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BLOG京ノ旅手帖
2019.07.08
外国人にも人気の嵐山で「日本文化にふれる」日帰り旅
古都の地元ライターが京都旅をもっと楽しくする情報をお伝えする『京ノ旅手帖』。今回は日本人だけでなく外国人の方にもおススメしたい「日本文化にふれる」旅をご紹介しましょう。お寺や神社だけが京都の魅力ではありません。いにしえの時代に生きた人々の文化を知り、当時に想いを巡らすのもこれまた楽し。そんなもうひとつの京都行脚に、日本が大好きで、ついには日本に住んでしまったという外国人の友人をご案内。国内有数の景勝地として知られ、世界中から多くの人が訪れる嵐山で、様々な日本文化の体験を通し、日本人独特の「美意識」や「精神文化」を学びます。平安時代に貴族の別荘地として栄えた風光明媚な地京都の中でも高い人気を誇る嵐山。桜や紅葉の名所としての歴史は古く、今から700年以上前、後嵯峨上皇が奈良の吉野山から桜を移植したのがはじまりと言われています。平安時代には、貴族の別荘地として栄えて多くの和歌が残り、あの百人一首が編纂された地としても有名です。神社やお寺などの歴史的建築物が点在し、自然の美しさと日本文化が融合する嵐山は、外国人観光客にも人気。そんな世界的観光都市の魅力的なスポットを巡り、和食や和菓子も楽しみましょう。嵐山を象徴する渡月橋をゆったりと散策カタンコトンと路面電車で旅気分を満喫しながら嵐山へ京都の西エリアにある嵐山に行くなら、京都の市街地と嵐山を結ぶ路面電車がおすすめ。地元の人たちに「嵐電(らんでん)」と呼ばれる電車は、三条通りの街中を通り、映画村で有名な太秦(うずまさ)や国宝第一号の弥勒菩薩半跏思惟像(みろくぼさつ はんかしゆいぞう)で名高い広隆寺、住宅街や自然の中をゆったりと走っていきます。電車に揺られて、車窓からの景色を見ていると旅気分がぐんと高まり、おしゃべりも弾みます。車窓からの景色と会話を楽しみながら嵐山へ京都の風情が感じられる嵐電嵐山駅京都の人たちの生活路線として利用される「嵐電」嵐電嵐山駅に到着。改札口のない広々とした構内には、京友禅の生地をまとった柱が、まるで竹林の小径のように建ち並んでいました。この「キモノ・フォレスト」は、夜になると優しい光を放ち、幻想的な世界へと誘うそう。京都らしい素敵な空間に迎えられ、期待に胸が膨らみます。人間の普遍的な感情を表した百人一首。恋愛の歌に心ときめく嵐電嵐山駅を中心に南北に延びる通りが、嵐山のメインストリートです。南に向かい、渡月橋の手前から大堰川(おおいがわ)に沿った遊歩道を上流に歩いていくと、この日、最初に行く目的地が見えてきました。嵯峨嵐山文華館は、嵯峨嵐山や京都にゆかりのある芸術や文化に出会えるミュージアム。この地で誕生した百人一首の貴重な資料が充実しています。嵯峨嵐山文華館 / 一面ガラス張りの窓から大堰川の景色を一望百人一首は、100人の歌人の歌を1人1首ずつ選んだ歌集のこと。今から800年前、平安時代末期から鎌倉時代前期に活躍した歌人の藤原定家が、嵐山・小倉山の山荘で選定されたと伝わります。最初に足を運んだのは、100首の和歌と100人のフィギュアが展示されているコーナー。天皇や貴族、僧侶など、いろんな人が登場します。100人の歌人と歌をすべて展示したコーナーは、幻想的な雰囲気が漂う「より深く知ると親近感が湧きますね」歌の解説には英訳も添えている嵯峨嵐山文華館の広報である中島真帆さんは「男性が女性の気持ちになって詠んだ歌がいくつかあります」と素性法師(そせいほうし)という僧侶の歌を解説してくれました。 「今こむと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ちいでつるかな」 「今すぐ行くよ」とあなたがおっしゃるので、秋の夜長を今か今かと待つうちに、9月の明け方の月が出るまで待つことになりました......という意味なのだそう。洗練された歌の美しさはもちろん、今でも変わることない人間の普遍的な感情に共感します。江戸時代につくられた手書きのかるたも展示百人一首が身近に感じられる2階には、なんと120畳もの大広間がありました。この畳ギャラリーでは、日本画を中心とした企画展を開催。日本美術に精通していなくても、わかりやすく、親しみやすい解説を添えられ、またすべて英訳つきなので外人にも安心です。2018年11月には競技かるたの日本一を決める『第65期名人位・第63期クイーン位挑戦者決定戦』も開かれ、名人・クイーンへの挑戦権をかけて戦う姿は緊張感に満ちており、選手が繰り出す見事な技や戦略に150名の観客も息をのんで見守っていたそうです。120畳の大広間では、競技かるたの大会や講座が行われ、白熱した戦いが繰り広げられたことも畳の落ち着いた空間の中で日本画鑑賞ができる「最後に記念撮影をして、楽しい思い出に残そう! 」■ 嵯峨嵐山文華館京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町11075-882-111110:00 ~17:00(入館は16:30まで)火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始、展示替期間一般・大学生:900円、高校生:500円、小中学生:300円「渡月橋」の由来は、何ともロマンチック!大堰川(おおいがわ)の穏やかな流れとともに下流へと足を進め、嵐山を代表する渡月橋で記念撮影。ザーッと勢いよく流れる水の音を聴いていると清々しい気分になります。ところでみなさんは渡月橋の由来を知っていますか? 鎌倉時代、仲秋の名月の晩に舟遊びをされた亀山天皇が、月が橋を渡るような様を見て「くまなき月の渡るに似る」と詠まれて以来、この名で呼ばれるようになったそう。歴史ロマンに想いを馳せながら、風光明媚な景色を眺めていると名句が浮かんできそうです。平安時代から桜や紅葉の名所として親しまれてきた渡月橋外国人にも優しい!嵐電嵐山駅で見つけた一歩先を行く観光ガイド嵐山のメインストリートには、和菓子や和雑貨、京土産などのお店が軒を連ねています。さて次はどこへ行こうかと、ゆったりと散策しながら、再び嵐電嵐山駅へ。食べ歩きグルメの甘い香りに誘われて構内に入っていくと、なにやら人の背丈ほどもある大きなスマートフォンのようなものが!駅員さんに尋ねると、これは嵐山の観光スポットやイベント、乗車案内などの情報収集のほか、コンシェルジュ(案内人)とテレビ電話のように会話ができるサイネージとのこと。さすが人気観光地・嵐山!こんな時代の先をゆく設備もあるんですね。サイネージからは、さまざまな情報提供が受けられる「外国の方にもおススメの、日本文化に触れられる場所はありますか」と質問すると有名な神社やお寺をはじめ、数々の人気スポットを紹介してもらいました。英語や中国語にも対応してくれるので外国人観光客も安心です。今回は、その紹介していただいた中から、6000坪の庭園が見事な大河内山荘、そして松尾芭蕉も訪れた落柿舎(らくししゃ)に興味を持ち、早速、足を運んでみることにしました。日本語と英語、中国語にも対応。外国人観光客の多い嵐山ならではのおもてなし時代劇の映画スターが生涯をかけて造った庭園で、絶景と出逢う大河内山荘庭園は、昭和初期の名優・大河内傳次郎が、百人一首で有名な小倉山の南面に別荘として造った6000坪もの回遊式庭園です。すぐ近くにある竹林の小径は、多くの観光客で賑わっていましたが、山荘に足を踏み込んだ瞬間、これまでの喧噪が嘘のよう、静かにゆったりと時が流れています。なだらなか坂道を上がっていくと、見えてきたのは中門。弓形に曲げた垂木(たるき)の上に檜皮葺(ひわだぶき)屋根を載せた小さな門には味わいがあり、京都の風情が感じられます。その先に敷かれた飛び石を一つひとつ歩んでいきました。趣のある檜皮葺屋根の中門をくぐって庭園へ透き通るように青々としたもみじが美しい随所に配された灯籠や石塔が、風情を醸し出す順路に沿って進んでいく道のりは、木々に囲まれたくねくねと曲がる狭い道が続き、まるで迷路のよう。山荘というだけあって起伏があり、思った以上に体力が必要です。 突然、視界が開けた先に、傳次郎が晩年を過ごした大乗閣が姿を現しました。外から眺めても書院造りや数寄屋造り、寝殿造りと様々な建築様式を取り入れた複雑で独特な意匠がとても印象的です。建物の前には青々とした芝の広場があり、その周りを囲むようにもみじや松、楓などの木々が植えられ、日本の四季を美しく演出。周辺の山々と融合した景色とそよぐ風を包まれた開放的で心地いい空間です。屋根や意匠に工夫を凝らした大乗閣は庭園の中心的な建物青空とそよぐ風、緑溢れる庭園に心が癒される嵐山の雄大な自然と融合した風景はため息がでるほど素敵傳次郎が最初に造った持仏堂(じぶつどう)や茶室の滴水庵(てきすいあん)を越えて、山頂近くに建つ月香亭(げっかてい)にたどり着きました。庭園内で最も標高の高いところからは、京都市街を一望でき、遠くに比叡山を望む景色は素晴らしく、思いがけないご褒美をもらった気分。