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野村萬斎・裕基狂言師Vol.1247
放送25年 特別シリーズ「不屈」
伝統を身体に宿し今に…父子の物語
伝統芸能の役者の中でも群を抜く存在感を放つ野村萬斎。能・狂言の枠を軽快に乗り越え、演劇・映画・テレビと幅広く活躍してきた。
情熱大陸が始まった25年前、野村萬斎(当時32歳)は第8回に登場。「狂言は呼吸し...笑う」と、狂言を今に生きるものにする努力の日々を見せてくれた。
当時は、伝統を<受け継ぐ側>だった萬斎だが、翌年には息子・裕基を得て、今や伝統を明日へと<繋ぐ側>となった。
2023年、萬斎と裕基は舞台『ハムレット』に挑む。『ハムレット』は、これまで多くのシェイクスピア作品を演出し、演じてきた萬斎にとって、特に思い入れの深い作品でもある。24歳と37歳の時、主役・ハムレットを演じ、かの有名な台詞「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」に、狂言師としてのアイデンティティを問う姿を重ねていた。今回はハムレット役を息子・裕基が演じ、萬斎は演出・構成を担いつつ、舞台でも父親・叔父の二役をつとめる。
3歳から狂言の舞台に立ってきた息子・裕基にとって、今回の『ハムレット』は初めて挑む現代劇。しかも膨大で難解な台詞が多く、「法律を犯すような気分...」と言うほど、狂言とは勝手が違うことばかり。戸惑いと葛藤の日々が続く。
一方で、かつて同じ道を歩んできた父・萬斎は、「現代劇では狂言に無い動きを求められるから難しい」と、息子の苦悩を見守る。厳しい演出の奥にあるのは「芸の世界を広げることで、狂言を今に生きるものにする」こと。自分がつかみ取ってきた感覚を、息子へとつなぎたい。
狂言の<歴史>と、今に生きる<芸>を、どう次世代につないでいくのか?父と息子の3ヶ月の格闘を見つめた。
PROFILE
【野村萬斎 のむらまんさい】
1966年4月5日生 東京都出身。「狂言ござる乃座」主宰。東京藝術大学客員教授。
野村万作の長男。祖父・故六世野村万蔵及び父に師事。東京藝術大学音楽学部卒業。3歳の時に『靱猿』で初舞台。重要無形文化財総合指定保持者。94年に文化庁芸術家在外研修制度により渡英、シェイクスピアを学ぶ。国内外で多数の狂言・能公演に参加、普及に貢献する一方、現代劇や映画・テレビドラマの主演、古典の技法を駆使した作品の演出などで幅広く活躍。数々の賞に輝く。 2002~2022年3月 世田谷パブリックシアター芸術監督を務めた。
【野村裕基 のむらゆうき】
1999年10月9日生 東京都出身。野村萬斎の長男。祖父野村万作及び父に師事。慶應義塾大学法学部卒業。03年、3歳の時に『靱猿』で初舞台。
21年『ソロモンの偽証』でドラマ初出演。Netflix制作のアニメーション映画『ブライト:サムライソウル』では主人公・イゾウの声を勤めた。
22年狂言修業課程の卒業論文とも言える『釣狐』を披く。
構成:田代裕
ナレーター:窪田等
撮影:水上智重子・佐藤洋祐・佐々木秀和
音効:中嶋尊史
編集:宮島亜紀
制作協力:ソユーズ
プロデューサー:沖倫太朗・岩井優介
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