ロシア国防省は4月14日、黒海艦隊旗艦の「モスクワ」が曳航中に沈没したと明らかにしました。一方でウクライナ側は「ウクライナのミサイル攻撃で深刻な打撃を与えた」と発表しています。「モスクワ」は500人近い乗員を乗せた全長約180mの大型巡洋艦で、ロシア海軍が保有している3隻のうちの1隻。指揮官が乗る黒海艦隊の『旗艦』とされています。

 国際政治学者のグレンコ・アンドリーさんは「旗艦の沈没がウクライナ側の攻撃によるものだった場合、プーチン大統領が選択肢の一つとして宣戦布告し『特別軍事作戦から戦争』へ移行するのではないか」と分析しています。さらに今後、ロシアが宣戦布告し戦争状態に移行した場合、「ロシアが国民を総動員し、ウクライナに100万人規模の兵力を投入する可能性」などについて解説しています。

 ―――ロシア国防省は、ウクライナ南東部マリウポリに残るウクライナ兵らに対して日本時間4月17日午後7時までに投降するよう要求していましたが、この期限は過ぎました。ウクライナのシュミハリ首相は「現時点で我々の兵士はマリウポリにいて最後まで戦う」というふうに話しています。やはり兵士たちは最後まで戦うという意志を貫くのでしょうか?
 「それはウクライナの国民性の問題に繋がっています。ウクライナは基本的に穏やかな国民性ですが、やっぱり極限の状態まで進むと、もう正義感で動くことになるんですね。正義感という観点から見ると、あまりにもこのロシアの攻撃は理不尽すぎるので、ここはやっぱり許せないというのを兵士は1人1人そういうふうに考えているんですね。だからこういう考えを持っている以上、仮に最高指揮官から『もういいよ。もう投降して助かりなさい』と言われたとしても、自発的に最後まで戦うんですね。そこはたぶん日本人とちょっと違うところだと思います。もちろん日本人も基本的に必死に戦うんですけど、最高指揮官からの指示があれば日本人はたぶん受け入れて投降すると思うんですけど、ここはちょっとウクライナ人が違って、その最高指揮官の命令があっても、『いやここは違う。ここは戦うべきなんだ』ということを現地で戦っている人が判断すれば、たぶんそっちを貫こうとする可能性が高いので、というか間違いなくそうなので、今回のマリウポリの状況はまさにそのあらわれなんです」

 ―――そして、停戦交渉に影響するのかどうか。ゼレンスキー大統領は「マリウポリで我々の兵士が全滅すれば、ロシア側との停戦交渉は中止されるだろう」というふうに話しています。これはどういう意味なのでしょうか?
 「これもウクライナの国民性が故の発言になっているんですね。ゼレンスキー大統領は基本的に他の政治家よりも世論を気にしている大統領なんですね。元役者というものもあって独自の個性を出すというよりも、国民の要望の鏡になってそれに応じるという姿勢なんですね。その中で、もしマリウポリの兵士が全滅したら、国民感情としても絶対ロシアを許さないというのは、もう既に許さないんですけど、ブチャでもすごく酷いことになっていたので、なおのこと許さないということになります。その場合は、もう交渉なんて国民や特に実際に戦っている兵士は認めないので、そうなるだろうと想定してこういう発言が出ているんですね」

 ―――一方、ロシア国防省は4月14日、旗艦「モスクワ」が沈没したと明らかにしました。これに関連し、プーチン大統領の選択肢の1つとして、宣戦布告で平時の「特別軍事作戦」から「戦争」への移行もあるかもしれないということですか?
 「一応、今のロシアの解釈では特別軍事作戦となっています。特別作戦の前提となるのは、短期的に成功率の高い作戦を起こすことで、全部使うのではなくてあくまで一部の軍隊を優先的に要衝制圧に使う。だから特別軍事作戦なんですね。なので、今のロシアの法律というか法体系の中では、平時なんですね。他国で軍事作戦をやっているけど、ロシア国内では平時。平時である以上、一応国民の生活は普通の生活になっているんですけど、もしこれが戦争になれば、ロシアで戦時体制が発令して総動員令がかかるんですね。そうなるとロシアが全ての人員や全ての国力をその戦争だけのために投入するということになるので、明らかに今よりも大規模な戦闘状態になります」

 ―――宣戦布告した場合、ウクライナに100万人規模の兵力を投入という可能性もあると?
 「100万人というのはロシアの全軍がそれぐらいです。戦時体制になると、この全軍を戦争だけのために使うことができます。規模はだいたいなのではっきりどれぐらいになるかわからないんですが、最大それぐらいはあるので、それを全て使うんじゃないかという可能性もあります。ただ、あくまで現時点で宣戦布告は噂のレベルなので、起きるかどうかわからないです」