京の会長&社長めし
京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介していきます。
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2021.07.26
株式会社KASEYAの社長が通う店「赤垣屋」
■綛谷 武史(かせや たけし)さん Maestro/株式会社KASEYA代表取締役社長2009年、京都に設立した完全提案型の花。庭の作成、内装・外装の装飾、自然の成果物をマテリアルに空間・環境のデザインを行う。2015年9月、法人化する。2017年AGINGをテーマとし、枝の表情に焦点を当てた「枝と技」をスタートする。2019年9月、中目黒にてグリーンショップ「quartetto」をオープン。2021年3月、初の実店舗となるカフェを併設したフラワーショップ「Maestro」をオープン。味良し、雰囲気良し、値段良し。昭和な雰囲気と大人の酒場文化に浸る、京の名居酒屋三条京阪から川端通を北へしばらく歩くと、赤ちょうちんに縄のれん、ネオン看板の歴史を感じさせる建物が見えてくる。川端二条の「赤垣屋」といえば、京都はもとより全国から酒好き、居酒屋好きが訪れる名店であり、予約が取りにくいことでも知られる。週に何度も飲みに行くタイプではないという綛谷さんも、定期的に足を運んでいる一人だ。「10年以上前、知り合いのお客さんに連れて行ってもらったのが最初ですが、それ以前から京都で一番古い居酒屋だとか評判を聞いていて行きたかったお店でした。店の佇まいや雰囲気がよくて、旬の魚など料理もお酒も安くておいしい。居酒屋の系譜というのか、こういうことが大事なんだと思いましたね。その後、店の若大将と共通の知り合いを通じて親しくなったこともあり、通うようになりました。今は2~3カ月に一度は行かせてもらっています」(綛谷さん)4代目店主の伊藤剛氣さんによれば、「赤垣屋」の創業は戦前で、今の場所より少し南にあったそうだ。「昭和24年に祖父母が氷屋だった建物を買ってこの場所に移ってきたようです。祖父母がやっていた頃は、苦学生やお金のない日雇い労働者の方向けの居酒屋でした」店は駅から少し離れた場所にあるが、常連客たちで開店早々から席が埋まる。当時のままの風格を感じさせる店内は、カウンターや小上がり、座敷、中庭など、昭和のノスタルジックな佇まいが味わい深い。カウンター以外は予約可能で、綛谷さんはいつも座敷や小上がりの席を予約して楽しんでいるという。「綛谷さんにはいつも可愛がっていただいています。綛谷さんはスタッフの方やお仕事関係の方と一緒に来られた時も、皆さんに対してきめ細かく気配りをしていらっしゃいますね」と伊藤さん。ここは独特の凛とした雰囲気の中、背筋を伸ばして飲む大人の酒場だ。好き勝手に楽しめばいいわけではなく、店とお客との間に暗黙のルールがある。「例えば、大きな声でしゃべらないとか、他のお客さんに絡みすぎないとか。基本的に常連さんに向けた店でありたいので、店の空気に合わない方はご遠慮いただいています」と、伊藤さん。店で感じる居心地の良さも長年常連客と共に築き上げてきたもの。それを崩さないために、節度を持って楽しんでほしいと話す。「料理も接客も雰囲気も、すべて常連さんが正しい答えを持ってはると思うんです。常連さんが居心地悪く感じるのは何かが違っていて、居心地がいいなら店の空気は守れているのかなと」伊藤さんが店を継いだのは約10年前。それまで継ぐつもりはなかったが、父である先代が高齢になったこともあり、好きなアパレルの仕事を辞め、勉強の期間を経て家業に入ったという。「小さい頃から跡取りと言われたり、店の手伝いをしたりしていたのが刷り込みになって。常連さんの顔も全部知っているので、なくしてしまうことはどうしてもできなかったですね」それだけに、老舗の居酒屋として受け継いだものを守り伝えていきたいという思いがある。「せっかくこの看板をいただいているのだから、飲み手と店の関係性とか、店の文化を伝えていくことは、僕らの役割かなと思っているんです」「ここの料理は全部おいしい。造りから旬のものにいって、あとはおでん盛り合わせなどの定番を頼みます。胡麻豆腐は最高だし、イカゲソ塩焼きは絶対食べます。いつも注文しすぎて腹いっぱいです」(綛谷さん)お客の一番の目当ては、やはり定評ある旬の魚をはじめ、毎日市場で仕入れる新鮮な食材を使った料理の数々。名物のしめさばやおでん、鴨ロースなどの定番に、夏なら鱧の落し、水ナス、茄子にしん煮など、四季折々の一品が並び、皆が美味い肴と共に思い思いの時間を楽しむ。品書きに値段はないが、料理2~3品に3杯飲んで4000円程度と手頃だ。綛谷さんのお薦め、特に若者に人気の「鴨ロース」。「肉厚でボリュームがある。味付けもいいし、すべてにおいてバランスがいいです」(綛谷さん)フォアグラ用の希少品種「マグレカナール」を使用した鴨ロースは、やわらかくジューシーで臭みがない。食べ応えも満点だ。綛谷さんが、「料亭と変わらないぐらいのクオリティで、おいしい」と、絶賛する「胡麻豆腐」は、先代の時からの人気メニュー。程よいくちどけ感のある上品な味わいで、胡麻の風味もしっかり感じられる。ここで飲むならやはり日本酒を。店のお薦めは伏見の「名誉冠」。燗酒でも冷酒でも楽しめるが、「燗で飲んでもらえるとうれしいですね」と、伊藤さん。「スタッフもたくさんいてすぐに来てくれるし、挨拶などしっかり教育されているなと感じます。雰囲気も、お酒も、料理も、全部が魅力。どこへ行こうかとなった時に、この店なら間違いないという安心感があります」と、綛谷さん。その言葉からも、店とお客の信頼関係が窺える。「やっぱり店のことを愛してくださっていると思える人を大事にしたいし、そういうことが文化になっていくと思っているんです。うちは常連さんが日常の中で当たり前に過ごす店でありたい。だから、居心地良く過ごしてもらえるよう、凛とした空気感を大切にしています。カジュアルな感じではなく、お客さんと心地良い緊張感を共有しながら、おもてなしをしていきたいですね」(伊藤さん)撮影 エディ・オオムラ/文 山本真由美■赤垣屋京都市左京区孫橋町9075-751-1416営業時間 17時~23時定休日 日曜
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BLOG京の会長&社長めし
