「過大に支給していた65万円の返還をお願いします」。3人の子どもをもつ女性の家に大阪市から突然届いた文書。この65万円は市の計算ミスによるものですが、支払い期限は納入書が届いた約1か月後。市の一連の対応に、女性は「生活ができなくなる」と困惑しています。こうした内容をMBSは8月21日にテレビで放送しましたが、大阪市の横山英幸市長が8月28日、今回の市の対応について言及しました。

これまでの経緯 始まりは6月下旬に大阪市から届いた文書

 大阪市に住む湯川さん。夫と3人の子どもの5人家族です。
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 高校生の長女は自閉症で、学校が終わるとほぼ毎日、放課後等デイサービスに通っています。

 (湯川さんの娘)「(Q放課後デイはどんなところ?)楽しいところ。みんなが友だちになってくれるところ」

 放課後デイは障がいのある子どもなどが放課後や長期休暇に利用できる福祉サービスで、同年代の友達もでき、娘の“居場所”になっているといいます。
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 しかし、この放課後デイの利用をめぐって、あるトラブルが起きているといいます。それは今年6月下旬に届いた1通の文書でした。

 (湯川さん)「これが大阪市から届いたんですけど、66万円支払ってくれというのがきたんです。納得がいかなかったのと怒りでうわっとなってしまいました」
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 その文書の内容は…。

 【大阪市からの文書より】『過大に支給していた給付額についてご返還いただくことをお願いする』

原因は『市の計算ミス』 しかし支払い期限は納入書が届いた約1か月後

 放課後等デイサービスは、利用するにあたり国や自治体が9割を負担し、残り1割を湯川さんら利用者が負担することになっています。利用者が1か月で負担する上限額には3つのパターンがあり、所得によってかかる税額に応じて、0円(生活保護・低所得)・4600円(一般1:所得割28万円未満)・3万7200円(一般2)に分けられています。
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 湯川さんの場合、上限額は4600円と通知されていましたが、それは誤り。実際は3万7200円だったというのです。大阪市からの文書は、誤っていたことによる差額分、放課後デイの2年間の利用額約65万円の支払いを追加で求める通知でした。
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 通知内容は理解しつつも湯川さんが納得できないのがこの上限額について。実はもともと湯川さんの上限額は3万7200円だったからです。ところが3年前に突然、大阪市から4600円に変更となったと連絡があり、当時、何度も「間違いではないか」と役所に確認したといいます。

 (湯川さん)「『4600円ですけどあってますか?』と確認して、(役所の人に)『あってますよ』って言われたので、そこで安心してしまったんです。信じられなくなりました、大阪市が」
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 大阪市によりますと、今回の追加の支払いは所得区分の計算に誤りがあったことが原因だといいます。
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 その上、大阪市のミスであるにもかかわらず、支払いの期限は納入書が届いてから約1か月あまり。8月末なのです。

同様に追加の支払いを求められている人は77人

 娘のほか、小学生の子ども2人を育てる湯川さん、65万円を支払うことになると「生活できなくなる」と嘆きます。最初から3万7200円が上限だと正しく通知されていれば、通う回数を減らすなどして出費を抑えていたと訴えます。

 (湯川さん)「初めからわかっていたらセーブできるけれども、あとから言われたらできないので、怒りしかないです。(Q大阪市にどうしてほしい?)期間を延ばしてほしいですかね」

 大阪市によりますと、湯川さんと同じように追加で支払いを求められている人は77人いるといいます。

市の担当者「公平性から納付求める」「納付期間はみなさん一緒」

 納得できない市民がいる中で何か策はないのか。取材班は大阪市の担当者を直撃しました。

 (大阪市福祉局 福原範彦障がい支援課長)「今回誤ってしまった方以外のサービスをご利用されている方々との負担の公平性がありますことから、納付をお願いするという判断をしているところでございます。なかなかご納得いただけるようなケースではないというのは重々承知をしております」

 市はすべてのサービス利用者の公平性を保つためとしました。その上で、次のように話します。

 (大阪市福祉局 福原範彦障がい支援課長)「(Q支払い額が大きくても納付期間は変えない?)はい、それはないです。一律みなさん一緒にさせていただいています。金額の大小はそこには影響ないかなと思っています」
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 大阪市から通知されている支払い期限はまもなく。湯川さんの心情は複雑です。

 (湯川さん)「私的には納得はいってないけれども、利用した側なので支払わないといけないんだけれども、すごい高額なので戸惑いもあるし、もうどうしたらいいのかわからない状態です、いま」

横山市長がSNSで反応「是正対応の検討について指示した」

 そして8月23日。大阪市の横山英幸市長がこの件についてSNSでこう反応しました。

 【横山市長のSNSより】『市側のシステムエラーが原因になっている中で、急な請求は利用者の大きな負担になっていると考えます。現状聞き取りの上、是正対応の検討について指示しました』

「分割納付の延滞金をなくすなど検討したい」市長の言葉に湯川さんは…

 一体どんな対応をとるのか。8月28日午後、市長が取材に応じました。

 (大阪市 横山英幸市長)「これに関しては大阪市側のシステムエラーですので本当におわび申し上げる次第です。普通そんな金額をいきなり請求されたら困ります。今後の対応に関しては所管の局と是正措置をしっかり検討しながら進めていきたいと思います」

 具体的な対応については検討中としましたが、その1つとしてあげたのが延滞金についてです。大阪市では追加支払いについて「一括」としつつも、利用者と相談の上「分割」でも可能としています。しかし分割の場合は延滞金がかかり、その利率は8.7%(2023年)となっていて、より負担が増えるとの声も上がっているのです。

 (大阪市 横山英幸市長)「分割納付の延滞金をなくして、納付期限に関してかなり猶予をもつというのも方法の1つだと思います。それも含めて検討したいと思います。市民に寄り添った判断をできるだけ早くしていきたいと思います」

 市長の話を聞いていた湯川さん。3日後に迫る支払い期限を前に具体的な策は出ず、表情は晴れません。

 (湯川さん)「結論がわからないです、なんか濁しましたよね。モヤっとします。市民に寄り添うんだったら利用者が納得いく方向性を考えてほしいです」