BLOG京ノ旅手帖2020.08.19

「ザ・ゲートホテル京都高瀬川 by HULIC」アートと一緒に泊まれる特別なお部屋

By西垣 愛佳

2020年7月21日、京都・木屋町通り沿いにオープンした「立誠ガーデン ヒューリック京都」。宿泊施設や図書館、多目的ホール、飲食店などを備えた複合施設です。

「立誠ガーデン ヒューリック京都」が河原町に誕生!開業までの歴史や話題の施設をご紹介。』では、立誠小学校の歴史や、施設の概要に触れました。この記事では、関西初進出となる「ザ・ゲートホテル京都高瀬川 by HULIC」に展開するアーティストとのコラボレーションルーム「Lab」にフォーカス。過去に番組『京都知新』でもご紹介した、二人のアーティスト達が作品に込めた思いや制作の背景を伺いました。

小学校の意匠を残すホテル「ザ・ゲートホテル京都高瀬川 by HULIC」

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この地に100年以上立ち続けるロマネスク様式の「立誠小学校」をリノベーションした「ザ・ゲートホテル京都高瀬川 by HULIC」。既存の校舎を再生した「Schoolhouse棟」、校舎のデザインと調和するように新しく建てられた「Main棟」からなり、客室は趣の異なる5つのタイプからセレクトすることができます。

アートと泊まれる「Lab」ルームで作品をひとりじめ。

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その中でも、ここにしかない注目の客室が、アーティストとのコラボレーションルーム「Lab(ラボ)」です。「Schoolhouse棟」の3階にある「Lab」は、京都で活動する2名のアーティストの作品が展示された部屋。その部屋に宿泊したゲストだけのプライベート美術館を備えた、特別な客室です。客室のなかにこれだけのスペースを割いてアート作品を展示する、という試みはとても珍しく、まさに"アートと一緒に泊まれる"贅沢なお部屋なのです。
「Lab」は全部で3室。実は今回、番組『京都知新』でご紹介したご縁がきっかけとなり、
彫刻家の樂 雅臣(らく まさおみ)さん、植栽家の村瀬 貴昭(むらせ たかあき)さんがそれぞれ1室ずつ手掛けており、もう1室にはふたりが共同で制作した作品が展示されています。

早速潜入!まずは353号室「Stone Box」へ

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まず訪れたのは、京都生まれ京都育ちの彫刻家・樂 雅臣さんが手がけた作品が展示される353号室「Stone Box」。樂さんは、代々茶道に携わってきた家系「千家十職」にも数えられる樂家の出身で、彫刻家として活動し、2018年には京都芸術新人賞を受賞されました。

真っ白な砂の上に置かれた作品

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部屋に入ると、突きあたりに早速作品が姿を現します。室内より一段下がった四角いスペース一面に白い砂が敷き詰められ、そのなかに、大理石の彫刻作品が静かに置かれています。眺めているとなんだか温かな感情がこみあげてくる...不思議な感覚です。

モチーフはくちばし、イメージは「幸せ」

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この作品のモチーフは鳥のくちばし。もともと制作していた作品の中から、デザインや大きさを考慮した上でこの空間に合うものを選んで、空間全体をデザインされたそうです。「鳥のくちばしって、幸せを運んでくれるイメージがあるんです」と樂さん。そして、白い砂に描かれた模様は、人間の遺伝情報を司るDNAの螺旋をイメージしているのだとか。「何か、人の痕跡のようなものを表わしたいと思いまして。人の幸せがDNAに組み込まれて、連鎖していくようなイメージです」。だから温かな印象を受けたのか、と納得。芸術に対する知識が十分になくても、メッセージやイメージは共有できるのですね。

「実は、くちばしの中には物が入ります」とほほえむ樂さん。展示スペースに入ることはできませんが、そんな遊び心も、見る人の想像力をかきたてるポイントかもしれません。

樂さんの作品写真集もあります

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部屋には、樂さんの作品写真集も。「このアーティストさんの手がけた作品が目の前にあるんだ...」という驚きと満足感...。本当にスペシャルな客室だと実感しました。

代表作「輪廻」シリーズのデッサンも

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ベッドサイドには、樂さんの代表作のひとつである「輪廻」シリーズのスケッチが飾られています。実際の作品を目の前で見るのも感動しますが、構想を練っている段階の、さらりと描かれた作家のスケッチというのもまた、素敵なインテリアです。

おとなり、354号室「Floating Point」へ

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おとなりは、京都・大原で活動する植栽家・村瀬貴昭さんの作品がある354号室「Floating Point」。村瀬さんは、リサイクルとプランツをテーマとする「Re:planter(リプランター)」として、作品を制作されています。

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こちらも353号室と同じく、扉を開けて進んだ先に作品が現れます。「そんなことできひんやろ、と思われることをやってみたかった」という村瀬さんの言葉通り、びっくり!室内なのに、まるで本物の山を縮小したような青々とした風景が広がっています。「どうやってできているの」と思わず近くでみてしまいました。山に見えたのは、実際に大原の山に生えていたという本物の木の切り株。その表面を青々とした生きた苔がびっしりと覆っています。

本物の京都の自然を詰め込んで表現

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よく見ると苔の色も多種多様。「私の作業場である大原は、驚くほど苔の種類が多いんですよ」と村瀬さん。こちらの作品には実際に20種類ほどの大原の苔が使われていて、山の頂上から決められた時間に噴出するミストが、苔の乾燥を静かに潤してくれています。心が落ち着く目にもまぶしい緑に、しっとりと流れる霧...。なんだか里山の朝を遠くから見ているようです。その上に輝いているのは電球...?盆栽...