このように美しい自然風景や庭園、趣のある建築物に出会えることが、大河内山荘の最大の魅力です。まるで額縁に入れられた日本画のような風景山頂付近からは、遠くに比叡山を望むダイナミックな景色が広がる山を下ると大河内傳次郎記念館があり、「丹下左膳」として一世を風靡した当時の活躍を見ることができます。長期保存が難しかったフィルムのように消えてしまうものではなく、永遠に残る美を求め、34歳のときに庭園づくりに着手。64歳で逝去するまで映画出演料の大半をつぎ込み、丹精を込めてこつこつと築き上げてきた山荘。生涯をかけて情熱を傾けた傳次郎の想いを感じながら、最後はお茶室でゆっくりと抹茶とお菓子をいただきました。■ 大河内山荘庭園京都市右京区嵯峨小倉山田淵山町8-3075-872-22339:00〜17:00無休1000円(お抹茶と和菓子付き)芭蕉も訪れた茅葺屋根の小さな草庵で、俳句の世界を楽しむ自然溢れる田園風景にひっそりと佇む落柿舎大河内山荘から5分ほど歩くと、畑が広がるのどかな田舎の風景の中に、茅葺屋根の風情溢れる佇まいを見つけました。落柿舎は、松尾芭蕉の門下生である江戸時代の俳人・向井去来(むかいきょらい)が1687年以前に構え、晩年を過ごした草庵。芭蕉が3度も訪れて長期滞在し、『嵯峨日記』を著した場所としても知られています。どこか懐かしい日本の原風景を感じさせる「本庵」外から見えた茅葺屋根の「本庵」は、去来が亡くなった後、1770年に再建されたもの。こぢんまりとした素朴な佇まいからは、日本独自の「侘び寂び」の世界観を感じることができます。その近くには、落柿舎の名の由来となった樹齢300年の柿の木がそびえていました。 当時、去来が40本あった柿の木の実をすべて商人に売りましたが、その晩に突風に襲われ、ほとんどの柿は地に落ちてしまったそう。その様を見て草庵を「落柿舎」と名付け、 「柿ぬしや 木ずゑはちかき あらし山」 (柿よ、嵐が吹くという名の嵐山が柿の梢に近いので、柿の実が落ちてしまったのも、仕方ないことだ)という句を詠んだそうです。和室から望む庭園にも風情が感じられる蛍の光のような点が浮き上がった蛍壁去来が詠んだ句をはじめ、御朱印は4種類「本庵」には入ることができませんが、50年前にはそのとなりに「次庵」が造られ、俳句好きが集う句会などを開催。その目の前に広がる庭園には、四季折々の100種の草木が植えられ、今もその数を増やしているそうです。落柿舎の執事である櫻井博さんは「今はピンク色の花を咲かせる京鹿子がきれいでしょ。俳句をつくるうえで、庭造りはとても重要なんです」と語ります。「縁側では、誰もが思い思いに俳句を書くことができます」カタンと音を響かせる鹿威し(ししおどし)をはじめ、随所に風情が感じられる落柿舎では投句箱を設置し、投函された俳句は選句して入選作品を季刊誌に掲載しています。「訪れた記念に一句捻ってみてください」と櫻井さん。本庵の縁側に腰掛けると、300年前に去来たちが見た風景が、みなさんにも見えるかも知れません。「本庵の縁側で一句詠んでみました!」今回の旅は、いにしえの百人一首にはじまり、名優が生涯をかけて造った日本庭園、そして俳人が愛した草庵での俳句づくりと、「ことば」や「視覚」を通して、日本文化に触れるものでした。嵐山で出会った、この日本人独特の「美意識」や「精神文化」......。神社仏閣や仏像・絵画だけではない、これら京都の魅力、日本の魅力を、世界中の多くの人たちに伝えられることができれば、これほど素晴らしいことはありません。みなさまも一度、そんな嵐山の魅力を探しに、渡月橋を渡ってはいかがでしょうか。きっと新しい京都の顔を見つけられるに違いありません。■ 落柿舎(らくししゃ)京都市右京区嵯峨小倉山緋明神町20075-881-19539:00~17:00(閉庵) ※1・2月は10:00~16:00(閉庵)休 12月31日~1月1日 250円「嵐山で日本文化にふれる」おすすめ和食&和菓子世界遺産の名庭にて、感謝の心で精進料理をいただく天龍寺は臨済宗天龍寺派の大本山。足利将軍家と後醍醐天皇ゆかりの禅寺で、世界遺産にも登録されています。名庭として名高く、庭の中央にある曹源池(そうげんち)を巡る池泉回遊式庭園は、嵐山を借景として取り入れた雄大な風景が魅力です。後方に嵐山を望む曹源池庭園。庭園全体は約3万坪の広さこの美しい風景の中で精進料理を提供するのが、天龍寺 篩月(しげつ)です。精進料理は、鎌倉時代に中国から伝えられた料理。動物性の素材を一切使用せず、野菜・山菜・野草・海草類など四季折々の新鮮な素材を使い、季節感を大切にして調理します。もともとは修行僧のための食事ですが、篩月では賓客を接待するための一汁一飯五菜の精進料理をお出ししているそうです。まずは感謝の気持ちを込めて「いただきます」と手を合わせました。「篩月」は天龍寺直営の本格精進料理店一般の方にも精進料理を理解してもらうため、伝統的な朱膳に配して提供胡麻の風味豊かな自家製の胡麻豆腐、あつあつの茄子の田楽など、味わいにバリエーションがあり、質や量にも大満足。特に印象的だったのは、青大豆のすり流しです。「貴重な青大豆をすり潰して出汁と味噌で合わせ、冷製スープに仕立てたもの。甘みやコクがあり、これから暑くなる夏の定番メニューです」と語るのは、篩月の責任者・小谷卓男さん。5つの調理法と味付け、色彩を大切にする「五法・五味・五色」に基づいた精進料理は、美的で繊細な感覚、お客様へのおもてなしの心、そして食材の一つひとつを無駄にせず、真心を込めて調理する料理人の想いが融合した究極の和食なのかもしれません。「青大豆のすり流しは、とろりとした食感と甘みがおいしい」「深く感謝しながら、大地の命をいただきます」天龍寺の自然豊かな庭園を眺め、落ち着いた上質な空間の中で食べ物と向き合う。大地の生命をいただくことに深く感謝し、一つひとつの料理をしっかりと味わいながら心身ともに整え、大きなパワーをいただきました。■ 天龍寺直営 精進料理店 篩月(しげつ)京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68075-882-972511:00~14:00月曜休(祝日の場合は翌日休)無休※庭園参拝料500円が別途必要非日常空間、「老松」で、つくりたての本わらび餅を堪能老松は創業100余年の老舗和菓子店。観光地である嵐山で、本格的な和菓子を食べてほしいとの想いで、1976年に茶房を併設した支店・嵐山店をオープンしたそうです。数々のメニューの中でも人気は、嵐山店限定の本わらび餅。貴重な国産の本わらび粉を使い、注文をいただいてからつくります。嵐山のメインストリートに佇む老松嵐山店本わらび餅の入った黒塗りの二段重は、宮中へお菓子を献上する際に利用した行器(ほかい)を象ったもの。蓋を開けると、きな粉の豊かな香りが漂い、下の段には大きな氷と水の中に浮かぶ本わらび餅がとても涼しそうです。「何で黒い色をしているの?と質問されますが、この色が本わらび粉を使っている証拠です」と老松嵐山店の岩井恵子さんは教えてくれました。注文が入ってから練り上げてつくる本わらび餅まずはひと粒、箸で持ち上げて、そのまま何もつけずにいただきます。表面はつるり、中はもちっとしていてほんのり温かい。弾力があるので思った以上に食べごたえがあり、のど越しを通る食感が何とも言えません。これまで食べてきたわらび餅はとはまったく違う、本わらび餅のおいしさは感動そのもの。香り高いきな粉やコクのある黒蜜と合わせると、口の中に優しい甘さが広がり、自然と笑顔がほころびます。柔らかいのに伸びがよくて切れない、独特の食感がおいしい茶房の大きな窓から日本庭園を望み、日常生活を離れてゆったりと過ごせる贅沢な空間。そこで和菓子の歴史や素材、調理方法、器の意味といった背景を知ることで、より理解が深まり、おいしさも増してきます。京和菓子のお土産に添えて、多くの人に語り伝えたいと思いました。■ 老松 嵐山店京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町20075-881-9033販売9:00~17:00 茶房9:30~17:00(L.O16:30)不定休
藤田美佐子
ライター
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2019.06.25
今年の夏は癒しの里山、京北へ!大人の女子旅レポート 〜2日目〜