2021.06.24
株式会社永楽屋の社長が通う店「市場小路 四条烏丸店」
■齋田 芳弘(さいた よしひろ)さん 株式会社永楽屋 代表取締役社長四条河原町に本店を構え、あまいもの(京菓子)とからいもの(京佃煮)を取り扱う。看板商品は、仕上がりの美しさにこだわり抜いた寒天菓子「琥珀」や、作家 向田邦子氏にも愛された国産原木栽培椎茸の佃煮「一と口椎茸」など。本店2階には2014年リニューアルの喫茶室があり、吹き抜けの和モダンな空間で手作りの甘味を味わうことができる。https://www.eirakuya.co.jp/1973年 京都府京都市生まれ最後の晩餐は、美味しい桃。コスパの高さにも大満足。希少な部位も登場する黒毛和牛を熱々のかまど炊き土鍋ご飯と「3~4年前に友人から紹介されました。うちの室町店や大丸京都店とも近いのでよく利用しています。従業員や取引先の方、また室町店が(祇園祭の鉾町の)鯉山町にあるので、鉾町の友人と一緒にお昼に伺うことが多いですね。夜は家族から『美味しい焼肉が食べたい』とおねだりされた時でしょうか(笑)。行かれた方は皆、満足していただいています」(齋田さん)外食をする機会は多いほうで、特に料理、サービスなどを通して努力や良心が感じられる店が好きだという齋田さん。今回ご紹介いただいた「市場小路 四条烏丸店」もその一つだ。大正14年に西洋料理店として創業し、現在市内に十数店舗を展開する「スター食堂」が手掛ける。以前はおばんざいの店だったが、2017年3月に「市場小路」初の焼き肉店としてリニューアルオープンした。四条烏丸の駅直結のビル食堂街にあり、昼時はビジネスマン、OLなどで賑わう。齋田さんも月に一度ほど訪れるそうだ。80席ある店内は、格子戸が町家を思わせる和のテイストで、席の多くがロールカーテンで仕切った席や半個室になっている。「ボックス席で、ゆったりしていて少人数で話したりするのにも向いています。立地もよく、地下でそれほど並ぶこともないのですごく使いやすい。娘を2~3歳の頃から連れて行っていますが、子供連れでも安心して行けると思います」(齋田さん)「席は接待にも使っていただけるようになっています。オープン時、私はまだアルバイトでしたが、齋田社長はその頃から来てくださっています。すごく気さくな方で、軽くお話をさせていただいたりしています。齋田社長をはじめいろいろな社長さんが使ってくださり、そういうご縁がすごくありがたいと思っています」と、2年前から店長を務める安藤美穂さん。入り口の朱塗りのおくどさんが目を引く。こちらでは一頭買いする黒毛和牛肉、そしておくどさんで炊き上げるご飯が自慢だ。齋田さんも、「お肉はもちろん、炊き立ての土鍋ご飯がとても美味しい。うちも佃煮の商売をしていますので、ご飯が美味しいのはやはりポイントです」と話す。肉はA4ランク以上の黒毛和牛で、産地を決めず、老舗精肉卸から料理長が目利きして買い付けたものを提供。また一頭買いで希少部位など普段食べられない部位の肉を楽しめるのも魅力だ。「いいお肉を仕入れておられ、コストパフォーマンスはすごく高いと思います」(齋田さん)「シャトーブリアンやヒレなど、なるべくいいお肉は原価に近いお値段でお出ししています。希少部位を仕入れたら早く食べてほしいのでお薦めとして数量限定で出しており、楽しみにされる方も多いです。ここに来たら間違いなくいいお肉が食べられると言っていただくこともあります」(安藤さん)お昼はコース、夜はアラカルトで楽しむという齋田さん。牛タンや赤身などに加え、よく注文するのが、「至福のおまかせ7種盛り」(写真は3名用7590円)。ロースやカルビなどの定番に、希少部位を含むその日のお薦めが味わえる。「迷ったら、まずこれを頼まれたら間違いないと思います。気に入った部位はハーフサイズでもご注文いただけます」と、料理長の岡田真依さん。「日本人好みの味。娘がとてもお気に入りで、結構な頻度で連れて行けと言われます」(齋田さん)焼いた肉を卵黄入りの割り下につけて味わうブリスケの「焼きすき」1199円は、熱烈なファンもいる人気の一品で、締めにご飯と一緒に食べても。ブリスケは前バラの肉で、淡白だが薄くスライスすると味わい深くなるという。「赤身が強い部位で、卵と割り下を絡めて食べていただくと、よりお肉の旨味を感じられると思います」(岡田さん)ほかにサーロイン(1990円)でも楽しめる。齋田さんたち常連に人気の「炊きたて土鍋ごはん」759円(1合半炊き)。錦市場「中央米穀」の丹波産コシヒカリを使い、注文から約25分かけて炊き上げる。水加減や温度、浸水時間など、季節やお米の状態に応じて調整しているという。煮えばなからおこげまで堪能できるご飯は、焼肉の甘ダレとも相性良し。ちなみにお昼の御膳に付くご飯はお代わり自由。焼肉に合う飲み物としてビールと共にお薦めしているのが、大きなグラスに入ったジントニック。黒コショウを入れたオリジナルの飲み方を提案しており、好評だという。齋田さんは、安藤さんを中心としたきめ細やかな対応も店の魅力だと話す。「気持ちの良いサービスと温かいおもてなしがとてもうれしいです。ボックス席だと目が届きにくく、手が離れがちになると思うんですが、頻繁に目配りや声がけをして、子供が汚したりしてもすぐにフォローしてもらえる。いつも笑顔でいい雰囲気で対応してくださるので、見習わないといけないなと思っています」そんな齋田さんの言葉に、「ありがとうございます。網の交換や最後のお茶をお出しするのはもちろん、お子様連れは予約時に個室をお取りする、ハサミやおしぼりの替えをお持ちするなど、ちょっとしたことですが少しでも居心地良く過ごせるよう気を付けています」と、安藤さん。アイデアマンの前任店長の後を受け、新たな魅力を加えるべくスタッフと奮闘している。「お客様においしいと言って喜んでもらえるとうれしいし、その笑顔を見たいという気持ちでやっているんです。そういうことをスタッフにも伝えられたらと思っています」予算は昼1600円、夜5000円程度。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■市場小路 四条烏丸店京都市下京区四条烏丸北東角長刀鉾町8 京都三井ビルディングB1F075-253-1461営業時間 11時半~15時(LO14時)、17時~23時(LO22時)定休日 年末年始※営業時間は状況により変更の場合あり。お店にお問い合わせください。https://www.star-kyoto.co.jp/restaurant/shop-3/
