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寺田宜弘/
ウクライナ国立バレエ芸術監督Vol.1289
戦禍で世界的バレエ団を率いる
侵攻から2年 新作に込めた希望
2024年2月24日、ウクライナへの軍事侵攻から2年になる。戦禍に揺れる国で、日本人が国立バレエ団の芸術監督を務めていることをご存知だろうか。
寺田宜弘は、少年時代からウクライナでバレエを学び、自身もソリストとして活躍してきた過去を持つ。とはいえ国立劇場のバレエ団がその監督を日本人に託すのは初めてだ。空襲警報が日常となったいまでも、首都キーウにあるウクライナ国立歌劇場では毎週4回バレエとオペラの公演が行われ、ウクライナの人々が現実を忘れられるひと時を提供している。
かつて150人ほどのダンサーがいたウクライナ国立バレエ。しかし多くが海外へ逃れてしまった。寺田は逆境にめげることなく若手をスカウトし、現在は109人の団員たちが日々のレッスンや公演にあたっている。
番組では、戦争の影響にさらされながらも踊り続けることを選んだウクライナ国立バレエと寺田の日々を見つめた。
団員の中には、家族が前線にいる者、父親を喪った者もいる。過酷な状況のもとで、バレエに取り組む寺田たちの姿には、芸術の砦を守ろうとする、強い気概が溢れていた。
その中で、寺田は団員に慕われ、厚い信頼を寄せられている。
ウクライナ国立バレエは、1972年の初来日時から日本でも親しまれ、この冬も来日を果たしている。祖国日本の舞台で、ロマンティックバレエの名作「ジゼル」に、寺田は強いメッセージを込めていた・・・。
私たちが知ることのない厳しい環境下の暮らし、不条理と闘う芸術家の日々がここにある。
PROFILE
寺田宜弘
1976年生まれ、京都府出身。11歳で単身キエフ(現キーウ)へと渡り、日本人初となる旧ソ連の国費留学生としてキエフ国立バレエ学校で学んだ。
1995年「キエフ・バレエ(現ウクライナ国立バレエ)」に入団。ソリストとして多くの舞台にたつ。引退後、キーウ国立バレエ学校芸術監督に就任。2016年ウクライナ政府よりウクライナ人民芸術家の称号を与えられた。
ロシア侵攻の時はヨーロッパに逃れ、教え子たちのサポートにあたった。
趣味は料理。煮込み料理が得意。教え子を招いて食事をすることもしばしば。
ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)
1867年創立のウクライナ国立歌劇場を本拠地とするバレエ団。
ボリショイ、マリインスキーとならぶ旧ソビエトの3大バレエとされている名門で、著名なダンサーを輩出してきた。
クラシック・バレエ作品を中心に上演し、国際的なツアーも数多く行っている。
構成:田代裕
ナレーター:窪田等
撮影:矢吹啓司
音効:増子彰
編集:芦垣均
制作協力:ドキュメンタリージャパン
プロデューサー:沖倫太朗・新津総子
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