朝食をいただくふかふかの布団で眠り、気持ちよく目覚める2日目の朝。台所では、すでに朝食の準備が始まっていました。野菜がたっぷり入った味噌汁に、焼き鮭と人参サラダに...昨日販売機で買ったあの生みたて卵!ほろろん自家製米のほかほか炊き立てご飯の上につるんっとのせて食べると、意外にもあっさりクセがなく、何杯でも食べられる美味しさです。京北の豊かな恵みと、まごころたっぷりの朝食は温かく優しくて...贅沢って、きっとこういうことだよね、と一同、朝から大感激。民宿のまわりをお散歩チェックアウトまで宿の周りを少し散策することに。朝の光に山々の緑がまぶしく、水を張った田んぼがきらめきます。マイナスイオン?半端なし。徒歩10分くらいのところにある、常照皇寺までは、木漏れ日が爽やかな、ちょうどよい散歩コースです。そして別れの時...散策から戻ると、いよいよほろろんともお別れ。たった1泊しかしていないというのに、なんだろう、この寂しさは・・・。ゲストが来たら最後に必ず撮るという記念写真を撮ったら、ますますしんみり。また来てね~と笑顔で送り出してくれる河原林さん親子に、後ろ髪をひかれながら、宿(もはや脳内では幻の田舎の親戚ん家?)を後にします。また、帰ってきていいよね...。■ 農家民宿 ほろろん京都市右京区京北大野町廣畑45075-853-0113https://ja-jp.facebook.com/hololon.garden/客室:1日1組限定1~5名、2部屋(6畳と8畳)チェックインは15時以降、チェックアウトは11時宿泊料金:1名(夕・朝食代込み) 10,200円(税込)季節体験:鶏捌き&囲炉裏BBQ・田植え&ランチ・山菜採り&天ぷら料理・納豆餅作り・しめ縄作り他体験料金:1名+2,000円(1泊につき体験は1種類、体験のみは不可)「葵工芸」で椅子作りさて、ほろろんを後に車で15分ほど移動し、オーダーメイドの北山杉家具や木工品を作っている工房、葵工芸さんにやってきました。今回私たちが挑戦するのは荒縄を編んでつくる民芸椅子作り。北山杉で出来た土台に、規則性のある編み方でぐるぐると縄を巻いていきます。最初はなかなかコツがつかめず難しいのですが、同じ動作の繰り返しなので、覚えてしまえば簡単!最後に焼き印をつけてもらい、1時間30分ほどで完成しました。思ったよりもうまく出来て、大満足です。完成したものは家まで送ってくれるので(送料別)、荷物が多い方もご安心を。■ 葵工芸京都市右京区京北下熊田町6-10京北ふるさとバス「熊田口」より徒歩3分075-852-1200http://aoi-kougei.xii.jp/about.html体験名:椅子作り体験人 数:2名~価 格:4,000円※予約は10日前までに電話にて受付近くのギャラリーでちょっと休憩葵工房さんから車で5分の「カルチャーカフェ・ギャラリー YU」さんで休憩。ステンドグラス作家のご夫婦が営むこちら、ショップスペースも併設しています。縁側のあるギャラリーでは、地元作家の作品が主に展示されていて、購入も可能。ショップスペースに並ぶガラス製品にもときめきます。希望すればワークショップも出来ますよ。■ カルチャーカフェ・ギャラリー YU京都市右京区京北下熊田町妙見谷1-1京北ふるさとバス「熊田口」より徒歩5分075-852-0309体験名:椅子作り体験11~17時https://ccafegyu.wixsite.com/yuyuボリューム満点の本格蕎麦ランチに舌鼓気が付くともうお昼時...なんだかもうお腹が空いてきました。こだわり素材のランチがいただけると話題の「蕎麦美庵 物味遊山」さんへ。前菜3種にサラダ、選べる主菜、そばがついて1,500円(税込)のAセットをいただきました。ゆっくりと出してくれるので、1品1品味わいながら食べることが出来ます。味のおいしさはさることながら、そのボリュームに驚き。最後はそば湯でほっこり...。充実のランチタイムでした。また来たい!■ 蕎麦美庵 物味遊山京都市右京区京北周山町東丁田13-3JRバス周山バスターミナルより徒歩3分075-852-168011~15時、17時30分~20時30分ごろ(食材なくなり次第終了)http://monomiyuzan.okoshi-yasu.com/index.htmlおしゃれで個性的なカフェでリラックス大満足のランチの後はちょっとおいしいコーヒーが飲みたいな...、ということで、古民家をご主人自らの手で改装したというおしゃれで個性的な、いま京北でちょっと噂のカフェ「松橋雑貨店」さんを訪ねました。石窯で焼くピザと、フェアトレードのオーガニックコーヒーが自慢のこちら、まるで映画セットのようなレトロでクセの強いインテリアがずらり。その多くがご主人のお手製だというから驚きです。とにかくどこを見ても気になる雑貨(発明品?)でいっぱい、ゆるりと素敵な音楽が流れ、風が爽やかに通る店内には、お客さんだけでなく、ツバメも気軽に入ってきます。ご主人の淹れる薫り高いコーヒーを味わいながら、絵本の世界のような、ちょっと浮世離れしたこの空間にまたもや一瞬、現実を忘れそうになります。■ 松橋雑貨店京都市右京区京北塔町宮ノ上23-1 京北ふるさとバス「第二小学校前」より徒歩2分090-9880-3690金・土曜の10~15時https://ja-jp.facebook.com/matsuhashizakka/ウッディー京北でおみやげタイム京北旅もいよいよ大詰め。ウッディー京北に戻って、おみやげタイムです。納豆餅がかなり気に入った私、納豆餅味のあられを購入しました。これで、家に帰っても京北旅を思い出せる...!もう京北ロスになりかけ?■ 道の駅 ウッディー京北京都市右京区京北周山町上寺田JRバス停京北合同庁舎前から徒歩2分075-852-17009~18時https://fuw.jp/woody/想像以上だった京北町...。きっとまた帰って来ようね。ひょんなきっかけで、ふらっとやってきた京北里山旅。予想以上に内容の濃い、充実した体験の数々に、しばし呆然としながら京都駅行きのバスを待ちます。全身がまるっと抱かれるような圧倒的な自然、そして京北で出会った温かい人々の笑顔が浮かびます。この2日間、気が付けば会社のことも仕事のことも忘れて、完全にトリップしてたかも。こんな近くにこんな場所があるなんて...。 里山暮らしを体験したい方、いつもと違う京都を知りたい方、デトックスな時間を求めている方! いちど京北へぜひ、足を運んでみてください。そこには、かつての日本人にとっては日常だった、非日常...自然と共に暮らし、自然に頂き、自然に感謝する、丁寧な暮らしがあります。そして何より、あそこにいると都会に疲れた自分の五感が、少しだけとり戻せる気がするのでした。私たちはすっかりリフレッシュして、元気に京北を後にしました。■今年の夏は癒しの里山、京北へ!大人の女子旅レポート 〜1日目〜 はこちら※料金は取材当時のもの
西垣 愛佳
ライター
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BLOG京ノ旅手帖
2019.06.18
今年の夏は癒しの里山、京北へ!大人の女子旅レポート 〜1日目〜
お疲れ女子、オーガニックな里山暮らしに憧れる...!?バタバタと忙しい毎日にちょっとお疲れ気味な週末。こんなときは、人ごみや情報から少し離れて、豊かな自然の中でのんびりリフレッシュしたいですよね...。職場でなんとなく話題になったのがきっかけで見つけたのが、京都駅から1時間20分ほどで行ける京北。京都市の北西部に位置する、自然豊かなこのエリアには、都会からの移住者も多く、気軽に田舎暮らしの体験が出来る農家民宿や、おしゃれなカフェやグルメスポットがあったりして、オーガニックな暮らしや自然に興味のある若者や外国人からも注目されているんだそうです。しかもこの時期、蛍が見られるかも?!という情報に、がぜん興味がわく私たち。都会の喧騒から離れて、里山体験でデトックスしよう!と盛り上がり、早速行ってみることにしました。バスに揺られて里山へ 京都駅からバスに乗ること1時間20分、おしゃべりしている間に、わりとあっけなく京北に到着しました。バスを降りると、都会から離れたのどかな雰囲気にほっとします。まずは地元メシで腹ごしらえと、バス停からすぐの「道の駅 ウッディー京北」に立ち寄ることに。民宿からのお迎えを待つ地元の食材を使った手作りのランチを食べた後は、周辺地域でとれた野菜や乳製品、北山杉などの地元の素材を使った雑貨が並ぶ店内を見ながら、今回宿泊予定の「農家民宿 ほろろん」のお迎えを待ちます。夕食の食料を調達迎えに来てくれたほろろんのスタッフ・河原林より子さんと一緒に、おすすめの旬のお野菜など、今夜のBBQで使う食材を調達し、宿に向かいます。京北の地酒も何種類かあったので、今夜の食事のお供に...とちゃっかり購入。卵の自動販売機を発見!より子さんの車に乗って宿に向かう途中、出会ったのは、なんと卵の自動販売機!近くの卵農家さんが、毎朝生まれる新鮮な卵を毎日10時と13時にセットしているのだそう。明日の朝は、この卵を使った卵かけごはんが食べたい!と迷わず1袋(10個300円)ゲット。楽しみです!「農家民宿 ほろろん」に到着その後10分ほどで ほろろんに到着。青々とした山並みに、どこまでも澄みきった青空...。昔話にでてくるような、日本の原風景がたちまち拡がります。車を降りたとたん、ふわっと夏草の匂いが立ちのぼり、あちこちから鳥や虫の声が...一瞬にしてトリップする、何か懐かしいような、この感覚! 思わず、深呼吸。五感が目覚めていくのがわかります。