はやくも新シーズンに向けての戦いが始まっている高校ラグビー。2月1日には、近畿大会出場校を決める大阪府大会各ブロックの決勝戦が行われ、近畿大会に出場する3校が決まりました。
常翔学園・岡本選手「自分たちのラグビーをしようとみんなで確認」
Aブロック決勝は常翔学園と関大北陽の対戦。昨シーズンの新人大会、大阪総体と接戦を演じた両チームの激突となりました。前半、先に主導権を握ったのは常翔学園。スクラム、ラインアウトといったセットプレーをしっかりとコントロールすると、テンポよくボールをつなぎながら関大北陽陣内深くまで攻め込みます。しかし、関大北陽も粘り強いディフェンスで対応。トライラインを背にしながらも、ぎりぎりのところでしのいで得点を許しません。
常翔学園が関大北陽の厚い壁をようやく突き崩したのは14分、FW陣が圧力をかけて関大北陽のディフェンスを引き寄せると、NO8岡本慶次選手がうまくブラインドサイドをついてトライ。今シーズンのリーダーに就任した頼れる主将の活躍で5点をリードします。先制点で勢いの出た常翔学園。今度は関大北陽のミスをすぐさま得点に結びつけます。関大北陽のラインアウトが乱れてマイボールを確保すると、キックをうまく使ってあっと言う間に関大北陽のトライエリアに迫ります。最後はペナルティーからの早い仕掛けでLO山本智輝選手がトライ。10対0とリードをひろげました。
セットプレーの要、フッカーが負傷交代するアクシデントに見舞われた関大北陽。一瞬のスキを突かれてしまいました。常翔学園はさらに26分にもFB井上将悟選手が、抜群のスピードで関大北陽ディフェンスの裏に抜け出すと、フォローした山本選手がトライ。15対0とリードをひろげて前半を折り返しました
一方、前半は常翔学園の圧力をまともに受けて苦しんだ関大北陽。後半に入ると背後へのキックをうまく使って打開を試みます。そして後半2分、SO永菅彰太選手が自らけりこんだボールに素早く反応してボールを確保すると、WTB田中唯晴選手につないでそのまま右隅にトライ。ようやく5点を返しました。
その後も、キックを使って攻撃を仕掛ける関大北陽。しかし、さすがは常翔学園。バックス陣が落ち着いた対応で関大北陽の反撃を許しません。後半8分、途中出場の増田一平選手が関大北陽のキックからの攻撃を逆手にとる鮮やかなカウンター攻撃をみせます。関大北陽のハイパントをしっかりとキャッチすると、スピードで一気に関大北陽ディフェンスを突破してトライエリアへ絶妙のキックを転がします。このボールをWTB伊勢亀大悟選手が押さえてトライ。常翔学園が関大北陽の狙いを断ち切る見事な攻撃で20対5と突き放しました。
キックからの攻撃を封じられた関大北陽は、それでもあきらめずに反撃します。今度はFW陣が奮起し、前半から有効だったモール攻撃で常翔学園陣内深くまで攻め込みます。そして複数でしっかりとブレイクダウンに働きかけて攻撃を継続していく得意の形をつくると、後半13分、FW陣の執拗な連続攻撃から最後はLO藤本陸選手が中央にトライ。20対10と再び10点差に迫りました。
関大北陽の粘りの前に再び追い上げられた常翔学園。しかし、フィールド内の選手たちは落ち着いていました。岡本主将が「(縦に仕掛けていく)自分たちのラグビーをしよう、ギアをあげていこうとみんなで確認しあった」と語ったように、直後のキックオフから高い集中力で関大北陽に襲い掛かります。全員がしっかりと前に出てプレッシャーをかけると関大北陽のペナルティーを誘発。そして15分、ペナルティーでつかんだゴール前のチャンスにあえてスクラムを選択すると、スクラムを押し込んだ後、FL田中蓮聖選手がサイドついてトライラインに迫ります。最後はLO鈴木風馬選手がディフェンスを引きずりながら中央にトライ。さらにSO中野瑠人選手がゴールも決めて27対10。常翔らしい縦への力強い攻撃で17点差にひろげて勝負の流れを決定づけました。
関大北陽も21分に1トライを返しますが、反撃もここまで。試合終了間際にもダメ押しのトライを奪った常翔学園が32対15で関大北陽を振り切り、近畿大会出場を決めました。「苦戦はしたが、ひとまず近畿大会の出場権を獲得できてほっとしている。今年のチームは、昨年度の全国大会で先輩たちが残してくれたものが大きかった。最後まであきらめない、当たり勝つ、押し勝つ、そして去年よりもサイズが小さい分、より走り勝つ。そういうチームを目指してこれからもっともっと強化していきたい」と話した常翔学園・白木繁之監督。強い覚悟を胸に近畿大会に臨みます。
