ラグビー日本代表キャプテン・リーチマイケル「日本に恩返しがしたい」

情熱大陸を読む

2019/10/03 20:30

9月20日、アジア初開催となるラグビーW杯が開幕し、初戦となるロシア戦を30-10で制した日本。日本代表のキャプテンを務めるのは、リーチマイケル30歳。ニュージーランド出身で6年前に日本国籍を取得したラガーマンだ。
W杯前回大会で、日本は優勝候補の南アフリカ代表に歴史的勝利を収めた。W杯への期待が高まる中、リーチはキャプテンとして新たな目標を打ち出した。「ベスト8、またはそれ以上を目指す。そのために必要なことの一つは、最強のキャプテンになることだ」。9月22日放送のドキュメンタリー番組『情熱大陸』では、「日本に恩返しがしたい」と心に決めた男の覚悟の日々を追った。

フィジーの実家が全焼。そのとき、仲間たちが助けてくれた
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日本に来て15年が経つ。6年前に日本国籍を取得したリーチには、ずっと信じてきたことがある。「日本のラグビーは強い」。

(リーチ)「海外に行った時に日本の選手はリスペクトされない。それを変えたかった。日本の選手は一番努力してタフ」。
リーチは勝つことで日本のラグビーを動かそうとしていた。

初めてラグビーボールに触れたのは5歳のとき。カミナリに打たれたような衝撃が走ったと言う。15歳で交換留学生として来日し、北海道・札幌山の手高校に留学。日本の選手のラグビーの上手さ、懸命にできるまでひたすらに練習する、適当にしない日本人の勤勉さに驚いた。

「あの外人たいしたことないな」
対戦相手に揶揄され、大きなショックを受けたことが原動力に。日本で生活を送りながら、謙虚さや相手を敬う日本人の姿勢を学んだという。

高校時代、人生を決定づける出来事があった。ニュージーランドの実家が火事に見舞われた。家族は無事だったが、自宅は全焼だった。この時監督や仲間が募金を呼びかけ、リーチの家族は救われたという。これが、「恩返ししたい」という気持ちが人一倍強い理由だ。

後に、猛練習の努力が実を結び、日本を代表する選手に成長したリーチに、母国ニュージーランドからオファーがあった。だがリーチは、帰らなかった。恩返しを心に決めた男は、圧倒的な強さとリーダーシップで今の日本を引っ張っている。

祖父は自衛官だった。リーチと日本を繋いだ"縁"とは――。
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日本で開催されるW杯を「人生に一回のチャンス」と位置付けているリーチ。大きなプレッシャーがあるからこそ、リーチは仲間とのリフレッシュの時間も大切にしている。ある日、リーチは仲間たちととあるカフェを訪れた。すると、おもむろに厨房へ......。実はこのカフェ、リーチの奥さんが営むお店。仲間たちもよく来てくれるのだという。この日は、リーチ自らラテアートをふるまった。「みんなと飯に行ったり、トランプをやったり。切り替えが大事」。強い男は、オフの時間も有意義に過ごしていた。

日本代表が一堂に会する宮崎合宿の合間に、リーチが日本との縁(えにし)を話してくれた。太平洋戦争で、フィジーの自衛官だったリーチの祖父が、パプアニューギニアを戦場に、あわや日本軍と衝突しかけたことがあったという。互いに銃を向けつつも、祖父は「あっちいけ、俺はこちらにいくから」と呼びかけ互いに殺さずに済んだ。

(リーチ)「そこから日本と繋がってるんじゃないかな。不思議。今は日本代表キャプテン」

外国出身者が多いチームに日本代表としての一体感を強めようとするリーチが、チームを引き連れ向かったのは、宮崎県日向市・大御神社だった。ここには代表メンバーが大舞台で歌う国歌「君が代」にも登場する、さざれ石が祀られている。

(リーチ)「このチームの国家の意味まで知ることが日本代表だと思っています。次に国歌を歌うときを思い出して頑張っていきましょう」

そして、宮司とともに、チームメイト全員で「君が代」合唱。こうした行いも、チームの団結力を高めるはずと信じている。

8月、フィジー共和国。
W杯前、最後の大決戦となる「ワールドラグビー パシフィック・ネーションズカップ2019」で日本は見事、優勝を飾った。母親がフィジー出身ということで、会場には、リーチの親族がおよそ50人もかけつけていた。

もちろん、日本人の妻と一人娘もフィジーに同行していた。試合後、つかの間の休日へ。リーチは試合が近づくと家族と連絡もとらないため、これが久しぶりの再会となる。

(妻)「マイケルに負荷を与えないように気をつけている。娘がパパがいなくて泣いちゃうとかも、自分なりにいろんな解決策を持って全部自己処理できるようにしているのが、私の応援です」

健気な妻と娘。そしてフィジーでリーチの活躍を見守る親族みんながリーチの活躍を支えていた。

後進にチャンスを。自身が進める、ある計画―。
リーチ練習中.jpg

リーチは今、ある計画を進めているという。後進の育成だ。視線の先にあるのはモンゴルの少年・ノロブサンブ・ダバージャブさん。自分に与えられたチャンスを、今度はモンゴルの少年に託したい。

まずは、9月のW杯開幕戦に招待し、コミュニケーションを深めることに。

ロシア戦の勝利をノロブサンブさんも「応援していた日本が勝ってうれしいです」と見届け、初々しい笑顔。

試合の後、リーチが少年のホテルを尋ねると、一気に緊張感が高まったようで......「お会いできてうれしいです。私の将来の道を開いてくれてすごく感謝しています」と精一杯感謝の気持ちを伝えるノロブサンブさん。

思い出されるのは、15年前の自分だった。
「緊張して全く座り方も同じ。僕が38歳まで行ければ、一緒にプレイできるかもしれないですね。もしラグビーがダメなら相撲部屋に行かせます(笑)」

リーチは少年の手の大きさに惚れ込んでいた。少年と手を合わせ手応えがあったのか、笑顔を見せたリーチ。夢は、受け継がれる。


「情熱大陸」はスポーツ・芸能・文化・医療などジャンルを問わず各分野で第一線を走る人物に密着したドキュメンタリー番組。MBS/TBS系で毎週日曜よる11時放送。

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