築200年以上の武家屋敷をリノベーションした茅葺屋根の民宿ほろろんは、立派な門や囲炉裏があり、風格たっぷり。ひよこたちがいる鶏小屋もあります。(10月頃には、このひよこたちが大きくなり、卵を産み、それを朝食にいただけるそう。)より子さんと、そのお父さん・河原林成吏さんは、まるで親戚がふるさとに帰ってきたかのように、温かくゲストを迎えてくれます。お部屋も、お布団も、お風呂も、素朴ながらすべてが居心地よく整えられています。ここで一緒に作業し、料理し、ご飯を食べ、語らう...。とても初対面とは思えない身内のような距離感。これこそ絶対ホテルでは味わえない、農家民宿ならではの魅力です。どっぷり楽しんじゃいましょう。季節の体験で、自然や文化を体験ほろろんさんでは、単に宿泊するだけではなく、季節ごとに田植えや山菜採りなどの体験もできます(宿泊料金+2,000円 2名~)。私たちがこの旅で体験するのは、京北名物、納豆餅作りと、鶏さばき&囲炉裏BBQ。まずは民宿近くの茅の家で、納豆餅作りから体験です。伝統食・納豆餅をつくる納豆発祥の町!?とも言われている京北。そんな京北では、お正月の三が日、お雑煮ではなく"納豆餅"を食べるんだそうです。その名の通り、納豆を餅で包み、焼いて食べる納豆餅。体験は、もち米を蒸し、唐うすと呼ばれる足で踏むタイプのうすで餅をつくところから始まります。ついた餅にきなこをまぶし、手のひらほどの大きさに伸ばしていきます。包んで焼いて、いただきます塩を混ぜた納豆を餅に包み、餃子のような形に折りたたむと「あみがさ」タイプの納豆餅の完成です。焼いて食べるのが一般的ですが、餅がつきたてで柔らかいので、そのまま食べてもおいしい!お好みで黒糖をつけても美味です。大きく生地を広げてぐるぐる巻いていく「渦巻き」タイプも一緒につくりました。粒が大きく、粘りの強い納豆につきたての柔らかい餅が好相性。この素朴な味、ちょっとハマりそう!ミントを摘んで、ミントティーに納豆餅を作った小屋の近くを歩いていると、ふわっと爽やかな香りが...。そこらじゅうにミントが自生しています。あとでミントティーにしましょう!と、より子さん。みんなでわいわい摘んで帰ります。なんて素敵なひととき!ああ癒される...。みんなで一緒に、夕飯の準備、そして...いただきます。さて、ほろろんの夕食は、ゲストも参加してみんなで作るのが基本。畑での野菜の収穫はもちろん、今回は鶏さばき&囲炉裏BBQをお願いしていたので、(希望すれば)生きている鶏をさばくところから体験できます。普段スーパーで買う鶏肉が、どのようにして食卓に上がるのか、卵→ひよこ→鶏→(さばく)→鶏肉...。ここにたった半日いるだけで、そのリアルを目の当たりにし、命を食べる、ということの重みや、それを育ててさばく手間やコストについて、深く感じ、考えさせられます。当たり前のことなのについ忘れてしまっている、大事なこと。いただきます、の言葉の意味をひしひしと感じる、忘れられない体験となりました。1羽の鶏からとれる鶏肉の量も、鶏は1日に1個しか卵を産まないんだってことも、初めて知りました。BBQ用に、串に刺す一口大に切った野菜とさばいた鶏を、BBQ用に串に刺していきます。新鮮な地鶏は、弾力があって串にさすのが非常に難しい...。けがをしないように、気をつけながら準備を進めます。こうしてみんなで夕食の準備をしていると、なんだか家族みたい...。これ、旅だっけ?囲炉裏を囲んで準備ができたら、河原林さん親子と女子3人で、にぎやかな宴会の始まりです。 パチパチと炭火の弾ける囲炉裏を囲み、収穫した野菜や鶏肉をどんどん焼いていきます。 噛めば噛むほど味が染み出す新鮮な鶏串。野趣あふれるこの弾力と香りは、都会じゃなかなか味わえない滋味...!あらかじめ用意していた京北の地酒も思わずすすみます。蛍の乱舞と、満天の星空※ 蛍写真は京北・下熊田で撮影 ©️SATOYAMA DESIGN夕食後、おすすめの蛍鑑賞スポットに連れて行ってもらうことに。蛍は、例年6月~7月初旬に見られ、20~21時頃が最も活動的になるそうです。川のあちこちに乱舞する蛍に、思わず言葉を失う私たち。見上げると、満天の星たちがキラキラと輝き、心が研ぎ澄まされていくのを感じます。宿に戻って布団に入っても、きらめく星や蛍が飛び回る姿が瞼の裏に浮かび...せつないほど美しく、静かな京北の夜。本当に素敵な時間でした。明日はどんな出合いが待っているのか...朝が来るのが楽しみです。(おとなの里山トリップ ~2日目~ に続く)※料金は取材当時のもの■ 京北へのアクセス京都府京都市右京区京北周山町下寺田お車の場合:名神高速道路京都南又は京都東インター,国道1号線,国道9号線,国道171号線などから,国道162号線(周山街道)に入り,福王寺交差点から高雄を経由して周山まで(福王子交差点から,所要時間約40分(約25㎞))電車、バスの場合:JR京都駅から,西日本JRバスの「高雄・京北線」(周山行き)に乗車し,「京北合同庁舎前」を下車(京都駅から所要時間/80分)■ 農家民宿 ほろろん京都市右京区京北大野町廣畑45075-853-0113https://ja-jp.facebook.com/hololon.garden/客室:1日1組限定1~5名、2部屋(6畳と8畳)チェックインは15時以降、チェックアウトは11時宿泊料金:1名(夕・朝食代込み) 10,200円(税込)季節体験:鶏捌き&囲炉裏BBQ・田植え&ランチ・山菜採り&天ぷら料理・納豆餅作り・しめ縄作り他体験料金:1名+2,000円(1泊につき体験は1種類、体験のみは不可)
西垣 愛佳
ライター
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2019.06.11
オトナ浴衣で京都の街を歩く。 涼し気な和装でお出かけする休日
浴衣・和装 が似合う町、京都お寺や神社が点在する古都、京都。近代的な側面を持ちながらも、どこかノスタルジックな雰囲気漂う京都の町並みには、和装がよく似合います。しかし京都に住んでいると、和装で寺社をめぐる!というような機会が意外となく...。今回、友人たちと念願の京都和装旅に繰り出してみることにしました。大人浴衣で京の町を散策したい夏の和装といえば、まずは初心者でもチャレンジしやすい、レンタル浴衣。近年は観光地を中心に、あちこちにレンタルショップが林立していますが、数が多すぎて一体どこを選んだらいいかわからない...大人の京都旅なので安っぽくない柄や色合い、質感の浴衣を選びたいし...。そんな時に、和装通の友人にすすめられたのが、東大路通にある「着物レンタル くるん。」さん。清水寺や八坂庚申堂(金剛寺)、八坂の塔(法観寺)などにもほど近い場所にあり、河原町や祇園にもアクセスしやすいロケーションです。ずらりと並ぶ、おとなカワイイ浴衣たち店内に入ると、浴衣の種類の多さと可愛さに気分が高まります。レトロモダン系、キュート系、大人系...と、デザインの幅が広いのがうれしい!柄のバリエーションは140以上あるのだそう。着物メーカーが営むレンタル着物ショップなので、そのクオリティもお墨付き。帯やかごバッグ、履物など、小物もおしゃれなものが揃います。どのようにレンタルするの?浴衣レンタルは、プランを決め、浴衣を選び、着付けやヘアセットをしてもらう、という流れが基本。くるん。さんの場合は、来店時に4パターンから好きなプランを選びます。HPから事前予約も可能ですが、セレクトできる浴衣やついてくる小物はプランによって変わるので、スタッフさんに相談しながらプランを選ぶと良いですよ。店によっては、予約が必須の場合や、割引が利く場合もあるので、事前リサーチをしておくことをおすすめします。着付け&ヘアセットで変身今回は一番人気だという4,800円のプランをセレクト。素早く着付けてくれ、みるみるうちに着付けが完成しました。オプションのヘアセットをつけても、かかる時間は30分ほど。師範資格を取得しているプロの着付け師さんが多く在籍するこちら、長時間着ていても崩れが全く気になりませんでした。 二寧坂、三寧坂付近をお散歩浴衣でいざ、お散歩へ。八坂の塔をバックに「ザ・京都!」なショットを撮ったら、SNSでもよく見かける八坂庚申堂でお参り。願いを託してくくりつけるカラフルな "くくり猿"がフォトジェニックな、女子に大人気のお寺です。木陰でひと休みなんだかのどが渇いたね~と、友人2人。ちょっと立ち止まって、店先でレモネードをいただきます。レモンの酸っぱさと冷たさが体にしみわたりました。「浴衣なんて暑そう!」と思う方もいるかもしれませんが、日差しが直接肌に当たらず、生地がうすい分、かえって涼やかです。浴衣での散策は、一味も二味も違う楽しさがいつもよりもおしとやかな気分で過ごせた浴衣での散策。くるん。さんの場合、返却は20時までと時間の余裕があるのも嬉しいポイント。少しでも長く浴衣を着て散策を楽しみたい!という方におすすめです。■着物レンタル くるん。