大阪府にある国産つまようじメーカー「菊水産業」。火災などの困難を乗り越えて作られたこだわりのつまようじには多くのファンがいます。そんな菊水産業ですが、いま、通販サイトでの『高額転売』に頭を悩ませています。

白樺の原木を職人が一つ一つ加工…こだわりぬかれた「つまようじ」

 大阪府河内長野市の木材加工会社「菊水産業」。国産木材を使ったつまようじを製造する日本でわずか2社のうちの1社で、2年前に祖父と叔父から会社を引き継いだ末延秋恵さん(44)が会社を切り盛りしています。
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 看板商品は約300本入りで税込み550円の「純国産しらかば楊枝」。北海道産の白樺の原木を職人技で加工。一つ一つ手作業で検品して純白の箱に詰めた逸品です。
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 (末延社長)「国産のつまようじが良いと言ってお買い求めいただけるお客さまがいらっしゃいますね」
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 そんな菊水産業ですが、2021年10月に野焼きが飛び火して事務所や倉庫などが全焼する災難に見舞われました。

 (末延社長 2021年)「幸いなことにというか、工場は焼け残ったので、国産つまようじを作り続けることができるんですよね。これは先祖に『まだ作れよ』ときっと言われているのかなと思って」
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 火事を乗り越えてつまようじ作りを継続した菊水産業。最近はインターネット販売にも力を入れていて、看板商品の「純国産しらかば楊枝」は評判が高まり完売状態となっていました。

製造元に在庫がないのに…第三者がAmazonで勝手に高額転売

 そんな矢先、新たなトラブルが訪れます。それが「無在庫転売」です。完売状態の「純国産しらかば楊枝」について、大手通販サイトAmazonで、在庫を持っていないはずの第三者が定価の3倍以上の値段を付けて勝手に予約販売を受け付け始めたのです。

 (末延社長)「『カートに入れて予約注文する』『発売は9月1日』『9月2~3日にお届け』と書いてあって、これは普通の転売とは違うぞとなって。製造元のうちが在庫がないと言っているのに届くわけがないじゃないですか。それで悪質やなと思って」
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 商品が届かなければ購入者から菊水産業側にクレームが来るおそれがあることから、末延さんはすぐさま会社の公式SNSで注意を呼びかけました。

 その後、末延さんは出品取り下げを求めるメールを転売業者に送るなどして、商品ページから不正な業者をすべて削除することができました。これで一件落着と思いきや、予期せぬトラブルはまだ続きます。

安すぎてポリシー違反?定価でAmazonに出品するも受理されず

 (末延社長)「うちが普通にいつも販売している金額で出品しようとしたら『それが安すぎるからポリシー違反なので出品停止します』と」

 正規の製造・販売元である菊水産業が、Amazonでの出品を止められてしまったのです。一体、どういうことなのでしょうか。
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 その理由はこうです。Amazonでは同じ商品の出品者が複数いる場合、同一のページで出品することになります。しかし、転売業者が釣り上げた価格をAmazon側が適正価格と認識してしまったため、本来の定価で出品しようとした菊水産業が不当に安い値段をつけていると判断されて、申請が受理されない状況に陥ってしまったのです。

 (末延社長)「うちだけじゃなくてこういうことは日常的にたぶん起こっていて、こういうことがあったということで事業者仲間からも連絡をもらったんですよ。私だけではなく世の中の問題でもあるなというのはものすごく感じましたね」
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 結局、Amazon側とやりとりを重ねて菊水産業として定価で予約を受け付けられるようになるまでに6日かかったという末延さん。高額な無在庫転売に加えてAmazonでの出品停止という、まさに泣きっ面に蜂な今回のトラブルに憤っています。

 (末延社長)「ちょっと詐欺っぽいじゃないですか、今回の出品の仕方は。それはお客さまがお困りになるので本当にやめていただきたいなと思いますね」

 こだわりぬいたモノづくりで製品の価値を守ってきた作り手たち。彼らを脅かす転売業者を止める手立てはないのでしょうか。
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