東海大大阪仰星「『基本的な部分をしっかりやる』に、こだわっていきたい」
続くBブロック決勝は、1月7日に終了した第104回全国高校ラグビーフットボール大会の決勝戦で敗れた後に新チームのスタートを切った東海大大阪仰星が、名門・大阪朝鮮中高級学校と対戦しました。「花園の決勝戦で自分たちに何が足りないか、(優勝した)桐蔭学園さんに教えていただいた。何よりも基本プレーの大切さを身に染みて感じることができたのが大きかった」と湯浅大智監督が語った東海大大阪仰星。試合開始から、新チームになってから数週間とは思えない精度の高いプレーで大阪朝高を突き放します。仰星らしいテンポのいいパス回しでミスなくボールをつないでいくと、グラウンドを広く使った攻撃で次々とトライを重ねていきます。前半だけで3トライを奪って24対0とリード。後半に入っても、一人一人が確実なプレーで積み重ねてリードをひろげていきます。
一方、試合登録メンバーは15人ぎりぎりという状況の中でも準決勝を勝ち抜いて見事に決勝戦に駒を進めてきた大阪朝高。大きくリードを許しても激しい闘志と伝統の突き刺さるタックルで仰星に食い下がります。後半、フレッシュな選手を次々と投入して得点を積み重ねてく仰星に対しても、あきらめずに最後まで食い下がります。そして、試合終了間際のロスタイムに突入した後半32分、FW陣が奮闘して仰星陣内深くまで攻め込むと、素早く展開して最後はCTBパク テア選手がトライ。仰星相手に意地の1トライを奪いました。
試合はこのままノーサイド。大阪朝鮮中高級学校の気迫あふれる戦いぶりに受けに回ることなく、常に基本プレーを徹底して高い意識で練習を積み重ねてきた選手たちが躍動した東海大大阪仰星が53対7で勝利し、近畿大会出場を決めました。この試合のゲームリーダーを務めた東佑太選手が「細かい部分、基本を徹底しようと試合中は意識して声をかけてきた。今年1年、桐蔭学園さんとの戦いで感じた『基本的な部分をしっかりやる』ということにこだわってやっていきたい」と語った東海大大阪仰星。王座奪回に向けて、まずは好スタートを切りました。
大阪桐蔭・手崎選手「ひとつひとつ積み重ねて強くなっていきたい」
Cブロック決勝は、昨年度の大会では花園の準々決勝で桐蔭学園に敗れるまで無敗の快進撃をみせた大阪桐蔭と近大附属の対戦。「昨シーズンまでの主力メンバーがごっそりと抜けて、今年は一からチーム作りをしている最中」と綾部正史監督が語った大阪桐蔭。それでも持ち味である強靭なフィジカルを武器に近大附属を圧倒します。開始3分で先制のトライを奪うと、その後もFW陣でしっかりと前に出た後、決定力あるBKにつないで次々と得点を積み重ねていきます。190cmを超える両LO酒井結仁選手と泊晴理選手で完全に制空権を握ると、伝統のスクラムでも近大附属を粉砕。前半だけで8つのトライを奪います。
後半に入っても大阪桐蔭の勢いは止まりません。途中出場のメンバーも含めて一人一人が強さを見せて得点につなげていきます。終わってみれば、前後半合わせて16トライ94点を奪う圧勝劇。伝統のフィジカルの強さを見せつけて危なげなく近畿大会出場を決めました。キャプテンを務める手崎颯志選手が「去年までのチームほどスキルや経験が少ない分、今年は基本プレーにフォーカスして、ひとつひとつ積み重ねて強くなっていきたい」と話した大阪桐蔭。抜群の資質を持つ選手たちのこれからの成長に注目です。
14校が出場 近畿高校ラグビーフットボール大会
●近畿大会大阪府予選(15人制の部)の1日の結果
Aブロック決勝 常翔学園 32-15 関大北陽
Bブロック決勝 東海大大阪仰星 53-7 大阪朝高
Cブロック決勝 大阪桐蔭 94-0 近大附属
近畿大会には各ブロックで優勝した上記3校が出場。開催県である兵庫は、報徳学園、関西学院、神戸科学技術の上位3校。そのほか各府県の上位2校(京都と奈良は各ブロック優勝チーム)が出場します。近畿大会は2月15日に兵庫県で開幕。前年度優勝の大阪桐蔭と兵庫1位の報徳学園は、シード校として2月16日の2回戦から登場します。
●第76回近畿高校ラグビーフットボール大会出場校
【滋賀】光泉カトリック 八幡工業
【京都】京都成章 京都工学院
【奈良】天理 御所実
【和歌山】近大和歌山 熊野
【大阪】常翔学園 東海大大阪仰星 大阪桐蔭
【兵庫】報徳学園 関西学院 神戸科学技術
(MBSスポーツ解説委員 宮前 徳弘)