京都市東山区毘沙門町39-2市バス停東山安井から徒歩すぐ075-531-55259~20時(着付け受付時間は~17時)無休https://kimono-cucuru.jp/★所要時間:40分★返却時間:9~20時(翌日返却は別途1,080円)★返却方法:店頭今度は、和装で 夏の風物詩 "川床"へおでかけ京都の夏、大人のおたのしみと言えば、貴船や鴨川に出る川床。川のせせらぎを聞きながら、ゆったりお食事をするという、スペシャルな時間を素敵な和装で過ごせたら...。今度は浴衣からさらに少しだけ背伸びをして、川床にぴったりな夏らしい着物が着てみたいな...と思い和装のプロも御用達と評判の「和凛」さんへ、足を運んでみました。品のある、大人な雰囲気の着物が並ぶ和凛さんは、四条烏丸の交差点を南へ下がり、松原通りを入ったところにあるビルの3階にあります。元々創業100年を超える老舗問屋であるこちらの着物は、上質で大人の雰囲気。色味やデザインも落ち着いていて、大人の休日にぴったりマッチします。和装ビギナーも安心の丁寧なヒアリング和装についての知識はほぼゼロの私、どんなものを着ればよいかと不安を胸に来店しましたが、広々としたラグジュアリーな空間で、専門のスタッフが丁寧にヒアリングしてくれるので、リラックスした雰囲気で最適なプランを決めることが出来ます。ぴったりのプランを見つける鴨川の納涼床で食事をしたいんですけど...と、相談してみると「正絹の小紋10,000円のプランがおすすめです」とスタッフさん。小紋は、浴衣よりも少しかっちりとしたイメージなんだそう。いきたい場所やイベントを伝えればプロ目線の的確なアドバイスをもらえるので和装の知識がなくても、安心です。着物・小物を選ぶ「あれも涼しげでいいし、これもかわいい~」。迷ったときは、2着までの試着が可能です。夏用の小紋なので、縦線の入った涼しげな柄や淡い色が揃います。着物を選んだら、帯、帯締め、帯揚げなど、小物も選んでいきましょう。小物の合わせ方でぐっと印象がかわるのも、着物コーディネートのおもしろさ。困ったときには、スタッフさんが着物に合うものをセレクトしてくれます。着付けとヘアセット着付けは肌着や襦袢を着こむ分、浴衣よりも少し時間がかかりますが、楽しくお話をしている間に、鮮やかな手つきで仕上げられていきます。着物は浴衣よりもさらに暑そう...というイメージだったのですが、肌触りの良いサラリとしたうすい素材で、軽いうえにとっても涼しい!ヘアセットはオプションで事前予約必須ですが、せっかくなので大人な夏の装いに合わせて、すっきりと整えてもらいます。所作は小さく、美しく着付けとヘアセットを終えたら、最後はバッグ選び。美しい着物を着ると、しゃんと背筋が伸びます。「着物を着ている時は、少し周りに甘えてみると良いかも」とスタッフさん。遠くのものを無理に取ったり、走ったり、着崩れの原因になるような雑なふるまいは避けたいところ。歩く時も、内またで歩幅は小さくすると美しく見えるのだそうです。■和凛京都市下京区松原通烏丸東入俊成町444市バス停烏丸松原から徒歩すぐ075-343-15159~18時休 月・木曜https://walin.jp/index.html★所要時間:60~90分★返却時間:9~18時(翌日返却無料)★返却方法:店頭返却、または京都市内に限りホテル返却(別途2000円)涼しげな着物で、いざ、川床へ美しい所作を学んだら、早速川床へ出発。昔ながらの料亭や、おしゃれなバーが軒を連ねる先斗町へ向かいます。風情ある通りを進み、ビルの中にある「先斗町 百錬」にお邪魔しました。カジュアルに川床が楽しめる人気のお店で、料理やお酒もリーズナブルにいただけます。鴨川を見ながら、料理をいただく席がテーブルといすというのも、着物にはうれしいポイントです。川の音がさらさらと聞こえる中、いただく料理やお酒は格別のおいしさ!鴨川の川床ランチ営業はどのお店も統一して5月と9月のみ、夏の暑い時期は夜のみの営業となるので、注意が必要です。 ■百錬京都市中京区先斗町通三条下ル橋下町133-1 エメラルド会館 1F奥京阪三条駅から徒歩5分075-255-475517~23時(5月・9月のみ12~15時、17~23時)http://pontocho-hyakuren.com/about/index.html路地を歩いてみる食事を終えたら、先斗町周辺をお散歩。ちょうちんの下がる、レトロでディープな雰囲気の通りを着物で歩くと、はんなりした京女になった気分です。祇園と並んで著名な花街の一つである先斗町。歴史ある細い通りを、凛とした気持ちで歩きます。和装のトリコになりそうやはり和装で楽しむ京都の夏は格別!普段の私とはちょっぴり違う、凛とした大人な私に変身できたような気がしました。しかも、思ったより涼しくて着心地が良くて、「和装は苦しそうだし暑そう...」というイメージは完全に払拭されました。これなら、暑い季節でも全然大丈夫!今度の休日、ぜひ和装でお出かけしてみてはいかがでしょう?
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2019.05.13
初めての東寺・弘法市 私好みのお宝を探す旅
毎月21日に開催される「弘法さん」の縁日フリーマーケット、手づくり市、アートマーケット...。お店がずらーっと並ぶ景色に気分が高まる女性、多いのではないでしょうか。個性豊かな出店たち、店員さんとの距離の近さ、アーティスティックなものが多いのも楽しいですよね!実は、私もそのひとり。そんな私が、ずっと気になっていて足を運べていなかった「市」があります。それが世界遺産・東寺(教王護国寺)で開かれる「弘法市」。歴史あるお寺の市だから、ディープな雰囲気なのかな、初心者だけど大丈夫かな...。古い刀や怪しい置物なんかもあるって聞いたけど...。そんな少しの不安とワクワク感を胸に、初めての弘法市に早起きしてお出かけしてみました。はじまりは室町時代!?ながーい歴史を持つ縁日なんでお寺で市が開かれるようになったんだろう...?その始まりは、法要に訪れる参拝者への接待でした。弘法市が開催される東寺は、嵯峨天皇が弘法大師空海に下賜した真言密教のお寺。空海が入定した4月21日(旧暦3月21日)には、報恩感謝の法要・御影供(みえく)が行われます。この法要に訪れた人々に、簡素な屋台で茶を出す商人が出てくるようになったのが弘法市のルーツなのだとか。江戸時代以降は段々と規模が大きくなっていき、段々と今の弘法市へと変化したようです。現在も毎月21日に開かれて、地元では「弘法さん」の愛称で呼ばれ、親しまれています。弘法市が開かれる場所、東寺さて、そんな弘法市が行われる東寺。平安遷都2年後の796年に建立された、歴史ある寺院です。日本で初めての真言密教の根本道場として、多くの人々の信仰を集めてきました。密教の教えを立体的に表した立体曼荼羅や、木造建築として日本一の高さを誇る五重塔など、見どころ満載のお寺です。弘法市以外の日や、一通りめぐった後に、ゆっくりお参りすることをおすすめします!信仰に触れ、落ち着いた清い気持ちになります。めぐってみよう!弘法さん成り立ちと場所について学んだところで、早速弘法市へ。多くの人でにぎわうので、ゆっくり見たいのであれば朝がおすすめ!東寺の正面口で、重要文化財の「南大門」からお邪魔します。門の外から中までずらーっと続く、店、店!なんでも、常時1000以上ものお店が軒を連ねているんだとか。本堂にあたる建物「金堂」と「御影堂」でお参りし、お宝さがしへ!陶器、骨董、アクセサリー...さまざまな出合いどんなものが売られているんだろう?そんなワクワクとともに歩き出すと、フルーツや陶器、人形、掛軸、手作りアクセサリー、着物...。カテゴライズするのが難しいほど、本当にさまざまなジャンルの商品が並んでいます。これは、若い方から大人まで幅広い年代が楽しめる!お寺で開かれる市には少しかたいイメージを持っていて、お気に入りが見つかるかちょっと不安でしたが、活気のあるワイワイとした雰囲気に、気分も高まります。日本の方だけでなく、海外の観光客の方も、たくさんいらっしゃいました。職人のご夫婦が作る、木の製品が気になる夢中になって歩いていると、ちいさな木の製品が並ぶお店に引き寄せられました。こちらは「small work camp」さん。5月のこどもの日に飾りたい「ハコイノボリ」が素敵すぎる!コイノボリは磁石でくっついています。他にも木の箱のペンケースやお箸入れなどがありました。木の箱を作るご主人と、イラストを描く奥様。ご夫婦で作る木の製品は、ひとつひとつに温かみがあり、手にしっくり馴染みます。ちょっと大人っぽい皮小物に挑戦してみようかな革工房イドスブランコ意匠登録済み木の製品を見た後は、革製品が気になる!立ち寄ったのは「革工房 イドスブランコ」さん。普段縁のないジャンルのお店も、マーケットなら気軽に見られるのが嬉しいところ。こちらの本革の小物は、工房に所属する職人さんがひとつひとつ丁寧に作っています。デザインのこだわりや、おすすめの使い方なども教えてもらいました。近い距離感でたくさんお話ができるのが、マーケットの醍醐味ですね。革工房 イドスブランコhttp://sp.raqmo.com/bag-shokunin/異国情緒漂う一角。