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BLOG京の会長&社長めし
2021.05.20
株式会社京都鳩居堂の社長が通う店「ルシュルシュル」
■熊谷 直久(くまがい なおひさ)さん 株式会社 京都鳩居堂 代表取締役社長1663年創業 源頼朝の軍師 熊谷直実から数えて20代目も熊谷直心が薬種商を開いたのが「鳩居堂」のはじまり。江戸時代に薬種と同じ原料の薫香を商い、後に文房四宝、和紙製品を販売し現在に至ります。1975年生 京都府出身最後の晩餐は未定。洗練の料理をセレクトが光るワインと。アットホームな雰囲気で楽しむ"日常の中の特別"御池通から丸太町通に挟まれた御所南は、富裕層も多く暮らす人気の文教エリア。その一角のビル1階に、熊谷さんお薦めの「ルシュルシュル」がある。「カジュアルなイタリアンのお店です。私はイタリアンが好きなんですが、日本でおいしいイタリアンを食べたいと思っても、かしこまった店でないとなかなか食べられない。でも、ここは本場イタリアのバルのような雰囲気で、気軽に行けてゆったりおいしい料理が食べられます。一人でも男性同士でも行きやすいので、仕事が遅くなる時や仕事での会合へ行く前の軽い夕食や、仕事関係の人との食事の際によく利用しています」(熊谷さん)オーナーシェフの剱持彩子さん・ソムリエの土橋陽さん夫妻が切り盛りするこの店は、2011年8月に開業。洒落たエントランスの奥は、カウンターとソファ2つの、小さいながらもくつろげる空間になっている。前菜からメインまで良質の食材を使ったアラカルトとイタリアワインに定評があり、地元を中心に30~60代のワイン好きが集まる。熊谷さんはここに10年程前から通っているという。「私は土橋くんと同学年で、学校は違いますがお互いサッカー部だった関係で仲間の集まりで顔を合わせることがよくあったんです。ここも友人に『どばっちゃん(土橋さんのあだ名)が店をオープンしたし、皆で行こう』と誘われたのがきっかけでした」(熊谷さん)「熊谷くんは共通の友人が多く、そのつながりで来てくれたのが最初です。朗らかな人で、彼がいてくれるとお店の雰囲気がとてもやわらかくなる。『これと合わせてみて』ってワインを無理やり持っていくんですが、彼は『ワインはわからへんわ』とか言いながらも楽しんでくれます」(土橋さん)「料理は食材選びに気を遣われているし、ワインもいいものを揃えておられる。料理とワイン双方の相性をすごく考えて提供されているので、ワイン好きの方を連れていくと皆さん喜ばれます」(熊谷さん)地元北海道の高級イタリアンで腕を磨いた剱持さん。この10年、舌の肥えた地元客の要望に応えるかたちで食材やメニューも変えていったと話す。魚は市場で目利きの業者からその日のお薦めを仕入れるほか、北海道から直送のものも。また大原の野菜、淡路の椚座(くぬぎざ)牛、欧州から空輸するチーズや肉類など、吟味して選んだ食材を使用している。そして、それらに合わせて二人で話し合いながらメニューやワインを決めていくという。ほぼイタリア産というワインは5~6千円台が中心。デイリーなものからレアな高級ワインまで400種以上を揃え、ワインの輸入業者もお客として訪れるそうだ。「この料理に合うワインを持ってきてと、お任せされる方は多いです。同じメニューを同じレシピで作っても、素材が違うと合わせるワインも変わったりします。だからライブ感があってお客様とセッションしているような感じですね」と、土橋さん。グラスワインも日替わりで用意され、ペアリングで楽しむことも可能だ。 一人の時は前菜とパスタを頼むことが多いという熊谷さん。お薦めに挙げたのが、前菜の「伊プーリア産ブッラティーナとプロシュット」2640円。モッツァレラチーズと生クリームを包んだ南イタリアのチーズを使った人気の一品で、生ハムの塩味、バルサミコソースの芳醇さ、季節のフルーツの酸味など、淡白でクリーミーなチーズとの味のハーモニーをデザート感覚で楽しめる。ワインは溌溂とした印象の爽やかな白やフレッシュで軽めの赤を。 熊谷さんが「ほかにない味で、パスタの中でも印象に残っている」と話すのが、北海道産のウニを贅沢に使ったリングイネ(3080円)。剱持さんが師匠のレシピをアレンジしたこの名物的メニューは、いいウニが入った時のみ登場する。アンチョビで香ばしさを加えたウニのソースを麺に絡め、更にたっぷりウニをのせて。ウニならではの濃厚で深みのあるおいしさを一皿で堪能できる。「お客様から『これはウニよりウニやな』とよく言われます。ワインは熟成感のある赤や濃厚な白がいいと思います」と、土橋さん。ユニークな半円形のソファは常連客に好評で、「落ち着くし、和気あいあいとした雰囲気になりやすい」と、熊谷さんもお気に入りだ。なお、今年10周年を迎えるのを機に、4月末に店内を改装する予定。席の配置は変えず、カウンターを低くしたりソファ席と床の段差を小さくしたりするという。※写真は改装前のものトルコ語でキラキラした、明るいという意味の店名のように、楽しい雰囲気で食事をしてもらいたいとお二人。抜群のコンビネーションで訪れる人を迎える。「お客様それぞれ求められるものも違う。お客様の空気や呼吸を大事にしてその方の楽しみ方に合わせたもてなしをしていきたいですね」(土橋さん)「日常の中で、少しだけ特別感を楽しんでいただけたら。ありがたいことに、皆さん『これで明日も頑張れるわ』と言ってくださいます」(剱持さん)居心地の良い空間、親しみやすく丁寧な接客とともにおいしい料理とワインを満喫し、明日の活力をもらう。そんなファンも多いのだろう。「熊谷くんのように誰かを連れてきてくださる方もいらっしゃいますし、逆に、誰にも教えたくないと言ってくださる方もいらっしゃる。それもうれしいお言葉ですね」(土橋さん)予算は1万円~1万5千円。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■ルシュルシュル京都市中京区麩屋町押小路上る尾張町225 第二ふや町ビル1F075-252-2587営業時間 18時~22時(LO21時) ※予約が望ましい定休日 火曜※営業時間は状況により変更の場合あり。お店にお問い合わせください。http://lshlshl.com/
