通行の“難易度”が非常に高い「危険な踏切」が京都にあります。線路に対してななめに通っている上、道幅が狭く、近くに大型のショッピングモールがあるため交通量も非常に多いなど、複数の危険が重なる踏切に、周辺住民らが苦悩しています。

「こんなんないやろ!」複数の危険要素が重なる“ななめ踏切”

 京都市右京区にある阪急京都線の「松原通踏切」。利用する近隣住民たちからは一様に不安の声が聞かれます。

 「こんなんないやろ!こんなん自転車も危ない、車も危ない、人もみんな危ない」
 「危ないと思っています、いつも。特に私ら年いったら渡るのが怖い」
 「(Qここの踏切は通る?)通りません。危ないからね」

 みな「危険な踏切」だと口を揃えます。

 (記者リポート)「こちらの踏切、道がななめに曲がっているのがわかるかと思います」
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 普通の踏切のように線路に対して垂直に歩くと、うっかり線路に入ってしまいます。線路に対して道路がななめになっている“ななめ踏切”なのです。

 しかも周辺の道路が複雑な構造になっていて、踏切に入るときに鋭角に曲がり、さらに踏切から出た直後も鋭角に曲がる必要があります。ジグザグに線路を渡らないといけないのです。
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 線路の周辺を見ると、一方は五本の道が交わる五差路、もう一方は三本の道が交わる三差路となっていますが、踏切での停止位置もわかりにくいようです。

 近くには大型ショッピングセンターやスーパーがあって交通量も多く、車や歩行者がひっきりなしに通ります。しかし道幅は2.9m。車1台が通るのがやっとの幅です。

『踏切内で車同士が鉢合わせ』『トラックを避けようとした自転車が踏切に激突』

 記者が歩いて踏切を渡ってみると、狭い道の中で前から来た車や自転車とすれ違います。さらに踏切の様子をうかがうと…

 (記者)「バイクと車が鉢合わせて危ない!かなりギリギリ」
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 (記者)「車同士、対向できるんですかね…ギリギリですね。危ない危ない!…ギリギリ通れました」
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 (記者)「今、車が踏切の中で鉢合わせになりました。どちらかが下がらないといけません。かなり危ないですね」

 道路がななめになっていることで、踏切の向こうから車が来ているかわかりにくく、踏切の中で車同士が鉢合わせとなるのです。また、踏切を渡った先の道は坂道で見通しも悪いなど、危険な条件ばかりが揃っています。
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 近隣住民へのインタビュー中にも…

 (記者)「線路内で車が詰まっていますね」
 (近隣住民)「どっちかが下がらないと」
 (記者)「こうしている間に踏切が鳴らない?」
 (近隣住民)「どっちも下がらんと“押し合い”する場合もあるねん」
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 さらには、反対側から走ってきたトラックを避けようとして自転車が踏切に激突してしまう場面もありました。

 こうした状況を車のドライバーたちはどう思っているのでしょうか?

 (ドライバー)「危ない。お互いバーンと突っ込んだらどちらかが下がらないといけない。なんかいい方法ないもんかね」
 (ドライバー)「ちょっと角度が急で、“N型”というか“Z型”というか。踏切を渡るところが鋭角と鋭角で続くので通りにくいなと思います。向こうから車が入ってきてしまって、踏切の中でどうしようとなったこともある」

車が線路に誤進入して列車と衝突 死亡事故も発生

 また、近所の人はこんな場面に遭遇したといいます。

 (近隣住民)「道路がななめになっているからね。車が向こうからとこっちからと両方から行くからね。車が入ったまま、そのまま踏切が下がって、人が非常ボタンを押して電車が止まったこともある」
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 実際に事故も起きています。2014年、車が踏切から線路内に誤って進入し、列車と衝突したのです。
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 この車は北から線路を渡ってすぐに右折しようとしていましたが、実際には線路を渡り切る前に右に曲がっていました。
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 その1年前の2013年には、車を運転していた84歳の男性が死亡する事故も発生しています。

神戸市にも“ななめ踏切” 高齢者が死亡する事故が発生

 “ななめ踏切”をめぐってはほかの場所でも事故が起きています。神戸市灘区にある阪急神戸線の「篠原第二踏切」で1月23日、兵庫県警の警察官が注意を呼びけていました。
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 (警察官)「ここで事故があったんですね」
 (通行人)「そうなんですか?」
 (警察官)「人がお亡くなりになってしまって…」
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 ここも京都の踏切ほどではないものの、線路に対して歩道と車道が垂直ではない“ななめ踏切”です。去年10月、手押し車を押した94歳の女性が死亡する事故がありました。亡くなった高齢女性は線路に対して垂直に歩いているうちに、線路内に転倒したとみられています。

 (兵庫県灘警察署 藤本章夫交通課長)「線路に対して道路がななめになっている状況です。段差に足をつまずかれたのか、手押し車の車輪が引っかかったのかは判然としていませんが、上り列車の軌道内に転倒されたという状況です。通常はななめに歩行者が渡っていくんですけれども、まっすぐ行って逸脱してしまったと」

京都の踏切の対策は?市に聞いてみると…

 再び京都の“ななめ踏切”に行ってみると、この日も変わらず交通量は多いようです。地元住民らから「危険」と声が上がる中、道路を管理する京都市は対策に乗り出すことはないのでしょうか。

 (京都市建設局 村田昌寛担当課長)「都市計画道路(市道)の決定はされていまして、踏切部分のところは未整備となっております。(Q計画ができたのはいつ?)昭和3年(1928年)ですね」
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 実は約100年前から南北方向にまっすぐ市道を通す計画があり、踏切周辺の道路はほぼ完成したものの、踏切部分はまだ着工できていないといいます。

 (京都市建設局 村田昌寛担当課長)「(Qいつごろ完成する予定?)ばく大な費用や多くの時間を要することから、都市計画道路(市道)整備の事業化のめどは立っておりません」
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 市は注意を促す看板やLED照明などを設置したということですが、抜本的な対策とはなっていません。

専門家「既成市街地で踏切を付け替えるのはなかなか難しい」

 なぜ100年前の計画が実現しないのでしょうか?専門家は次のように話します。

 (関西大学 安部誠治名誉教授)「何十年前の計画が実現できていないのは全国でも実はあるんですね。既成市街地で道路を変更するとか踏切を新たに付け替えるのはなかなか難しい」

 過去に死亡事故も起きている危険な“ななめ踏切”。早急に対策が必要なのではないでしょうか。