涼しげなシャツに惹かれて...宝物を探すべく、さらにぶらぶら歩いていると、なんだかオリエンタルな雰囲気のお店を発見。ここは「VANASPATI khadi haat kaam」。インド人の旦那さまと日本人の奥さまがインドでセレクト・加工した、手紬ぎの洋服やインテリア、小物が売られていました。この日の京都は気温が高く、すごく暑かった!そよそよそよぐ、真っ白で涼しそうなシャツに心惹かれました。レトロかわいい骨董に心奪われる!弘法市、といえばやっぱり骨董。しかし、骨董と一言で言っても、店の雰囲気もいろいろなのです。例えば、高そうな掛軸や茶器がずらりと並ぶ店、一見立ち寄りがたいような、ちょっと怪しげな置物が置いてある店...。骨董というと部屋になじみにくいイメージがあるかもしれませんが「趣味で12年くらい店を出し続けている」というご主人のお店には、一つ置くだけで一気におしゃれ部屋になるアイテムがたくさん!かわいいねこちゃんの置物や、おもしろ看板。自分だけの、オリジナリティ溢れる部屋を目指している方にぴったりです。味のある陶器たち陶芸家の方もたくさんお店を出されているので、うつわ好きは心躍るはず。市村サントシャさんのお店では「このお皿に料理を盛ると、よりおいしいんだろうな...」と思わせてくれる、シンプルながらも味のあるお皿に出合えました。「料理の邪魔をしない皿をつくることを心掛けています」という言葉通りです。数ある店の中からお気に入りを探すのも、とっても楽しい!歩き疲れたら、甘いおやつでちょっと休憩弘法市には、たこ焼きや焼きそばなどのちょっとした食べ物や飲み物のお店も。「京聚(きょうじゅ)」というお店で、最近はやりのタピオカミルクティーをいただきました。お寺の市で、こんな最新のスイーツに出合えるなんて!甘くって、冷たくって、疲れた体にしみこんでいきます。ヒールのある靴で来てしまったのは少し失敗...。たくさん歩くので、歩きやすい靴がおすすめ!砂埃が立つので、汚れても良い服を着てくるのも大事なポイントです。弘法さんをめぐって古いもの、新しいもの、様々な要素が入り混じる弘法市。世界遺産のお寺の中でずっと開かれ続けている伝統ある市は、規模も大きく、店員さんが大らかでフレンドリーだったのが印象的!行く前に感じていた不安が嘘のようです。いつもの東寺とは少し違う、にぎやかな雰囲気にはまってしまいそう。「朝、早起きしてよかった!」と思える、大満足のひと時でした。みなさんも、この雰囲気を味わいに、21日は東寺へお参りにいってみては?会場案内■ 東寺(教王護国寺)京都市南区九条町1近鉄東寺駅から徒歩5分075-691-33258時~最終受付16時30分http://toji.or.jp/■ 東寺出店運営委員会0774-31-5550http://www.touji-ennichi.com/index.htm
西垣 愛佳
ライター
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2019.05.08
あの人にあげたい、京のおみやげパン
京都みやげに新たな選択肢を!「せっかく京都に来たから、京都らしいものをおみやげにしたい!」。でも、2度3度と回数を重ねるうちになんだかワンパターンに...!? そんな時はパンをおみやげにしてみるのはいかがでしょう。パンの消費量日本一に輝いたこともある京都は、おいしいベーカリーの宝庫なんです。そんな数あるベーカリーの中から、京都人が愛する3店をご紹介。並んででも、少し足を伸ばしてでも食べたくなるパンの旅にいざ出発!おいしい香りに誘われて...昔ながらのベーカリー「まるき製パン所」へ レトロな雰囲気の松原京極商店街を歩いていると、パンの良い香りが...。ここは並ぶのが嫌いな京都人でも並ぶ、昭和22年(1947)創業の「まるき製パン所」。お邪魔したのは小雨の降る平日でしたが、そんな日でも客足が途絶えません。もちろん休日は行列必至!自慢は「ロール」こちらの商品の7割を占める主力商品が「ロール」。いわゆるコッペパンのことです。以前はこのあたりに女子高があり、学生たちに評判だったロールの種類を増やしていった結果、今では60種類のメニューがあるそうです。たっぷりの具材に心も踊る!店の奥に調理場があり、スタッフのみなさんが次々にロールに具材をサンド! 笑顔の絶えない、和やかな空間です。作り置きしないロールは、開店中も随時焼き上げられていきます。「ケチケチしてたらおいしいもんできひん!」という2代目ご主人・木元廣司さんの言葉通り、具材が溢れそうなほど挟まれます。ここでしか作れないパン「特別なことは何もない。なるべく自然に、おいしいものを作ろうとしてます」と、木元さん。1週間のほとんどをお店で過ごすという木元さんは「他の場所では、ここで作るようなパンは完成しない」とも。この地ならではのローカルな空気感、スタッフのみなさんの明るい声と笑顔、そしてお客さんとの距離の近さ。ここでしか味わえない雰囲気も、まるき製パン所ロールのおいしさの秘密なのかもしれません。「まるき製パン所」の一押しおみやげパンは...様々なパンが並びますが、やはりロールは外せません。挟む具材は定番のハムやあんこをはじめ、ポテトサラダ、ハムカツ、クリームなどなど...。人気は「ハムロール」170円(税込)。たっぷりキャベツとハムのシンプルな一品だからこそ、ロールのおいしさが際立つ! まるき製パン所のロールは、一つ一つがリーズナブルで種類豊富なので、友人や家族での大人数での集まりや、会社へのおみやげにして、みんなでワイワイ食べるのにぴったりですね。■まるき製パン所京都市下京区松原通堀川西入ル 市バス停大宮松原から徒歩3分075-821-9683平日6時30分~20時、日・祝7~14時キラキラ輝くフルーツがまぶしい 「フルーツパーラー クリケット」 桜の名所としても知られる古社・平野神社。その向かいに、清潔感のある明るいカフェのようなおしゃれなお店を発見しました。ここは「フルーツパーラー クリケット」。店の中に入ると、フルーツたちのあまーい香りが...!フルーツやコンフィチュール、ゼリーなどが並ぶ姿に、思わず「おいしそう~! 」と声が漏れます。フルーツパーラー、だからこそのサンドこちらでぜひおみやげにしたいのが、フルーツサンド1,200円(税込)。季節や入荷状況によって内容は変わりますが、いちごやマンゴーなど、フルーツ界の人気者たち7種がふんだんに入っています。生クリームは2種類を混ぜて使っており、甘さやコクのバランスも絶妙。果物の甘さや程よい酸味がうまく引き立ちます。「フルーツに興味や思いを向けてほしい」との思いで毎朝作られるフルーツサンドは新鮮でボリューミー。たっぷりのフルーツが入っている点は、フルーツパーラーならではの魅力です。女子会やママ友会にもおすすめ!40年前から試行錯誤を重ね、今が黄金のバランスだというこちらのフルーツサンド。見た目もキラキラしていてかわいいので、女子会やママ友との集まりでの受けは抜群です。どこを食べてもはずれが無いように作るのがこだわりだそうで、本当にどこを食べてもたっぷりのフルーツとクリーム...!感想をシェアし合うのも楽しいです。■ フルーツパーラー クリケット京都市北区平野八丁柳町68-1 サニーハイム金閣寺1F 市バス停衣笠校前から徒歩2分075-461-3000 10~18時http://www.cricket-jelly.com/祇園散歩中に発見! 京都らしいたたずまいの「グランマーブル祇園」へ祇園界隈の散策は京都旅に欠かせませんよね。京料理店やカフェが立ち並ぶ花見小路通を歩いていると、のれんのかかる上品なお店を発見。ここは「グランマーブル祇園」。お店の奥には坪庭もあり、京都らしさを感じる高級感のある店内が素敵です。「マーブルデニッシュ」が看板商品 こちらの自慢の商品は、見た目も美しいマーブルデニッシュ。デニッシュという洋の要素に、和の素材を織り込んだ、贅沢な逸品です。旅行者はもちろん、地元の人々にとっても、憧れのデニッシュなんです 。食感は驚くほどしっとりとしていて、一口食べただけでリッチな気持ちに。断面の綺麗なマーブル模様は、一つ一つを職人さんが手作業で作り上げているからこそできるものなのです。定番人気のフレーバーをぜひ、ご賞味あれ季節ごとにさまざまなフレーバーが登場するグランマーブル祇園ですが、定番人気は「京都三色」1080円(税込)。プレーン、苺、「祇園辻利」のお抹茶が使われた抹茶と、3種の生地を織り込んで作られたマーブルデニッシュです。酸味、甘み、ほろ苦さが絶妙に調和! 丁寧に作り込まれているな、と見た目でも、舌でも感じられる一本です。ここぞ! という時の手みやげにもぴったり。一週間以上、日持ちがするのも嬉しい! いつもお世話になっているあの人へ、感謝の気持ちとともに渡してみませんか?■ グランマーブル祇園京都市東山区祇園町南側市バス祇園から徒歩3分075-533-7600 11~20時(季節により変動あり) https://grandmarble.com/おみやげの新定番、パン魅力的なベーカリーが軒を連ねる京都。お菓子や雑貨も良いけれど、ふかふか・しっとり・もちもち...と個性豊かな表情を見せてくれるパンをおみやげに選んでみるのも素敵ですよ。種類が多いからこそ、渡す人の好みを考えながら選べるのも魅力!お気に入りのベーカリーを見つけて、あの子に、あの人に、おいしいパンを贈ってみてくださいね。※価格は取材当時のもの