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2021.04.15
有限会社月ヶ瀬の社長が通う店「よこ林」
■平栗 由貴(ひらぐり ゆき)さん 1975年 京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業在学中 タイ国立タマサート大学へ交換留学現地にて タイ旭電機株式会社、タイ国三井物産株式会社入社2005年 有限会社月ヶ瀬入社2015年 4代目として代表取締役就任四条河原町にて昭和元年創業の甘味処。京都で初めてあんみつをお出しし、以来「あんみつの『月ヶ瀬』」と親しまれている。現在は、京都市内に祇園店、堺町店、高島屋店の3店舗。https://tsukigase.jp 最後の晩餐は、お母様お手製のちりめん山椒をかけたおじゃこご飯と生麩の揚げ出し。四季折々の味覚と大将との会話をご馳走に、祇園の風情を感じながら過ごす路地裏の割烹京都の街中にはいたるところに小路や路地があり、そこで魅力的な店に出合うことも少なくない。賑やかな四条通から大和大路通を南へ進んだ一筋目。つい見過ごしそうな細い路地の中に今回紹介する「よこ林」がある。旬の食材を好みの調理法で食べさせてくれる昔ながらの割烹。1988年に創業し、芸舞妓や地元の旦那衆などに親しまれている。平栗さんは、高校生の頃から家族ぐるみでこの店を利用しているという。「会長である父が昔からなじみで、家族の祝いごとや姉たちが帰省した時など、節目の時に皆で利用する大事なお店です。大将がとても気さくな方で、気軽に行ける雰囲気のお店でありながら、しっかりとした割烹のお料理を味わえます。他府県の方に京都のお店を紹介してと言われたら、いつもこちらをお薦めしています」(平栗さん)店は一軒家の一階部分に、掘りごたつのカウンター6席(通常7席)と小上がり8席のこぢんまりとした造り。坪庭や壁に飾られた舞妓の絵などが京都らしい風情を醸し出している。「もう30年くらいになるかな。平栗さんのお父さんが紹介で来店されて、それからのお付き合いです。よく家族でお見えになっていました」そう話す店主の横林勉さんは、神奈川県川崎市出身。中学の頃から何か手に職をつけたいと考えていた横林さんは、高校3年の時、東京の寿司店に勤めていた先輩から京都の割烹を紹介され、料理の道へ。この店を開くまで、京都の和食店や料理旅館などで腕を磨いてきたという。メニューはおまかせコースと多彩な一品があり、品書きにないその時々のお薦めも登場する。平栗さんは、いつもお決まりの品々に季節のものをプラスして楽しむそうだ。「ぐじの塩焼き、ゆば万十、鱧の焼霜など、これぞ京都のお料理というものが味わえます。今時の華やかなものではないけれど、季節感があって、素材の味がシンプルに出ていておいしいです。今は子供が小さいこともありなかなか行けませんが、以前は季節のものが食べたくなると、『そろそろ筍の季節やし』という感じで行っていました」(平栗さん)魚や野菜などの食材は主に錦市場へ赴き、吟味して調達する。例えば鱧はできる限り韓国産を用い、横林さんが京都で一番好きな食材という筍は、根元をかじって味や食感を確かめながら選ぶという。「いい材料を用意してシンプルに出すのが一番いいと、私は思っているんです。素材を生かして素直に召し上がってもらう。いいものを持ってきたら、お塩だけで十分おいしいんですよ」と、横林さん。丁寧な仕事で素材の持ち味を引き出した料理には、かぶら蒸しやなす田楽、あら煮、丸鍋などのおなじみの味に加え、お薦めの鮑の唐揚げや銀杏の醤油炒りなど他店では見られないメニューもあり、好評だ。平栗さんたち常連には締めに食べるうにいくらご飯も人気だという。平栗さんがいつも欠かさず頼むという大好物の「ゆば万十」1100円(税込)。百合根ときくらげを湯葉で包んで油で揚げ、熱湯で油抜きしたあと、だしと醤油、砂糖で炊いていく。「あんかけのお料理で、やさしいお味が気に入っています。おだしがやっぱりおいしい。タイに住んでいた時、よくこの味を思い出していました」(平栗さん)なめらかな口当たりの百合根の甘味をだしの風味が包み込む、ほっとする一品。素材のうま味をシンプルに味わう店のお薦めの一つ「笹カレイの唐揚げ」1980円(税込)は、ポン酢と塩を添えて。身の部分はふっくらとして、骨せんべいは香ばしく、しみじみとおいしい。カレイは中骨を包丁で叩いて厚みを均一にし、ムラなく揚がるようにしている。いい素材をよりおいしくするためにこうした一手間は欠かせない。「お酒は日本酒、焼酎、ワイン、ビールなど一通りありますが、種類は置かず、お客さんが飲みたいと言われたものをご用意したりします」と、横林さん。「お酒で儲ける気はないので」と、どれも驚くほどリーズナブルに楽しめるのがうれしい。写真は福知山の酒蔵が造ったオリジナルの冷酒「よこ林」。純米吟醸で飲みやすく、人気だ。四季折々の心尽くしの料理と、話好きの横林さんや共に切り盛りする奥さんが作る和やかな雰囲気に、安心して食事のひと時を過ごせるのだろう。ここでは平栗さんのように家族連れの常連も少なくないという。ちなみに、平栗さんは独身の頃、両親と今のご主人の4人で訪れたことがあったそうだ。「まだ結婚を迷っていた時だったんですが、そこで『結婚しとけばいいやんか』と言われ、じゃあ結婚しますとなって(笑)。それで父と一緒に大将が万歳三唱してくれました」この時のことは横林さんも記憶に残っていると話す。「万歳三唱したことまでは覚えていませんが(笑)、いい彼氏さんができたなあと思って見ていましたね」平栗さんが「うちの家族全員よくわかってもらっている」と話すように、長年の信頼関係が窺えるエピソード。ここでの食事の記憶は、そうした家族の思い出ともリンクしているのだ。予算はおまかせが10000円~、一品とお酒で12000円程度。これからは、筍料理、ホタルイカ、白魚の唐揚げといった春のメニューも楽しみだ。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■よこ林京都市東山区大和大路四条下ル一筋目西入ル075-541-2462営業時間 17時~22時 ※要予約定休日 日曜
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2021.03.17
丹山酒造有限会社の社長が通う店「松葉」
