大阪市内の公園で、これまでに150本以上の「くぎ」が地面の中から見つかりました。近くにある別の公園では長さ30cmほどのくぎも発見。公園は小さな子どもたちがよく利用するということもあり、地域住民からは不安の声が上がっています。

子育て世代が多く訪れる公園 地面に埋まった「大量のくぎ」

 大阪市中央区にある銅座公園。マンション開発が進み、子育て世帯が多く訪れる地域の憩いの場です。しかし、この公園で大量のくぎが発見されたというのです。
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 ボランティアで公園美化の活動などを行う団体の為數健司さんに話を聞きました。

 (銅座公園愛護会 為數健司さん)「グラウンドの一番広いど真ん中のところからたくさん見つかっております」
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 見つかった中には長さ15cmほどのものや、五寸くぎと言えるほどの太いくぎもあります。ほとんどが錆びていて、先端に土がまとわりついているものもありました。

 公園愛護会によりますと、こうしたくぎが9月20日までで約70本見つかったといいます。

 (銅座公園愛護会 為數健司さん)「完全に埋まっているものもあれば、少し歩いていくとつまづくような形で頭が出ているというのもあったというふうに(地域住民から)聞いています」
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 公園を利用するのは住民だけではありません。すぐ脇にある大阪市立銅座幼稚園では、園庭の代わりとして公園を利用することがあるといいます。

 (大阪市立銅座幼稚園 三原あけみ園長)「驚いて、今まで以上に気を付けないといけないなと思いました。今まで以上に使う前に丁寧に教職員で安全点検をして、何か落ちていないかとかでこぼことか、そういうのは注意深く点検するようにしました」

取材班が金属探知機で調査…『頭が地面から飛び出した状態で埋まっています』

 こうしたくぎはまだ残っているのか。9月18日、取材班は公園愛護会と協力して金属探知機などを使って調べることにしました。すると、すぐに…

 (記者)「金属探知機の音が鳴っていますね。…ありましたね、くぎがここに埋まっています。頭が地面から飛び出した状態で埋まっていますね」
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 中には、地面をならす器具で表面をこすっただけで…

 (記者)「器具に何か引っかかりを感じます。これもくぎですね」
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 1時間ほどかけて調べた結果、広場で5本のくぎと金属片などが出てきました。

 (銅座公園愛護会 為數健司さん)「小さな子どもが遊んでいる状況もあるので、非常に危ないなというふうには感じています」

 住民らの声を受け、市は今年7月に調査。くぎは取り除かれたかと思われましたが、その後も相次いで見つかっていて、不安は尽きません。

 (銅座公園愛護会 為數健司さん)「しっかりと子どもたちが遊べるように、どういうふうな基準で安全宣言を出していただけるかというところは、やはり行政の方にはしっかり検討していただきたいなと思います」

全国各地で見つかる“地面に埋まったくぎ”…児童が大けがをした事案も

 こうしたくぎは全国各地で見つかっています。東京都杉並区内の小学校では、校庭にラインマーカーとして打ち込んだと思われるくぎが地面から少し飛び出ていて、これによって児童が大けがをする事案が発生しています。

 また、愛知県西尾市のグラウンドでは今年4月、小学4年の男子児童がソフトボールの練習中に地面に埋まっていたくぎが刺さって、左ひざの下を10針縫う大けがをしました。
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 (愛知県 大村秀章知事 9月15日)「運動場やグラウンドにそういったもの(危険物)が見過ごされているということが判明しました。子どもたちの安全を確保するために、この調査を機にさらに徹底してもらいたい」