照明の中に輝く生命

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村瀬さんを一躍有名にしたのが、この「スペースコロニー」という作品です。無機質なガラス製の球体のLEDライトの中に盆栽を作ることで命を吹き込み、作品として目で楽しむだけでなく、生きて、育つ照明器具・インテリアとして、京都の街中でも至る所で目にします。

成長も楽しみのポイント

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「京都を観光する人って街中にいることが多いと思うんです。そんな方々に、京都の自然の豊かさを知ってほしいと思って」。本物の京都の自然を取り入れ、現在も成長中のこの作品。実は作品の中に種を蒔いているのだとか!何の種かは秘密だということなので、これからのお楽しみ。苔の状態も刻々と変わっていくので、その成長も楽しみのポイントです。作品を鑑賞する窓は2つあり、お風呂場の浴槽からも見えるようになっているので、眺めながらの入浴もまた趣があります。

おふたりの共同作品のある351号室「The Remains teach us」

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最後に向かったのが、樂さん・村瀬さんのコラボ作品のある351号室「The Remains teach us」です。普段は作品の共同制作はめったにしないというふたり。今回、特別に京都知新のご縁で実現した、スペシャルな作品だといえます。

共同制作の作品は「遺跡」と「自然」がキーワード

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「遺跡と自然が好き」という共通点があったというふたり。作品の雰囲気も、どこか古代の神殿を思わせるようです。「せっかく共同で作品を制作するのだから、普段1人で作っている作品とは違うものになれば、と思いました」と樂さん。神殿のような石の檀は、神武岩(じんぶがん)という石を使用しているのだとか。彫刻家ということもあり、通常であれば植物は作品に入れ込まないという樂さんですが、今回の作品には、村瀬さんのチョイスした菩提樹が凛とそびえています。「菩提樹は、悪い気を浄化してくれる神聖な木。それに、石に木が絡んで、より遺跡っぽく見えるでしょう」と村瀬さんは話します。こちらの作品からもミストが出ているのは、やはり植物たちを部屋の乾燥から守るためだそうです。

ゲストを包む菩提樹

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村瀬さんの部屋の苔たちと同じく、現在も成長し続けているという菩提樹の木。唯一ベッドの隣に作品の空間があるので、寝転がり、リラックスしながら作品を眺めて眠ることができます。「ゲストが寝ているときに、菩提樹に覆われるようなイメージをもっていた」という村瀬さん。その言葉通り、菩提樹自体はまだそんなに大きくはないのに、木陰の下にいるような、包まれているような安心感があります。「ベッドの方まで枝が伸びたら面白いな~」と村瀬さん。現在も成長し続ける菩提樹は、人間の思うようには成長しないかもしれませんが、その予測のつかない自由さも面白さのひとつですね。

見るたびに変わる作品の表情に注目して

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「この作品の見どころは、時期や時の流れによって変わっていく表情」と話す樂さん。村瀬さんがお話していたように、菩提樹が成長していくのに従って、石への絡まり方や、空間の見え方も変わってきます。宿泊するたびに、会うたびに変化する客室・・・一度泊まると段々と愛着がわいてきそうです。京都に来るたびにこの351号室「The Remains teach us」に泊まって、その成長を見守りたい。そんなルーティンも素敵なのかもしれません。

「ザ・ゲートホテル京都高瀬川 by HULIC」の「Lab」。3室それぞれにアーティストの思いやこだわり、メッセージが詰まった特別な客室で、ここでしか体験できない充実したホテルステイをぜひ楽しんでみてください。

『「立誠ガーデン ヒューリック京都」が河原町に誕生!開業までの歴史や話題の施設をご紹介。』はこちら

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■ザ・ゲートホテル京都高瀬川 by HULIC

京都府京都市中京区蛸薬師通河原町東入備前島町310-2
阪急京都河原町駅から徒歩3分、京阪祇園四条駅から徒歩5分
075-256-8955
宿泊の詳細・ご予約はこちら(https://www.gate-hotel.jp/kyoto/

ライター
西垣 愛佳 にしがき あいか

京都の編集プロダクションエディットプラス所属のライター。おいしいも のを求めて散歩するのが週末の楽しみ。最近は御朱印集めにはまっていて、 梨木神社でいただいた御朱印がお気に入り。


マツダナオキ まつだ なおき

京都の街に魅せられて移住してきた、京都歴8年のカメラマン。料理、人物、建築等ジャンルを問わず撮影する。コーヒーが好きで、カフェによく行く。