■長谷川 渚(はせがわ なぎさ)さん 丹山酒造有限会社 取締役社長1978年京都府亀岡市生まれ。地元の高校を卒業後、滋賀県余呉発酵機構研究所で発酵学を学び、その後半年間、東京農業大学の小泉武夫先生の研究室で研究生として発酵を学ぶ。実家の丹山酒造に戻り、製造の職人として15年程。現在は5代目として会社の経営に携わっている。最後の晩餐は、母のお手製の玉ねぎソースをかけた肉料理。伝統の味を守りつつ新たなメニュー開発にも挑む、にしんそば発祥の老舗京都の名物、にしんそば。京都人のソウルフードともいえるこの料理を考案したことで知られるのが、四条大橋東詰にある老舗蕎麦店「松葉」だ。創業は1861(文久元)年。初代が芝居茶屋を営んだのが始まりという。ここ本店では、にしんそばをはじめとする麺類、丼、弁当などが楽しめ、推薦者の長谷川さんも幼い頃からこの店の味に親しんできたという。「幼稚園か小学校の頃、祖母に南座の帰りに何度か連れて行ってもらった記憶があります。松葉さんとお仕事のお付き合いをさせていただくようになってからは、営業の合間などによく利用しています。私の中では松葉さんといえば、やはりにしんそばのイメージです」(長谷川さん)地上5階、地下1階の本店は昭和48年の建造。地元客、観光客、舞台関係者など、さまざまな人が訪れる。「昔からの柱や机など趣があって気に入っています。小さい頃は四条通と川端通が見える席で、市バスなどを眺めるのが好きでした」(長谷川さん)名物のにしんそばが誕生したのは明治15年。2代目の松野輿三吉(よさきち)氏が、貴重なたんぱく源だった身欠きにしんを甘辛く炊き、蕎麦と組み合わせて売り出したという。「京都にはにしん茄子というおばんざいがあったんですが、昔の身欠きにしんは硬くて、小骨が多く臭いもきつい。水でもどして炊くのにすごく手間がかかるから、家庭ではあまり作られていなかった。それを骨まで柔らかく炊いて、お蕎麦に入れるという発想でした」と、輿三吉氏の孫で4代目の松野泰治さんが説明する。北海道産の身欠きにしんは、毎日水を替えながら1~2日水に浸し、次に水炊きしたあと、みりん、酒、砂糖、醤油で半日煮込んでいく。炊き上がったらさらに煮汁に1日漬け込み、ようやく完成となる。今も手間入りだが、昔は水で戻すのに7~10日要したという。そんな扱いにくいにしんを使った蕎麦は、京都の人々に新鮮に映ったようだ。「当時マスコミの情報などないなか、にしんそばのことが知れ渡って、にしんが上手に炊けていると評判もよかったようです」(松野さん)麵は自家製、だしはイワシ、サバ、カツオをブレンドした削り節と利尻昆布で取っている。長谷川さんをはじめ、多くの常連が頼む「にしんそば」は1430円。「最初はあっさりしたおだしが、最後はにしんから出た味でしっかりしたおだしになる。その変化も楽しんでいます」という長谷川さんの言葉に、「そんなふうに召し上がっていただくのはありがたいですね。うちでは鉢の底ににしんを敷き、その上にお蕎麦、おだしを入れます。まずおだしを飲んでお蕎麦を手繰っていくと、にしんの煮汁とだしが絡み、最後に独特のにしんそばの味になるんです」と松野さん。にしんの甘辛さと旨味になじむ繊細な蕎麦とだし。最後の一口まで考えられたおいしさだ。(注:写真ではわかりやすいようににしんを見せています)「角煮がとろとろですごくおいしい」という長谷川さんのお薦め「角煮うどん」1430円は、約10年前に考案された人気メニュー。八角、ネギを加えて飴色に炊き上げた豚の角煮は、上品なだしと麺にバランスよくなじみ、意外と重さを感じさせない。「ほかにもいろいろおいしいものはありますが、これは角煮と和の組み合わせが斬新で、衝撃を受けました。松野社長は伝統を守る一方で新しいものにチャレンジされている。発想が明るくて前向きで、自分が仕事をする上でもすごく勉強になります」(長谷川さん)「同じものを続けることも大事ですが、AとBを足しておいしかったらやるべきやというのが私の考え方です」と、松野さん。角煮うどん以外にもゆりねうどんや連獅子そばなど、オリジナルメニューを作り出している。それらが生まれる場になっているのが、年3回の落語の会。プロの落語と蕎麦を楽しむこの催しでは毎回趣向を凝らした麵料理を提供し、好評だったものは商品化しているという。上の写真のオリジナルの日本酒は、丹山酒造に特注したものだ。「松野社長とは20年ほど前に府の物産協会でお会いしたんですが、まだ社会人になりたての私に、お蕎麦に合うお酒を提案してほしいと声をかけてくださったんです」(長谷川さん)当時、東京へ蕎麦打ちを学びに行っていた松野さん。東京では蕎麦屋で昼酒を飲む文化があることを知り、自分の店でも昼酒を楽しめるようにと、酒造りを依頼したという。「蕎麦が主役で、それを引き立てるお酒。一所懸命研究していただいて、最終的にできたのが『松葉』です。おかげさまで評判が良く、今は吟醸系の『与三吉』を加えた2つを出しています」(松野さん) 下の写真は、先代の時に作ったマッチ箱。長谷川さんは猫のイラストが気に入り、「与三吉」のラベルに使わせてもらったそうだ。「一人で行って、ぱっと食べて、さっと出ることが多い」という長谷川さんだが、ここでの食事は短いながらも癒しのひと時になっている。「何も考えず、外の景色を見ながらリラックスできるあの空間がすごく好きで。自分のペースで時間を楽しみたいので、いい意味でほっといてもらえるのもうれしいですね」「一人でも多くのお客さんに喜んでいただけるよう、お仕事させてもらうこと。それをずっと大事にしていきたいですね」と、松野さん。新しい魅力も加えながら、感謝の心で伝統を受け継いでいく。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■松葉 本店京都市東山区四条大橋東入ル川端町192075-561-1451営業時間 11時~18時(LO17時45分)定休日 水曜(祝日の場合は営業)※季節により変更あり※営業時間は状況により変更の場合あり。お店にお問い合わせください。http://www.sobamatsuba.co.jp/
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2021.02.18
菱高SDB株式会社の社長が通う店「HUNTER(ハンター)」