 この事故を受けて、愛知県では県内の小・中・高校などの運動場を一斉点検。調査の結果、1200校あまりのうち約3割の学校でくぎなどの危険物がみつかりました。

公園事務所が大規模調査…約90本のくぎなどが見つかる

 しかし、なぜこうしたくぎが大量に見つかるのか。大阪市などによりますと、銅座公園ができたのは今から50年ほど前。金属片などは公園の下の造成土に混じっていた可能性があるものの、くぎが刺さっていた原因は分かっていないということです。
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 「早くくぎを撤去してほしい」。公園愛護会や幼稚園から市に再三要望し続けた結果、9月26日、公園事務所が大規模な調査に乗り出しました。

 金属探知機で調べると…やはり、くぎが見つかりました。さらに、市は小さいショベルカーを投入。作業のスピードアップを図ります。地面を掘ると、ここにもくぎが埋まっていました。

 ほかにも、鉄筋とみられる金属製の棒に、テントをとめるためのペグなど、さまざまなものが見つかりました。
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 調査にかかった時間は約7時間半。この日だけで新たにくぎなどが約90本見つかり、これまでと合わせると160本ほどくぎが見つかったことになります。

 (大阪市の職員)「金属探知機に反応したものを全部回収したって感じですね。何かある前に取れてよかったと思います」
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 危険なくぎなどがなくなり、公園愛護会の為數さんも一安心です。

 (銅座公園愛護会 為數健司さん)「(地域)みんなで協力しあって公園事務所にも働きかけながらうまくやったおかげで、地域のためにきれいになったので、そういう意味では活動として良かったかなと思っています」

 一方で、公園を利用する親子連れからはこんな意見も…

 (6歳の子どもの母親)「全部(の公園の調査を)やってほしいですね。どこに行くかわからないし、ここ(銅座公園)ばっかり使っているわけではないので」
 (5歳・2歳の子どもの母親)「ひととおり点検していただいて、同じような作業を繰り返していただけたらいいなと思います」

担当者『ほかの公園で大量にくぎが見つかった事例はない』 取材班が実際に調査

 ほかの公園を調査する可能性はあるのか。公園事務所の担当者は「市内のほかの公園ではくぎなどが大量に見つかった事例はない」とした上で、次のように話します。

 (大阪城公園事務所 板井正宏所長)「我々は普段から定期点検と日常巡視によってちゃんと表面の管理をしていますし、目視によって監視をしていますので、まずそれ(目視による監視)をきっちりやっていくということで安全確保をしていきたいと思っています。通報を受けた場合は、都度それに見合った対応をさせていただきたいと思っています」
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 では、本当に他の公園ではくぎは見つからないのか。取材班は銅座公園近辺の4つの公園を調査してみました。中央区にある中大江公園では…
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 (記者)「こちらなんですけれども、明らかにくぎが刺さっていますね。頭が地面から出ている状態です」

 ほかにも、頭の角が地面から飛び出したくぎや、ヒモがついたくぎが目視で確認できました。
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 取材班は公園事務所に通報。20分ほどして公園事務所の職員がやってきました。見つかったものを抜いてみると、30cmほどにもなる長いくぎが…。さらに、谷四錦郷公園でもヒモがついた状態のくぎを3本発見。結果、4つのうち2つの公園から計9本くぎが見つかりました。

 こうした状況に大阪市は「今後の一斉点検については検討中」としています。

 普段利用する公園が安全とは言い切れない今、自治体は先手を打って対応する必要があるのではないでしょうか。

横山市長「市管轄の全公園点検」を明らかに

【追記】
 公園から大量のくぎが見つかったこの問題について、MBSがテレビで報じた翌日の10月10日、大阪市の横山英幸市長は、市が管轄する約990の公園で一斉に点検する方針を明らかにしました。

 (大阪市 横山英幸市長)「けがをしてしまうと大変なことになりますから、そうならないように、やっぱりこういうもの(くぎ)も実際発見されましたし。お子さんや利用者がけがをしないように、大阪市が管轄する公園には、全公園点検するというふうに所管の局からも聞いておりますので、これをしっかり進めていってほしいと思います。公園によって用途が違ったりします。所管の局において点検の仕方を検討されると思います」