西成や新今宮、新世界などいわゆる“ディープ大阪”がいま、活気にあふれています。4月22日に新今宮エリアにオープンした「OMO7大阪by星野リゾート」や、西成の街をアートで彩って盛り上げるラッパーやアーティストたち。『街を変えたい』のではなく『街の魅力をそのまま伝えたい』とする人たちの奮闘を取材しました。
『OMO7大阪』が新今宮にオープン!“ネオンアート”で夜を鮮やかに
大阪・西成と新今宮。このエリアの印象を大きく変えるかもしれないニュースが、4月にオープンした星野リゾートの新ホテル「OMO7大阪by星野リゾート」です。
ホテルの下には、建物が密集するこの地区ではあまり見慣れない緑地が広がり、オープン初日は家族連れなどで賑わっていました。
日が落ちてくると、緑地ではアートなイベント「PIKAPIKA NIGHT」がはじまりました。大阪らしいネオンアートが夜の雰囲気を盛り上げます。
さらに、ホテルの白壁をキャンバスに色とりどりの花火アートが打ち上がりました。宿泊客限定のイベントですが、敷地の外からもよく見え、駅の利用者も通行人も足を止めています。
(街の人)
「きれいやね。こういうの初めてやからね」
「素敵な場所になったなと思って。(Q新今宮のイメージが変わる?)そうですね、変わりそうですね」
「花火が上がるなんて思っていない」
夜は暗くなる地域が、アートな照明で鮮やかに。このイベントはしばらくの間、毎晩行われます。
(OMO7大阪by星野リゾート 中村友樹総支配人)
「地域や駅を行き交う人に、どのような印象を持っていただけるかを重視して運営をやってきていますので。新今宮エリアが大阪に遊びに来た人にとって新しい目的地になるような、そういうエリアになっていけるといいんじゃないかな」
“アート”で街の魅力伝えるラッパー『SHINGO★西成』
同じような考えを持ち、アートで地元の魅力を発信している人がいます。地元・西成出身のラッパー、SHINGO★西成さん(49)です。
(SHINGO★西成さん)
「雨の西成もええやんということで。俺の曲をかけてくれている。頑張ってれば、頑張ってれば♪」
西成のどこに行っても顔なじみに出会います。
(SHINGOさん)「仕事抜けていいんですか?」
(街の人)「抜けるやん!SHINGOのためならなんぼでも抜けるやん」
(街の人)「色紙にサインいただけますか?」
(SHINGOさん)「もちろん、もちろん」
(街の人)「いいですか!ちょっと持ってきます」
SHINGOさんは本業の歌以外に力を入れていることがあるといいます。
(SHINGO★西成さん)
「こてこてやね。そして、振り返ったらアートがある。これが完成したのは去年の7月ですね」
商店街の中に突然現れたアート。
(SHINGO★西成さん)
「アートが連結しています。いいでしょ?」
区役所や南海電鉄などと協力し、さまざまなアーティストを巻き込んで西成区の壁にアートを増やす取り組み「西成ウォールアートニッポン」をしています。
次に案内してくれたのは三角公園の近くです。
(SHINGO★西成さん)
「枯れない木という感じで、根っこがしっかりしている。三角公園にも合うかなと思って」
2階建ての壁一面に描かれたカラフルな木。生命力みなぎる枝葉を支えるように大きく広がる根が印象的です。
街を歩いていると、再び顔なじみに声をかけられたSHINGO★西成さん。
(街の人)「久しぶりやなあ!三角公園のところの絵。絵見たらええなあ!メッセージ性あるな!」
(SHINGOさん)「おおきに。ありがとうございます」
取り組みは少しずつ街の人に浸透してきたようです。
『西成暴動』から約30年…「アートを入れて街がきれいになった」
(SHINGO★西成さん)
「(西成)暴動もあったけど。『住めば都』じゃないけど、パワー溢れる街はほかにはないと思うので。継続は力なり、俺らの地元は西成なので。等身大、自然体で生きていける街って俺は素晴らしいと思っているから。それを目指してボチボチいきましょ、ボチボチ」
1990年、警察官と労働者らが激突した「西成暴動」。男性が警察官に瓶を投げつけ、路上では車が燃え上がりました。
JR新今宮駅の南側「あいりん地区」は、かつての暴動から『治安が悪い』『怖い』といったマイナスのイメージが長年染み付きました。
いまも段ボールの山が見られるなどのなごりはあるようですが、地元の人に言わせれば『これでもだいぶ良くなったのだ』ということです。
(街の人)
「昔はそこらへんにおっちゃんが寝ていたので。いまはきれいになったし、ごみもそんなに落ちていないし、臭いも全然なくなったので」
「このアートを入れてから後の話かな?だんだんと全体がきれいになったのは。ゴミがなくなった。ほかの街と変わらへん、あいりん地区は」
新世界の『くら寿司』の白壁にド派手なアートが!
隣の浪速区「新世界」では、SHINGO★西成さんらの壁画の取り組みに呼応する企業も現れました。回転寿司チェーンの「くら寿司」です。
くら寿司のお店は、蔵をイメージした白壁が一般的です。しかし、アーティストは躊躇なくカラースプレーを吹きかけていきます。
(くら寿司・ブランディング本部 大森輝一さん)
「コロナの中でも少し明るい兆しが見えてきましたので。(アートを)見に来て、くら寿司の寿司をひとりでも多くのお客さまに召し上がっていただけたらうれしいと思っています。街の雰囲気にもピッタリな絵ができると思っていますので」
そして4月28日、高さ11m、幅8mある建物の表面に描かれたのは、お寿司のキャラクターたちが波に乗る迫力あるアートでした。地域の活性化とともに、集客の起爆剤になるのでしょうか。
(街の人)
「え!すごい!目を引きますね」
「色使いがええわな。派手すぎるということはないわな、目立とうと思ったら」
「あ!これ(同じような取り組みを)西成でもやってるやろ。やっぱり明るくなるんちゃう」
西成の将来のイメージは『歩く観光地』
地元のアートを背に歌いだしたラッパーのSHINGO★西成さん。
(SHINGO★西成さん)
「繋いでいきたいな、色んなStyle。真っ白から始まる、続ければ何か変わる。『今出来る事を今出来る人が』、この言葉こそいつか広がる。絵も人生も描き奏でる。試練乗り越えて夢叶える♪」
将来、西成が「歩く観光地」になるイメージを描いています。
(SHINGO★西成さん)
「街を無料美術館に。その絵をたどっていくといろんなお店にも行けるし、いろんな人生みたいなおっちゃんおばちゃんと会えて。なんか、街としてええんちゃうかなって」