■小川 敬介(おがわ けいすけ)さん 菱高SDB株式会社 代表取締役1978年生まれ。愛知県豊橋創造大学を卒業後、2003年4月に株式会社菱高SDネットワークに入社。先代である父の跡を継ぎ2020年7月に菱高SDB株式会社代表取締役に就任、障子の貼替、畳の表替えから大型の工場や倉庫、賃貸マンションや自動車ディーラーショールームの設計施工まで幅広く関わることで、建設業を通して明るい豊かな社会に寄与することを目標にして今に至る。現在は今までの事業を展開しながら、スタッフと共に「color your life.自分らしい生活」をコンセプトに「リノベ不動産by菱高SDB」の立ち上げに尽力。その他、トリュフ好きが講じて友人達と共に伊崎屋半兵衛「西洋松露 トリュフ煎餅」を開発、販売。最後の晩餐は、杜氏の奥様お手製の酒粕入りハヤシライス。味もボリュームも大満足。黒毛和牛からエゾシカまで、絶妙の火入れに唸る渾身の肉料理週の大半は外食という小川さん。友人や会社の仲間とよく訪れるお薦めの一軒が、地下鉄丸太町駅から数分の場所にある「HUNTER」だ。2017年にオープンするや、おいしい肉料理を出す店として、たちまち評判を呼んだ。御所南という場所柄、常連には企業経営者も少なくない。「ここは肉の火入れが秀逸なので、肉が食べたい時に行きます。自宅から徒歩圏内ということで、多い時は週2回程利用します。店主の今井さんの人柄がいいし会話も楽しくて、忙しくなる前の早めの時間に行っています」(小川さん)もともと肉好きという小川さんだが、この店との出合いは偶然だった。「青年会議所活動の帰り、友人たちと普段通らない道を歩いていた時に偶然前を通りがかったんです。何の予備知識もなく入ったのですが、頼んだ料理はどれもおいしいし、今井さんとは同い年で共通の友人も多いことがわかって話が盛り上がり、それから通うようになりました。一緒に行った人は皆喜んでくれます」元は倉庫だったという店内は、カウンターを中心に20席ほど。木材を多用した造りに、厨房のカラフルな迷彩柄や壁のイラストが楽しい。店主の今井良太さんはここをアルバイトスタッフと2人で切り盛りしている。「小川さんが最初に来られたのはオープンしてすぐの頃。遅い時間に来られてめちゃくちゃ食べはりました(笑)。それからちょくちょく来てくださるようになって。食べることがお好きなのでおいしいお店の情報交換をしたり、共通の友人の話をしたりしています。小川さんが料理を温かいうちにどんどん食べてくださるんですが、見ていて気持ちがいいですね」(今井さん)ここでは牛、豚、鶏から猪や鹿などのジビエまでさまざまな肉を扱う。祇園の「レストラン マエカワ」出身の今井さんはフレンチの技法をベースにしながらも、肉の種類や部位、肉質などに合わせて、和食や中華、エスニックなどのテイストも取り入れた料理をアラカルトで提供。豚のリエットや田舎風パテのようなものもあれば、ビーフンや餃子などが登場することも。「『マエカワ』ではコースのメインや温かい料理をやらせていただいていたので、そこで培ったものをベースに、スパイスを使うなど自分なりのやり方を加えたりしています。お肉は種類が豊富でものによっても全然違うので、その日入る肉ごとにどう調理してどう仕上げるかを考えます。特に今の時期一番面白いのはやっぱりジビエですね」と、今井さん。食材や料理の話に熱がこもる。使用する肉は信頼する大阪の業者や猟師を通して全国から入手。北海道のエゾシカなど特定のもの以外は、産地を決めずいいものがあれば仕入れるという。「今井さんの焼くことへの情熱と愛情はすごいと思います。彼が焼くところを見るのが楽しくて、いつもカウンターに座ります」(小川さん)肉を焼くのが大好きという今井さん。肉に特化した店を始めたのもそのことが大きいと話す。「この焼き加減にしたら確実にいい感じになるな、などと考えながら料理するのが面白くて。この肉やったら焼いたほうがおいしいなあとか、バターをちょっと利かせたほうがええかなとか、仕事というより趣味の延長のような感覚かもしれません(笑)」「食べやすい上に、スパイシーでお酒にも合う」と、小川さんが必ず注文するのがフランス産ウズラを使った名物の「うずらもも肉のからあげ」1200円。塩で下味をつけたウズラを揚げ、クミンやハーブをつけて仕上げる。ウズラはくせがなくジューシーで、程よい辛さにお酒が進むこと請け合い。8本がずらっと並ぶ様子もなかなかのインパクト。その日の肉によってソースが変わる「牛のロースト」4800円も、小川さんのお決まりの一品。「肉の焼き加減がとてもいい。コスパもよくていつも楽しみにしています」と、小川さん。60度の低温でじっくり加熱したあとフライパンで焼き、炭火で仕上げる。今回の肉は岩手・北上牛のイチボで、北海道の無農薬の根セロリを使ったピューレ、赤ワインソース、タスマニアのマスタードを敷き、仕上げにフランスの塩をトッピング。肉はやわらかくまろやかな味わいで、噛むと旨味がしみだしてくる。少し酸味のあるソースがよく合う。写真は小川さん用の350グラムで、通常は200グラム。鹿の角をつけたビールサーバーなど、この店らしい遊び心が見られる。小川さんが頼むのはハイボールだが、店ではワインも人気。メニューのワインのほか今井さんが集めたナチュールワインも多数ストック。「印象に残る料理を作って、食事を楽しいものにする力添えができたら」と、今井さん。そのためにも積極的にお客とのコミュニケーションを図っているそうだ。「話さないとその人の好みもわからないし、会話してその人の特徴を知れば何ができるか考えられるので」お客との対話の中からその人が喜ぶ料理を用意するという今井さんに、小川さんはじめ常連は厚い信頼を寄せる。「お客さんの顔を見てお薦めの肉を変えたりしてくれる。あの人に任せといたら何でもおいしく食べさせてもらえると思います」(小川さん)予算は飲み物代も含めて7~8千円。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■HUNTER京都市中京区東洞院通夷川下ル壺屋町533-2 武内ビル1F075-708-5566営業時間 18時~22時(LO)※水曜のみランチ営業あり(11時30分~なくなり次第終了)定休日 木曜、第3水曜※営業時間は状況により変更の場合あり。お店にお問い合わせください。
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BLOG京の会長&社長めし