西垣 愛佳
ライター
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BLOG京ノ旅手帖
2019.04.24
世界遺産「仁和寺」 幻の観音さまに出逢う旅
古より非公開であった「観音堂」が6年の時をかけて修理され、期間限定で特別公開世界遺産である仁和寺の「観音堂(重要文化財)」は、仁和寺創建の約40年後、928年頃につくられたと伝えられています。その後、幾度も火災で焼失し、現在の建物は江戸時代初期である1640年頃に再建されたもの。2012年からは観音堂の半解体修理(平成大修理)が行われ、6年もの歳月を経て美しいお堂が蘇りました。その様を多くの方とともに祝い、仏様とご縁を結んでいただきたい...。そんな想いにより、僧侶の修行の場として非公開であり続けた観音堂が期間限定で特別公開されるに至りました。観音堂にいらっしゃるのは、370年以上も前から人々の目に触れられることが稀であった幻の観音様。長年秘められてきたお堂や観音様との出逢いを求め、京の旅が始まります。ノスタルジックな路面電車「嵐電」に揺られながら到着世界遺産・仁和寺の玄関口は「御室仁和寺駅」仁和寺の山門が見渡せる風情ある駅舎 仁和寺の最寄り駅は京福電鉄、通称「嵐電(らんでん)」の「御室仁和寺(おむろにんなじ)駅」。寺社や住宅地の間をガタンゴトンと走る路面電車に揺られると、どこか懐かしいノスタルジックな気分に浸れるのも京都旅ならではです。駅の改札を出て振り返ると、「驛室御(旧駅名)」という旧字体・右横書きの駅看板が掲げられ、ちょっとしたフォトスポットにもなっているとか。そして、真正面には仁和寺の山門である「二王門(重要文化財)」が雄大にそびえ立ち、その佇まいを駅から、また門に向かいながら眺めるのがおすすめです。歩きながら邪念を払い、門をくぐります。境内をゆっくり散策しながら観音堂へ入母屋(いりもや)造りの美しい観音堂 二王門から観音堂までは「浄心の参道」を歩き、朱色の「中門(重要文化財)」を通ります。4月頃に咲き誇る、遅咲きで有名な御室桜の桜林を眺めながら左(西側)へ曲がると、背が高く、正面はすべて板扉で独特の印象を与えるお堂に到着します。これが今回の目的地である観音堂。二王門から金堂を軸線として、東側にある五重塔(重要文化財)との絶妙なバランスで配されているのも特徴です。普段は踏み入れられない神秘的な空間で、静かに祈りを捧げる私たちを出迎えてくださる33体の仏様 370年以上も前に建てられたと伝えられている観音堂は、幾度の焼失と再建により、現在の姿は江戸初期の建築とされています。当時期に建てられた他のお堂の多くは純和様ですが、この観音堂は和様を主にしながら各所に禅宗様(ぜんしゅうよう:鎌倉時代頃に禅宗とともに伝わった中国北宋系の建築様式)が加味され、新旧様式が混在しているのも見どころです。いよいよ観音堂の中に足を踏み入れると、正面に須弥壇(しゅみだん:本尊を安置する場所であり、一段高く設けられた場所)があり、その中心には「本尊千手観音菩薩立像」、両脇には「不動明王(ふどうみょうおう)立像」と「降三世明王(ごうざんぜみょうおう)立像」、前には「風神・雷神立像」が。そして、千手観音菩薩の従属として「二十八部衆立像」が祀られています。特に、真ん中でひと際輝く観音様の圧倒的な存在感...。きらびやかでありながら穏やかなお顔には、どんな人でも心を奪われるのではないでしょうか。穏やかな面持ちの千手観音菩薩立像 なお、観音堂は多くの人々が訪れる仁和寺の中心部にありながらもひっそりと佇み、かつて公にされることはほぼ無かった神秘的な空間です。それは、昔も今も若い修行僧が日々厳しい修行を重ね、仁和寺にしか伝わっていない法流(教えを伝える系譜)を門跡から授かるというような非常に大切な儀式を行う場所だから。よって、これに相応しい風格を備えており、一般の方が普段目にすることは非常に稀な"最も尊いお堂"でもあるのが、この観音堂なのです。仏様お一人おひとりの表情や衣装も観察したい(※特別な許可を得て撮影しています) 手を合わせ、心静かに祈りを捧げる堂内に安置されている仏様は全33体。仁和寺の僧侶である林就吾さんによると、「ご本尊であり、万能な神様と言われている千手観音様が、仏さんの教えによって良い神様になられたお仲間をたくさん連れていらっしゃる様子は、厳かでありながら迫力があります。これほど間近で一般の方にご覧いただくことは今までになく、とても貴重な機会となるでしょう」。そして、「千手観音様は観音様の中でもスペシャリストとも言えます。"千"のように多くの手で、余すことなく皆さんに手を差し伸べてくださるから。"観音"とは"世の中を見る"ということを意味します。ここにいらっしゃるご本尊は、前で合掌されているものを合わせて42本の手、そして11面のお顔で、ありとあらゆる方角を見て世の中を見守り、私たちの苦しみを聞いてくださります」。躍動感に満ちた風神・雷神立像阿修羅王の3つの表情にも注目 千手観音菩薩の前方には、今にも動きだしそうな「風神・雷神立像」が。昔の農耕社会において恵みの雨を降らすのは風であり、この風を呼び起こす神様が「風神」だったとか。そして、天が喜んでいることを知らせる雷が鳴ることで、稲が豊作になり、一年間食べ物に困らないという考えで「雷神」も崇められてきたのです。躍動感にあふれ、迫力に満ちたおふたりの姿も必見です。また、千手観音菩薩のお仲間である「二十八部衆立像」の表情やポーズ、衣装はそれぞれ異なり、武将のような恰好の仏様や仙人のような仏様も...。きっと、ずっと見続けたい気持ちにかられるはず。林さん曰く、「もともとは戦いの神様として有名で、3つのお顔と6本の手(三面六臂)を持つ『阿修羅(あしゅら)王』の色鮮やかなお姿も、ぜひお探しいただきたいですね」。史上初、観音堂を心ひそかに守り続けた幻の観音様との出逢い千手観音菩薩を囲むように描かれた障壁画僧侶である林さんにお話を伺った千手観音菩薩や数々の神様を背後から包み込むように極彩色の障壁画があります。それも、真後ろの壁一面だけではなく堂内をぐるりと巡って壁と柱が彩られており、これが370年以上も決して公開されずに観音堂を人知れず守り続けてきた幻の「観音障壁画」なのです。お堂が建立された1640年頃、京都を中心に活躍した木村徳応(とくおう)という絵仏師らが手がけたもので、370年以上の時を経ているにも関わらず、色鮮やかな姿を現在に伝えている貴重なもの。ここには、観音経に基づいて様々な観音様のお姿や人々を救う場面が描かれており、ほんのりとした灯りの中で数々の画を堪能することができます。三十三観音菩薩や三十三応現身の場面など人面をした牛馬などが描かれる六道の畜生道 須弥壇正面には観音菩薩のいる浄土である「補陀落山(ふだらくせん)」の様子。救うべき対象に合わせて観音菩薩がその姿を変える三十三応現身(おうげんしん)を表現しています。そして、須弥壇背面には人間が死後に向かうとされる「六道(六つの世界)」が描かれています。生前の行いによって地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天上道のいずれかに導かれ、その報いを受ける人々の生々しい様は、大人はもちろん、子どもたちにとっても、日々の行いや態度などについて考えるきっかけになるかもしれません。例えば、「あれも欲しい、これも欲しい」とむさぼる子ども=「餓鬼(がき)」の世界には、物を食べようとしても口に入れたとたん炎になってしまう様子などが描かれています。また、人の喜びを妬み、「あんちくしょう、こんちくしょう」となる「畜生(ちくしょう)」の世界には、本能のままに生活した人間が動物に生まれ変わるという苦難が表現されているのです。 天女が舞い、音楽を楽しむ天上道の世界観音障壁画の前で六道について語る林さん林さんは、「例えば天上の画。天女様が舞い、人々は微笑み、音楽を奏でながら優雅に暮らしています。このような天界の世界に生まれ変わることが人間の最終目標でもありますが、私たちは今も、その時々の感情で六道の世界にワープできる。生きている中でも六道の世界を輪廻しているのです。ですので、自ら怒りの気持ちを抑えるなど日々の心を一定に保つのが理想であり、それはお一人おひとりの心の持ちよう次第なのです」。六道の画の上には、6つの世界をそれぞれ救ってくださる「六観音菩薩」が厳かな面持ちで立っていらっしゃいます。まさに、仏教の世界観に基づいた人生そのものの縮図が描かれているのです。「御仏の世界を間近でご覧いただきたいですね」極彩色の世界を隅々まで堪能したいそして、北・東・西側の壁には「三十三観音菩薩」も描かれており、一つひとつのお顔や姿にも目を向け、心に留めてみるのもよいでしょう。