ひとりの褐色の肌の男性がいた。
「ほんまに大阪に、日本に恩返ししたい!」
流暢な関西弁で、街角でマイクを持つ彼の名は、にしゃんた、50歳だ。スリランカから日本に来て、31年目の夏、国民民主党から参議院選挙に出ることにした。
にしゃんたさんは、2019年1月に出馬会見をし、選挙戦が始まる前から大阪各地を歩き続けた。10万人との握手を目標に掲げ、まさに"ドブ板選挙"で闘いに挑む。7月の参院選公示後も、朝6時から夜11時まで、街角に立ち続けるその姿は、さながら昭和の選挙そのものだ。一方、SNSでネコのぬいぐるみ「ニャン太」を使った映像をアップし、若い層にアピールを繰り返す。続々と増えるフォロワー。戦略は上手く行っている...はずだった。
だが、選挙では、地盤に勝る自民党、大阪で勢いのある日本維新の会...、直前に出馬を表明した候補が、次々と抜き去っていく。
「何で黒人やのに出ているの?」
街頭で立っていても、有権者から心無い言葉が突き刺さり、気が落ち込むこともあるが、闘いを諦めはしない。そこには、日本で骨を埋める覚悟と自らのアイデンティティにつながる理由があった。
番組では、外国出身の彼がこの国で立候補を決意した理由、7月の参院選での闘いを追い、いまの日本の姿とこの国の選挙を考えたい。
月1回、それも日曜日深夜の放送という地味な番組ながら、ドキュメンタリーファンからの根強い支持を頂いており、2020年4月で放送開始から40年になります。
この間、番組は国内外のコンクールで高い評価を受け、芸術祭賞を始め、日本民間放送連盟賞、日本ジャーナリスト会議賞、更にはテレビ界のアカデミー賞といわれる国際エミー賞の最優秀賞を受賞するなど、輝かしい成果を上げてきました。また、こうした長年にわたる地道な活動と実績に対して、2003年には放送批評懇談会から「ギャラクシー特別賞」を受賞しています。
これからも「地域に密着したドキュメンタリー」という原点にたえず立ちかえりながら、より高い水準の作品をめざして“時代を映す”さまざまなメッセージを発信し続けてまいります。