2021.01.12
株式会社 クリーントピアぴいぷる北の社長が通う店「膳處漢(ぜぜかん)ぽっちり」
■松居 洋一(まつい よういち)さん 株式会社クリーントピアぴいぷる北 代表取締役社長1978年 京都府京都市生まれ幼少期から音楽に慣れ親しみ、学生時代から社会人にかけ、エレクトリックベースやウクレレ等の演奏業や講師業に勤しむ。26歳にて株式会社クリーントピアぴいぷる北に入社。生産管理やマネージャー職種を経験しつつ、国家資格クリーニング師免許を取得。2012年 代表取締役に就任。一般衣料品から着物、寝具類からスニーカーまで、幅広いニーズに対応した独自の洗浄技術を駆使し、「アライノチカラ エガオノチカラ」の理念のもと、地域社会の方々に爽やかな衣類を提供できるよう日々邁進中。最後の晩餐は、鮭茶漬け。昭和初期の建物のレトロな雰囲気に包まれて、本場さながらの中国料理の数々を昔から呉服や繊維関係の企業が集まる室町通。四条烏丸に近い室町錦小路界隈で、存在感を放つレトロな外観の建物が、松居さんお薦めの中国料理店「膳處漢ぽっちり」だ。全国にレストランやホテルを展開する際グループが手掛けるこの店は、2003年オープン。京都と北京の街の佇まいが良く似ていることから、ここを北京の台所に見立て、北京料理を中心としたメニューを提供している。元呉服商の建物をリノベーションした店の雰囲気や本場さながらの料理が評判を呼び、長年にわたり京都の人々に親しまれている。ちなみに「膳處漢」という名は、かつて都の御厨所があった滋賀県大津市の地名「膳所」に由来しているという。松居さんがこの店を訪れたのは、9年程前だという。「もともと仕事などで利用していた家内に薦められ、一緒に行ったのが最初です。京町家を改装された特殊な店内の造りで、接待にも使える個室やバーがあるし、メニューはリーズナブルなものから高級なものまで揃っていておいしい。今はコロナ禍で回数は減りましたが、大体年に5~6回は行っていました。他府県の同業の方々が当社に見学や打ち合わせに来られた時など、接待使いも良くしますし、以前は家族のイベントなどでも使っていました。一緒に行く人にも毎回評判がいいですね」(松居さん)松居さんが「京都の街中であれだけの広さのところはなかなかない」という建物は、昭和初期もの。元店舗部分が洋館、住居だった奥の部分が町家になっており、ほぼそのままの佇まいが残されている。ここでは、北京ダックやふかひれなどの北京料理を中心に、高級料理から点心まで多彩なメニューが、コースやアラカルトで楽しめる。とりわけ、ヨシキリザメ、モウカザメ、アオザメの3種を用意したふかひれの姿煮はお薦めだという。松居さんはいつもアラカルトを注文し、お酒と一緒に楽しむそうだ。「北京ダックやふかひれもよく頼むし、何でもおいしいですが、辛いものが好きなので特にこの2つは行くと絶対頼みます」と、松居さんがお薦めに挙げるのが、初めて来店した時からのお気に入りだという「ぶつ切り鶏の四川風唐辛子炒め(辣子鶏)」1800円と「四川麻婆豆腐」1600円。 写真の「ぶつ切り鶏の四川風唐辛子炒め」は、鶏の唐揚げを2種の唐辛子と炒め、唐辛子ごと豪快に盛り付けた四川の人気料理。ニンニク、ショウガ、豆板醤、醤油で下味をつけた唐揚げを、山椒と唐辛子などの香りを移した油と絡め、ふっくら柔らかく仕上げている。しっかり旨味が感じられる重層的な味わいの中にじわじわと辛さが利いてくる。「辛いけど、美味い。お酒が進みます」(松居さん)もう一つのお薦め「四川麻婆豆腐」は、牛挽肉を使用したランチでも好評のメニュー。「こちらも辛くて、お酒のアテにもご飯にもよく合う。汗をだらだらかきながら食べています」(松居さん)2種の豆板醤、豆鼓、ニンニク、ショウガなどの香味野菜や漬物などの辛味と風味、肉の旨味からくるまろやかさが絶妙に合わさり、おいしい。濃厚でありながら、意外としつこく感じない。ここの料理は味にメリハリがあるのが特徴だが、それでいてくどくならないよう、いかにうまく油を使うかということに気を付けていると、料理長の花田伸介さんは話す。「調味料を足していくことは簡単ですが、それではだんだん食べていてしんどくなる。うちは油を多めに使いますが、調味料は最小限に抑え、香辛料や肉などの香り、旨味を油に移して味に深みを出すようにしています」「大体いつも5~6人が入れる個室を予約します。入口のところにソファスペースがあって、会食なら後から来る人をそこで待っていてもいいし、先に個室に行ってもかまわない。そういうシステムも気に入っています」(松居さん)200人程を収容できる店内は、庭を望むテーブル席から座敷を含む異なる趣の個室まで、さまざまなシチュエーションに対応。重厚な雰囲気の待合スペースを備えるなど、大切な人との食事に適した造りになっている。地元サラリーマンから家族連れ、観光客まで、客層は幅広く、松居さんのように接待での利用も多いという。松居さんも時々食後に利用するという蔵を改装したバースペース「ぽっちり」。現在は休業中だが、食事からの流れで一杯飲める使い勝手の良さも好評。松居さんは、店を選ぶ際、味、雰囲気、マナーの3つを基準にしているという。「やっぱり味だけじゃなくて、いかに気分よく店を出られるかが大事。その点で『膳處漢』さんは、味はもちろん、建物の雰囲気もいいし、マナーや気配りが行き届いていて、必要な時に来てくれる距離感もいい。だからずっと通っているんだと思います」(松居さん)松居さんの言葉に、「お褒めの言葉をいただけるのは、とてもありがたいです」と店長の尾﨑剛さん。「ここに来られるお客様は千差万別なので、それに臨機応変に対応できるようにしています。また、マナーとともに、常に必要な時にパッと手が届くということも、私たちが目指しているところ。皆、一つでも喜んで帰っていただけるようにという思いで接客しています。これからも、『膳處漢』に来れば間違いない、絶対おいしい、絶対楽しめると思っていただける店でありたいですね」予算は昼3000円、夜1万円程度。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■膳處漢ぽっちり京都市中京区錦小路通り室町西入ル天神山町283-2075-257-5766営業時間 11時30分~15時(LO14時)、17時~22時30分(LO21時30分)定休日 無休https://kiwa-group.co.jp/zezekan/※営業時間は状況により変更の場合あり。お店にお問い合わせください。
