時は今から二百年前ほど遡る江戸中期、塩釜(今の宮城県)の地。
魚を売り歩くのを生業とする七兵衛は、家の者が留守だと勝手に上がりこみ、盗みを
行うという小悪党。醜女だが無類に気立てのよいお志保を嫁にもらい、一旦は改心するが、お産の費用欲しさに行きずりの座頭を殺して金を奪う。月みちて生まれたのは男の子。その子は、醜男で悪党という両親の悪いところばかりを譲り受けたうえに、あろうことか盲だった。「座頭をひとり減らしてまたひとり殖やしただけだ」とめぐる宿命の恐ろしさに耐えかね、七兵衛は己が喉に庖丁を当てる。
目が見えないのならば座頭になるほかないと塩釜座頭・琴の市に預けられたその子は、杉の市という名前をもらう。手癖が悪く手が早い杉の市は十三で女を知り、師匠の女房お市にまで手をつける始末。
ある日、琴の市と杉の市がさる網元の座敷で浄瑠璃を語っている時、佐久間検校が乗り込んできた。当道座の掟に叛いたと難癖をつけ、おひねりを巻き上げに来たのだ。言い争ううち、杉の市は佐久間検校の結解(けっけ)(目明きの秘書のこと)を匕首で刺してしまう。そして別れを告げに寄った母の家でも誤まって母を刺し、駆け落ちしようとお市と共謀して師匠・琴の市を殺すが、お市は瀕死の琴の市の返り討ちにあう。
一人になった杉の市は、師匠から盗んだ金を携えて江戸に向かう。
門下生になるために江戸で注目を集める学者・勾当塙保己市の元を訪れた杉の市。晴眼者以上に品性を磨き、それ以上の仕事をすることこそ盲人が晴眼者と対等になるための唯一の道だと説く保己市が目明きと対で並ぶには金しかないと考える杉の市を弟子にするわけもない。金の力で先生よりもずっと早く検校になってみせると言い、杉の市は藪原検校に弟子入りし、貸し金の取立てで見る間に頭角をあらわすようになる。
そして二度目の主殺しをし、念願の二代目藪原検校の襲名披露をするその日、彼の
前に立ちふさがる影が………。
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