そして加害者の包括的な支援が求められている。

2024年06月12日(水)現在の情報です

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