心が疲れた時、優しい気持ちになりたい時...。あたたかな眼差しで包み込んでくださる幻の観音様のもとへ、この春や秋、仁和寺を訪れてみてはいかがでしょうか。仁和寺を訪れたら、これも一緒に楽しみましょう■貴重な「朝のお勤め」体験仁和寺の敷地内にある「御室会館」に泊まると特別に、非公開文化財「金堂(国宝)」で朝のお勤めを体験できます。ろうそくの灯りの中で読経に耳を傾け、静かに祈りを捧げると心新たな気持ちに。■全国的にも有名な「御室桜」江戸時代から庶民の桜として親しまれ、多くの和歌にも詠われている「御室桜」は遅咲きで有名。仁和寺の御室桜が咲き誇る4月中頃には多くの人が訪れます。大正13年、国の名勝に指定されました■可愛らしい「お守り」いろいろ「幸福(クローバー)守」には天然のクローバーが施され、多くの幸福が舞い込むように祈願されています。「御室桜開運守」は開運や健康が祈願され、お土産にも人気。授与料は各500円。■お部屋に飾れる「桜おみくじ」桜の中にはくるくると巻かれたおみくじが入っており、桜の入れ物は持ち帰って部屋のインテリアとして飾ることもできます。ピンクと白色の2種類。授与料300円。今回の観音堂公開情報平成大修理完遂 仁和寺観音堂 特別内拝春季 2019年5月15日(水)~7月15日(月・祝)秋季 2019年9月7日(土)~11月24日(日)拝観時間:9:30~16:30(16:00受付終了)※宗教行事により拝観時間が制限される場合がございます。詳細は仁和寺HPをご確認ください。拝観料:一般1,000円(記念品付き)・高校生以下無料※次世代に文化を継承するという目的により高校生以下は無料となります。世界遺産 真言宗御室派 総本山 仁和寺TEL: 075-461-1155住所: 京都市右京区御室大内33拝観時間[3月〜11月] 9:00~17:00(16:30受付終了)拝観時間[12月〜2月] 9:00~16:30(16:00受付終了)JR「花園駅」より徒歩約15分もしくはタクシーで約5分JR「円町駅」より市バスにて約10分JR「京都駅」より市バスにて約40分京阪電鉄「三条駅」より市バスで約40分阪急電鉄「大宮駅」より市バスで約30分・「西院駅」より市バスで約25分※拝観料が必要な場所・時期があります。http://www.ninnaji.jp/
石原かんな
ライター
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BLOG京ノ旅手帖
2019.04.24
「水無月」を知る、初夏の京都旅
初夏の京都に登場する、あの三角形のお菓子は...?6月になると京都でよく見る、どこか涼しげなあの三角の和菓子。「これって何だろう...?」。京都在住でなければ、初めて見る方も多いかもしれませんね。今回はそんな"あの三角の和菓子"について、知識を深める旅に出てみました。 京菓子の老舗・亀屋良長さんへまず向かったのは、四条烏丸の交差点を西へ10分ほど歩いたところにある、亀屋良長さん。名水の湧く地として古くから知られる「醒ヶ井(さめがい)」という地で200年以上、美しくておいしい和菓子を作り続けています。こちらで"あの三角の和菓子"について詳しく教わることができました。正体は「水無月」「それは、水無月(みなづき)というお菓子ですよ」と、教えて下さったのは8代目ご主人・吉村良和さん。みなさんは「夏越の祓え(なごしのはらえ)」をご存知でしょうか。1年のちょうど半分にあたる6月30日に、半年間の穢れや邪気を払い、残り半年を健康で過ごせるように祈願する行事のことです。水無月はこの行事の一環として、主に京都で食べられているようです。 なぜ三角形なのか?もちっとしたういろうに小豆が敷き詰められた三角の形が、水無月の基本スタイル。その始まりは室町時代にさかのぼります。宮中で行われていた「氷を食べて暑気払いする」行事が始まり。ただ、氷は庶民には手の届かない高価なもの...。そんな氷を模して作られたのが、水無月の三角の形なのです。ちなみに、小豆には悪いものを払う意味が込められています。水無月作りの現場に潜入特別に水無月作りの工程を見せていただけることに! 「使う材料はどこも同じ。でも、店ごとに味が違う。それが和菓子の面白さですね」。そう語るのは、この道30年の職人・日野山文雄さん。作る時に大切にしているのは、食感。暑い季節に食べるものなので、つるんとしたのど越しを意識して作っているそうです。仕込みに手間がかかるのは小豆。3回に分けて蜜につけ、目標の糖度に近づけるので、完成に3日もかかるとか。 北海道産大粒小豆がつやつや輝く姿に、思わず見とれました。蒸す、切る水無月は2回の蒸す工程を経て、完成します。まずはういろうを蒸し、小豆をのせてまた蒸す。蒸しあがりを待っている間も、漂ってくる甘い香りにうっとり...。20分ほどで蒸しあがりました。これがあの、三角の水無月の原型! 迫力満点のサイズ感です。熱々の状態では綺麗に切れないので、冷ましてから切っていきます。大きさを測りながら、美しく均等に切る分けるのは、まさに熟練の技。流れるような作業風景に、見入ってしまいます。喫茶スペースで、いただきます!水無月が販売されている期間は、併設の喫茶スペースでいただくことも。価格は1つ292円(税込)、お抹茶などといただける季節の生菓子セットは918円(税込)です。上品な甘さともっちりとした食感...けれど、のど越しはすっきり。確かに、これなら暑い時期にもぴったり! 京都に根付く「夏越の祓え」の文化。販売される6月末の3日間は、水無月しか売れない!? というくらい、水無月を求めるお客さんで賑わうそうです。「和菓子は異文化を繋ぎ、平和な空間を作るもの」と語る吉村さん。初夏という季節を感じながら、みんなでワイワイ和菓子をいただく、というのもよいかも知れませんね。 ■亀屋良長京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19地下鉄四条駅から徒歩10分075-221-20059~18時6月28~30日(発売期間)https://kameya-yoshinaga.com亀屋良長さんの京菓子手づくり体験https://www.mbs.jp/kyoto-chishin/culture/confectionery.shtml私のおすすめ水無月亀屋良長の職人さんが語っていたように、水無月は店ごとに見た目や味が少しずつ違うのが魅力です。京都散歩の際、ふらりと入りたくなってしまうような、私のおすすめの和菓子店を3店ご紹介。食べ比べするもよし、来年の楽しみにするもよし。どのお店でもこだわりの水無月を味わえます。重厚感のある町家建築が素敵「大極殿本舗六角店」四条河原町でお買い物の帰りに立ち寄ったのは「大極殿本舗六角店」さん。かかっているのれんの色柄は季節によって変わります。こちらの水無月は本葛を使用していて、コシのある食感が特徴です。白、抹茶、黒糖と3種の味があり、どれをいただこうか、迷ってしまいますね。1つ200円(税込)、予約価格は180円(税込)です。 ■大極殿本舗六角店京都市中京区六角通高倉東入ル堀之上町120地下鉄四条駅から徒歩7分075-221-33119~19時(販売)、10~17時(喫茶)6月28~30日(発売期間)御苑散歩の折に行きたい「俵屋吉富」天皇陛下の即位でも話題になった京都御苑に訪れた時は、ぜひ「俵屋吉富」さんへ。創業はなんと宝暦5年(1755)! 西陣の地に260余年も店を構えています。ふんだんに入った大粒の小豆の歯触りが心地よいこちらの水無月は、白・黒糖と2種展開。歩きつかれた体をしっとり癒してくれます。1つ303円(税込)。■俵屋吉富京都市上京区室町通上立売上ル地下鉄今出川駅から徒歩5分075-432-22118~17時6月1日~30日(販売期間)http://www.kyogashi.co.jp/a-index.html控えめな甘さに、上品なサイズ感もうれしい「京菓匠 鶴屋吉信」フィギュアスケートの人気選手の選曲で一躍有名になった晴明神社。お参りの帰りに「京菓匠 鶴屋吉信」さんに立ち寄り、併設のお休み処で水無月とお抹茶のセット1,026円(税込)をいただきました。南丹・馬路の大納言を使ったこちらの水無月は、歯切れのよいもちっとしすぎない食感が癖になりそう。甘さも控えめで上品です。■京菓匠 鶴屋吉信京都市上京区今出川通堀川西入ル市バス停堀川今出川徒歩すぐ075-441-01059時30分~18時(LO17時30分)6月1日~30日(販売期間)https://www.tsuruyayoshinobu.jp/shop/旅を終えて...6月の京都に登場する三角形のお菓子の正体は「水無月」でした。昔から続く文化の一部である水無月。小豆の大きさや、ういろうの食感もお店によって少しずつ違うので、食べ比べてお気に入りを探すのも楽しそう!みなさんも、水無月を食べて夏の健康を祈ってみませんか?※価格は取材当時のもの
西垣 愛佳
ライター