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2024年08月18日(日) 放送分

松井秀太郎ジャズトランペット奏者
Vol.1314

ジャズ界に現れた“超新星”
「トランペットと生きる」覚悟の理由

24歳のトランペット奏者・松井秀太郎は、いま日本のジャズシーンで最も注目されるアーティストのひとりだ。
国立音大の附属高校でクラッシックを学んだが、大学に進むとジャズを専攻、在学中にプロデビューを果たした。評価されているのは、高い演奏技術と豊かな表現力だ。
世界的なジャズピアニスト・小曽根真はこう評する。「音楽に意思がある。トランペットの放つ音から、これまでに歩んできた情景が伝わってきて、心が震えた」
全国9都市を巡る初のツアー、松井はいわゆる"姫カット"で現れた。ロングヘアをなびかせ、終始穏やかな物腰でバンドメンバーに指示を出す。披露したのは、クラッシックのアレンジ1曲をのぞいて、全て本人のオリジナルだった。さらに、各公演に合わせて新曲も用意していた。しかもある日の作品は当日完成したばかり。「子守唄、鼻歌を歌ってる感じ」...それだけをメンバーに伝えると、その場で即興演奏が始まった。
松井にとってトランペットは、歌を歌う感覚に近いという。楽器は自分が作った歌を伝えるためのものであり、そこにエネルギーや魂をこめるのだと。
だが意外にも、その楽器をやめてしまおうかと悩んだ時期があると打ち明ける。中学時代、希望して転入した吹奏楽の強豪校。ある日突然通えなくなり、そのまま家に引きこもるようになったそうだ。
その頃、ジェンダーに苦しんでいた。男性らしさ女性らしさという枠に囚われたくない自分に気づき、このまま社会でやっていけるのか、大好きな音楽を続けられるのか、この先の人生の道筋がわからなくなった。ひたすら部屋で吹き続け、たどり着いた答え...「自分が信じる好きなことをしよう、トランペットで生きてゆく」
取材中、ジャズの本場ニューヨークで、初のレコーディングが行われた。バックには世界的なミュージシャンたち。松井はしかし緊張するそぶりもなく、あえて彼らにぶつけたい曲を用意していた。本人曰く、とてもシンプルなメロディーで、およそジャズとは言えない曲。「何もない楽譜から、彼らとのセッションでどんな音やエネルギーが生まれるのか試してみたい」。
柔らかく、けれど果敢に。気鋭のトランぺッターが奏でる音色―

PROFILE

1999年東京生まれ。幼少期より独学でピアノを、9歳よりトランペットを始める。
国立音楽大学附属高校音楽科を経て、同大学ジャズ専修を首席で卒業。矢田部賞受賞。トランペットを奥村晶、エリック・ミヤシロらに、ジャズアンサンブルを小曽根真に師事。
Newtide Jazz Orchestraのリードトランペットを担当。在学中より自身のジャズコンサートなどプロ活動を始める。
2023年7月にファーストアルバム「STEPS OF THE BLUE」をリリース。
同年9月に自身のバンドを率いてBlue Note TOKYOで初演奏。
ソロ活動の他にHYDE、米津玄師、King Gnuなどアーティストのサポート、ドラマ・CMレコーディングなどもおこなっている。

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