京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は株式会社俵屋吉富社長の石原義清さんが通う「太陽カレー」です。
■石原 義清(いしはら よしきよ)さん
1964年6月29日生まれ。京都府出身。同志社大学文学部卒。宝暦5年(1755)創業の京菓子司「俵屋吉富」の9代目当主で、2004年7月に代表取締役社長就任。(一財)ギルドハウス京菓子 理事、京菓子協同組合 副理事長、茶道裏千家淡交会 京都西支部 副支部長なども務める。
最後の晩餐は、奥様の手料理の出汁巻き。
「俵屋吉富 烏丸店」北隣にある「京菓子資料館」では、2020年6月18日~9月15日の期間、「世界のお菓子展」を開催。京菓子をはじめ日本の菓子に関するさまざまな資料や道具等を展示するほか、パネルなどで世界各国の郷土菓子についても紹介する。
https://kyogashi.co.jp/shiryoukan/
毎日通えるリーズナブルさもうれしい。ワイン好きにもお薦めの極ウマ欧風カレー
日本の国民食ともいえるカレー。京都のカレー好きから多くの支持を集める一軒に、石原さんお薦めの「太陽カレー」がある。ソムリエの背戸昭宏さんが作る欧風カレーが大評判で、開店前から大勢が列を作る。
フランスの田舎の小さなレストランをイメージした店内は、白が基調のシンプルな内装にフランスの音楽が流れるおしゃれな雰囲気だ。
石原さんはオーナーの背戸さんとは35年来の親友同士で、年5、6回訪れるという。
「20歳の頃からのつきあいで、ワインブームの前から一緒にワインパーティーをして楽しんだりしていました。彼はワインを使ってカレーを作っているんですが、ワインのふくよかさが上手にカレーに生かされていて、おいしい。ワイン好きも納得の味だと思います。サービスも奥さんの対応が素晴らしいし、気に入らないのは30分並ばないと食べられないことぐらい(笑)。1人でも家族4人でも行きますが、家族からはいつも連れて行けと言われます」(石原さん)
「石原君はもともとローターアクトクラブの仲間で、小学校の後輩でもあり、家族ぐるみで仲良くさせてもらっています。本当においしいものを毎日食べている社長さんが、うちのカレーをおいしいと言って食べに来てくれることが、うれしいですね」(背戸さん)
「昔ながらの欧風カレーを今風にして、毎日でも食べてもらえて、ワインとも合うカレーを目指しました」
そう話す背戸さんは、大手アパレルメーカー勤務を経て家業のブティックを営んでいたが、料理の仕事をしたいと、創作居酒屋「ばくばく」を開業。その後、15年続けた居酒屋をやめ、2013年11月にカレー専門店「太陽カレー」を始めた。
「ワインとカレーという自分が好きな2つをくっつけて、お客様に喜ばれるものができないか、と思ったのがそもそものスタート。ワインには甘味や酸味、苦味など、いろいろな味のバランスがあり、ブルゴーニュワインと同じ味のバランスをカレーに応用できれば、2つがマリアージュしたかたちで食べてもらえると考えたんです」
フレンチのソースの感覚でルーを作っているという背戸さん。赤ワインを使ったルーは、追い足してきたものを2日間寝かせ、当日の朝から4、5時間煮込むそうだ。
「ルーもその日の天気や季節によって酸味や甘味などを調整しています」
米は「八代目儀兵衛」がカレー用に吟味した大粒の島根産きぬむすめ。白ワインとオリーブオイルを加え、パラパラになるよう固めに炊いている。ご飯一粒一粒にルーがまとわりついて、味が均一になるという。
メニューはプレーンな「太陽カレー」550円(税込)を基本に、有機野菜、三元豚ロースなどをトッピングしたカレーが揃い、好みのカレーに追加のトッピング、ご飯の量、辛さなどを選ぶシステム。背戸さんは、女性には野菜を多めにしたり、お年寄りには食べやすい具材を増やしたりと、お客一人ひとりの顔を見ながら提供しているという。
高級洋食店にも負けないクオリティながら、多くが1000円以下ということに驚くが、「安くておいしいのが毎日食べてもらうのには一番なので」と背戸さん。
石原さんの定番は「太陽カレー」をご飯少なめ、ルー多めで。(写真:ご飯小盛はミニサラダ付き)
「最初に甘味が来るけど、あとに辛さが残ってどんどん食べられる。やみつきになるカレーです」(石原さん)
淡路島産玉ねぎなど野菜がベースのルーは、豊かなコクに甘味や辛味、酸味などがバランスよく感じられ、何とも美味。ルーをまとったご飯も食べ応え十分だ。
もう一つのお薦め、彩り美しい「季節の野菜カレー」700円。大原の契約農家の有機野菜を使い、揚げる、蒸す、焼くなど、素材ごとに調理。どの野菜も甘味が濃厚で力強い。
「大原の野菜がおいしい。家内が喜んで食べています」(石原さん)
この店をオープンする前、背戸さんにとって忘れられない出来事があったという。
「2012年に、石原君の誘いで『シモン・ビーズ』というブルゴーニュワインの生産者のところに滞在し、ブドウの収穫をさせてもらったんです。後日、その生産者の方々がイベントで来日され、うちの居酒屋へお見えになられて。その時に生産されたワインと一緒にカレーを試食してもらい、ワインと合うか尋ねたんですね。そしたら、これは絶対いけると。フランスの方においしいと言ってもらえたことは自信になりました。イベントも石原君が関わったもので、彼には感謝しています」
店内には、その時に生産者に書いてもらった宝物のサインやブルゴーニュでの記念写真などが大切に飾られている。
カレーに使用する南仏産ピノ・ノワールとシャルドネをグラスワインで提供(各500円)。「シモン・ビーズ」がその時々のスペシャルワインで登場することも。
「お客様は高校生から高齢の方まで幅広く、年齢に応じた接客をしています」と、妻の優美さん。優美さんやスタッフの笑顔や温かく丁寧なサービスも人気の理由だろう。
「常に仕事を楽しみながらおいしいものを提供することを大事にしています。そうすることで、お客様にも楽しい雰囲気を感じてもらえると思うので」と背戸さん。
ワインへの愛とお客への細やかな心配りが詰まったカレーで、これからも多くのカレーファンを魅了していく。
「ここの魅力は、やっぱりワインをカレーで表現しているところと、背戸君の人柄。それは太陽カレーにしかないものですね」(石原さん)
撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美
■太陽カレー
京都市中京区西大路四条東入ル ボイスビル2F
075-311-0011
営業時間 11時~14時(LO14時)※売り切れ次第終了
定休日 日、祝、不定休あり(Facebookでお知らせ)
https://www.facebook.com/taiyo.curry/