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BLOG京の会長&社長めし
2020.12.11
株式会社 豊岡建築設計工房の社長が通う店「焼肉SEVEN(セブン)」
■豊岡 大策(とよおか だいさく)さん 株式会社豊岡建築設計工房 代表取締役1977年大阪府高槻市生まれ京都産業大学経済学部卒業/京都建築専門学校建築科卒業清水建築設計工房を経て、2010年 独立し豊岡建築設計工房を設立2011年 一級建築士取得2020年 株式会社豊岡建築設計工房に組織変更[資格]・一級建築士 第343754号・JSHI公認ホームインスペクター・福祉住環境コーディネーター2級・地震被災建築物応急危険度判定士 最後の晩餐は、阪急桂駅前の焼鳥屋「夢叶」のおにぎり。活気ある店内で心地よい時間を。黒毛和牛の焼肉をリーズナブルに楽しめると評判の一軒JR梅小路京都西駅周辺は、ホテルや複合施設などが新たにできるなど今注目のエリア。そこから西、商店街が連なる七条通沿いの一角にあるのが、豊岡さんが推薦する「焼肉SEVEN」だ。店主の山崎大輔さんが、京都市内の焼肉店勤務を経て、2015年に地元であるこの地に店をオープン。地域を象徴する「七条」にちなんだ店名には、山崎さんの地元愛が込められている。店舗は以前、小売店として使われていた物件を全面改装。「お客様と僕や従業員が近い距離になれるような店がやりたかった」と山崎さん。あえてカウンター席を設けたのもそのためだという。女性や家族連れも入りやすい町家風の落ち着いた空間で、おいしい焼肉がリーズナブルに味わえるとあって、地元や近隣の人々を中心にファンを獲得。週末は予約ですぐ埋まってしまうほどの人気ぶりだ。豊岡さんは約2年前から、毎月2回ほどのペースで通っているという。「仕事などでよく七条通を通っていて、気になる焼肉屋さんだなと思っていたんです。焼肉が好きでいろんな店に行っていたので、一回入ってみようと、ふらっと入った感じです。そしたら、すごくおいしくて、コストパフォーマンスも高い。高級な焼肉屋さんも行きますけど、友人や仕事仲間と気軽に行ける普段使いの店として、今一番気に入っているお店です」(豊岡さん)「大体友達や後輩と2、3人で行って、カウンターで食べています。オーナーさんが肉を切ったり、アルバイトの子に指示したりしている様子を見ながら食べるのが結構好きなので。お店の雰囲気もわかるし、そういう楽しさもあって通っています。焼き肉の店を聞かれるとここを紹介することが多いですね」(豊岡さん) 「ありがたいですね。豊岡さんは予約の時からカウンターでいいですよって、言ってくださるんです。土日に来られることが多く、お友達とお気に入りのメニューを食べて帰られます」(山崎さん)ここで使用する肉は、黒毛和牛のA5、A4ランクのもの。山崎さんは、特に産地は決めず、自分の目で確かめたものを安く提供できるように、日頃から仕入れ業者とコミュニケーションをとって関係を構築しているという。「いつもはハイボールと、厚切りタンと赤身の三種盛り、それから生ハツをお願いして、あとはお腹の具合でいろいろ違うものを頼みます」(豊岡さん) 厚さ1.5センチはある豊岡さんお薦めの「厚切りタン」1380円は、タン元の部分のみを使っているため、厚くても柔らかく、食べやすい。お薦めの焼き加減はレア。1分程度焼くといいそうだ。薬味は、ネギ、レモン、おろしショウガが付く。「ジューシーでとてもおいしい。ネギとショウガであっさり食べられます」(豊岡さん)もう一つのお気に入り、その日のお薦めが入った「赤身の三種盛り」1980円。写真はクラシタロース、ざぶとん、三角カルビの3種で、日によりイチボやラムシンになるなど、内容は変わる。赤身の味付けは塩かたれを選べる。「たれもおいしいんですが、お肉の味がしっかりしているので、いつも塩で食べています」と、豊岡さん。焼いた肉に刻みわさびの醤油漬けをのせて味わうという。普通のわさびとは違ったぴりりと強い刺激が、赤身の濃厚な味わいとマッチする。ちなみにたれ焼きは、そのまま味わうほか、いろいろな果実を使ったスタンダードなたれと、酸味のあるさっぱりだれの2種の自家製つけだれで楽しんでも。特にさっぱりタイプのたれは、女性に好評だ。「肉はオーダーが入ってから切っていますので、小さいお子様には薄めに、厚めがお好みのお客様には厚めになど、オーダーカットにも臨機応変に対応しています」と、山崎さん。 その他メニューでは、ロース、ラムシン、イチボ、お得な「タンの三種盛り」、ユッケ、ユッケジャンスープなども人気。また、ヤンニョムを多めに漬け込んだ自家製キムチも定番で、お酒をあまり飲まない豊岡さんは、キムチの三種盛りと白ご飯も必ず頼むそうだ。「いいものを安く提供して、当たり前の接客をする。それができれば、お客様は来てくださると思うんです。居心地の良い空間を作ってあげられるように、そのお客様が何を求めているかを察して対応するようにしています」と、山崎さん。忙しくて自ら表まで行けなくとも挨拶の言葉は欠かさず、来店したことのあるお客であれば、「また来てくださったんですね。ありがとうございます」などと声をかけたり、会話の少ない席なら場を温めるような接客をしたり。そうしたちょっとしたことを怠らないよう心がけているという。 普段は新しい店を開拓して行くことが多いという豊岡さんが、ずっと通い続けているのも、ほかにはない心地良さがあってこそだ。「セブンさんはいつも活気があって、居心地がいい。オーナーさんがお客さん全員に絶えず目を配っておられるし、スタッフの子たちもちゃんと気遣いができて、気持ちいい接客をしてくれます。一緒に連れて行く人も皆、その居心地の良さは共感してくれていると思います」(豊岡さん)予算は4500円ほど。早めの予約がお薦めだ。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■焼肉SEVEN京都市下京区西七条北東野町11075-313-8429営業時間 平日17時~23時(LO22時30分) 土日祝16時~23時(LO22時30分)定休日 不定休https://yakinikuseven.owst.jp/
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