俳優・堤真一を覚醒させた2人の"恩人"「こんなに美しい世界があるんだ」

日曜日の初耳学 復習編

2023/03/15 12:30

3月12日放送の「日曜の初耳学」の企画<インタビュアー林修>に登場したのは、日本アカデミー賞受賞7回を数える名俳優・堤真一。林先生を聞き役に、演技の楽しさを知るきっかけを与えてくれたという2人の“恩人”とのエピソード、そして、無口だったという父親への思いを語った。

■「デヴィッドに教わったことが僕の基本です」

映画「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)やドラマ「やまとなでしこ」(2000年)など、数々の代表作を持つ堤。そんな彼が「ケッチョンケチョンにやられました」と振り返るのが、26歳の時に出演した舞台で出会ったイギリス人演出家、デヴィッド・ルヴォー氏だ。

稽古では、長ぜりふの出だし1行だけで「なんでそうなるんだ」と止められた。「『トーンが違うのかな』と思っていろいろやってもダメ。それを何時間もやられたんです。結局そこから稽古も進まない」。そんな稽古が何日も続き、メンタルはボロボロ。次第に、やり場のない感情は怒りに変わっていった。

「なんかめちゃくちゃ腹が立ってきて、(その感情のまま)セリフをダーッと言ったら、止めないんですよ。要は、一番大事な"心のうち"ができていなかった」。足りなかったのは、演じる役の内面に渦巻く"怒り"の感情。その感情の爆発を、デヴィッドは待っていたのだという。

「デヴィッドに言われたのは、『お客さんは(俳優ではなく)役と役の関係性を観にきている。舞台で起きることを観にきている。セリフは自分の役を説明する道具ではなく、相手の心を動かすための道具として使え』と。デヴィッドに教わったことが僕の基本です」としみじみ振り返った。

■「今までの稽古で一番楽しかった」

もうひとりの"恩人"とは、スタントマンを志し、真田広之の付き人を務めていた21歳の時に出った。真田の出演舞台「天守物語」で共演していた坂東玉三郎だ。「舞台稽古で照明の中、玉三郎さんがスッと出てきた瞬間、『こんな美しい世界があるんだ。僕は舞台にかかわろう』と思った」。それが、裏方志望だった堤が舞台の世界を志すきっかけになった。

玉三郎が初めて演出を務めた「ロミオとジュリエット」では、多忙な真田の代わりに堤が稽古場に立つ役を務めた。本番の舞台には立たない堤に、玉三郎はほかの誰よりもダメ出しをし、それが堤を覚醒させた。「今までの稽古でその稽古が一番楽しかった。教わることだらけだから」。

一流の舞台人の薫陶を受け、日本を代表する名優に成長した堤。4月1日(土)から東京・世田谷パブリックシアターを皮切りに全国9都市をまわる舞台「帰ってきたマイ・ブラザー」では、少年時代からの憧れだという俳優・水谷豊と初共演を果たす。堤は、「不思議な気分ですよ。水谷豊さんとお仕事するって、小学生の頃の僕に言ってやりたい」と少年のように目を輝かせた。

■「父親像をものすごく見間違えていたな、って」

堤は、厳格だった亡き父・静雄さんの思い出も語った。父は「とにかく無口だったし、何を考えてるかがわからない人だった」。ほとんど会話した記憶もなく、「ずっと僕のことを嫌いなんだろうな、って思うぐらいだった」という。

そんな父は、堤が高校を卒業する頃、ガンで他界した。それから37年を経て、最近、父が大切にしていた写真が見つかった。子どもたちの成長を写した写真や、家族で住んでいた団地を写した写真。その一枚一枚からは、家族を思う父の愛情がたしかに感じられたという。

「彼の人生にとって僕ら家族は邪魔だったんだろうなっていうくらいの感じの人だったんです。だけど、そうじゃなかったんだなとわかって、意外だったし、自分が父親像をものすごく見間違えていたな、って」という堤の言葉に、スタジオ陣も涙...。

演じることや家族について、素直な思いを語った堤。インタビューを終えた林先生は、堤について「自分の信念のもとに丁寧に生きてらっしゃる方だな、見習いたいところがたくさんあると思いました」としみじみ語った。

3月12日放送「日曜日の初耳学」より、俳優・堤真一が敬愛する恩人のエピソードを打ち明けた<インタビュアー林修>がTVerで見逃し配信中!
堤真一編<インタビュアー林修>のTVerはここをクリック!※3月19日(日)20:59終了予定
「日曜日の初耳学」はMBS/TBS系で毎週日曜よる10時放送。
公式HPはこちら。

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