2020年に神戸市消防局が山で救助した人数は111人で過去20年間で最多でした。そのうち約半数は“六甲山系”で発生していて、身近な山であっても遭難のリスクは潜んでいます。コロナ禍で密を避けられる山登りの人気が高まる今、どんな場面で注意が必要なのかをMBSの大吉洋平アナウンサーが取材しました。

訪れたのは阪急芦屋川駅から歩いて行ける身近な山登りスポットである六甲山の「芦屋ロックガーデン」。
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案内をしてくれるのは神戸市消防局の特別救助隊です。
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そして早速、足元に潜む危険から。スニーカーを履いていた大吉アナに対して、神戸市消防局・灘消防署・第一方面特別救助隊の消防司令補である加賀山達也さんからアドバイスです。
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(加賀山さん)
「靴なのですけれども、今日上る場所であれば、できれば“トレッキングシューズ”の方が上りやすいかと思います。ここロックガーデンのコースであれば“ザレ場”というゴロゴロしている砂地のところがあるので、そこであればちょっと滑りやすくなっていると思います」
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スニーカーだと、ぬかるみや砂地で足を滑らせやすく、思わぬケガにつながるといいます。

(加賀山さん)
「下山できなかったりとか救助待たないといけないとかいう事にもつながってくるので。やはりケガをしない装備品が大事だと思います」

大吉アナは、滑りにくいトレッキングシューズに履き替え、いざ登山道へ。

今回は初心者向けのコースとして標高447mの「風吹岩」をゴール地点に設定。ここでもリスク回避のための行動として、緊急連絡先などを書いた“登山計画書”を提出して登山開始です。

コースに入ると早速「高座の滝」が目に入り、自然豊かなコースに楽しい気持ちになります。

しかし、その直後、岩肌が剥き出しのゴツゴツとした足場になりました。登山開始から10分ほどで急傾斜の山道が行く手を阻みます。
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(大吉アナ)「六甲山ってこんなに険しいんですね」
(加賀山さん)「岩肌が結構危ないので、ケガをしないためにも“長袖・長ズボン”を着ていただけるとより安全かなと」

袖の長い衣服は、切り立った岩のほか、害虫などの危険からも肌を守る役割があるといいます。

そして歩くこと15分、加賀山さんが立ち止まりました。

(加賀山さん)「大吉アナ、ここがひとつ注意すべきポイントになっています。登ってきて、今度僕たちはこちらに登っていくんですけれども、帰りがこちらにもルートがあります。降りてきたら、そっちの方が真っ直ぐ視界に入ってしまうので、こちらに降りてしまいがちになります。帰りの下りの時に自分が上ってきた道と違う道で降りてしまうという危険性がここにはあるんです」

(大吉アナ)「僕、加賀山さんに言われていないと、ぼーっと歩いて行ったんで、帰ってきた時にたぶん迷いましたね」

(加賀山さん)「こちらに行ってしまう方が多いと思いますね」
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実は六甲山での遭難の原因として多いのが『下り道での分岐』だといいます。

(加賀山さん)「自分が予想していない道に出てしまうので迷ってしまう。“あれここ来たところじゃないな”と思ってしまうのが焦りの第一歩」

万が一、道に迷ったときに役に立つのが『119番つうほうプレート』です。プレートに書かれたひらがなと数字を消防隊に伝えれば、通報場所を素早く特定できて、早期救出につながるといいます。

(加賀山さん)「このプレートの、ここであれば【ひ4-6】と書いていますけれども、119番通報をして、この番号を言っていただいたら、ここに僕らはすぐに来ることができます」
(大吉アナ)「子どもでも、この仕組みをわかっていれば、もしもはぐれた時、もしも一人になってしまった時に、どうにか自分の場所を伝える術があるということなんですね」

ゴールまであと少しですが、加賀山さんの指導で休憩を取ることになりました。

(大吉アナ)「だいたい1時間弱くらいですかね。途中、水飲みながら来ましたけれども」
(加賀山さん)「この季節は特に暑いので、こまめな水分補給が大事です」
(大吉アナ)「都会のビル群に比べると、山の中は涼しいイメージがあって、日陰にもなっていますが、でもやっぱり熱中症のリスクってあるんですね」
(加賀山さん)「熱中症とか急病で倒れる人も約3割近くいらっしゃるので。日陰と日向が交互になっていたり、どうしても登りですごく汗をかいたり、熱中症リスクはかなり高いと思いますね」

登り始めて1時間余り、今回の目標地点「風吹岩」に到着しました。
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(加賀山さん)「到着です」
(大吉アナ)「うわ~綺麗!本当に海と山に囲まれた神戸の町というのを思いっきり感じることができますね」
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(神戸市消防局・灘消防署・第一方面特別救助隊 加賀山達也消防司令補)
「(六甲山は)比較的上りやすい山、気軽に行ける山となっていると思うんですけれども、その中でも登山する上で計画やどういう道を行くか、個人の装備品であったりとか、そういったところをしっかりしていただけたら、安全で楽しい山登りができると思いますね」