京都市右京区にある世界遺産「龍安寺」。コロナ前は年間90万人の拝観者が訪れていましたが、コロナ禍になり拝観者数が大きく減少。こうした状況を受けて龍安寺が“苦渋の決断”をしました。

コロナ禍で拝観者激減の「龍安寺」…維持管理のため“苦渋の決断”

 「全国旅行支援」の利用が始まりにぎわいが戻ってきた京都。水際対策の緩和もあり外国人観光客の姿も増えつつあります。

 京都の人気観光スポットのひとつである世界遺産「龍安寺」。室町時代に創建された禅寺で、敷き詰められた白川砂に大小15の石が配された枯山水の庭園「石庭」で知られています。

 (観光客)
 「すごく素敵でした。よかった」
 「初めて来たんですけど、庭が有名だということで感じるものはありました」
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 今年9月に亡くなったイギリスのエリザベス女王も1975年にこの石庭を見学。海外のメディアでも報道されて世界的にも「ロック・ガーデン」として一躍有名になりました。
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 (龍安寺 岩田晃治事務長)
 「お庭の線は住職が引いていますね。住職が大体10日に1度引いています。維持管理というのはずっと変えることができないですね。いろんな管理をやりながら昔からの状態を今に伝えている」

 室町時代に創建されて500年を超える歴史を持つ龍安寺。その広さは15万坪を誇り、庭園など境内の管理には年間で億単位のお金がかかります。これまでその管理費の9割を拝観料で賄ってきました。しかし…。

 (龍安寺 岩田晃治事務長)
 「今のコロナ禍で拝観者が減っている状況で維持運営をするのは非常に難しいですね」
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 年間90万人だった拝観者は、去年は8割減の約20万人になりました。そのため来年4月から大人の拝観料を今の500円から600円に値上げする決断をしました。しかし、この決断を下すには、かなり頭を悩ませたといいます。

東に「金閣寺」西に「仁和寺」…バランスで悩む「龍安寺」

 (龍安寺 岩田晃治事務長)
 「東は金閣寺さん、西は仁和寺さんという、周りとのバランスというのもありますので」

 龍安寺から「きぬかけの路」を東に約2km進めば年間の拝観者が500万人を超えるともいわれる世界遺産「金閣寺(鹿苑寺)」があります。逆に、龍安寺から西に約1km進めばこちらも世界遺産の「仁和寺」があります。金閣寺の拝観料は現在大人(高校生以上)400円。龍安寺が値上げをして600円にすると、200円も高くなってしまいます。

 そして、もう一方の仁和寺はというと…。

 (仁和寺・拝観課 竹中亮寛課長補佐)
 「まず大人の料金を500円から800円に引き上げていまして、それに合わせて高校生以下をすべて無料にしています」
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 仁和寺は去年、大人の拝観料を値上げする一方で、修学旅行生など若い世代により多くのエリアを見てもらいたいという思いから高校生以下を無料にするという大胆な変更に踏み切りました。結果的にこの取り組みは成功。修学旅行生を乗せたタクシーの駐車料金で収入がむしろ増えたといいます。
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 (仁和寺・拝観課 竹中亮寛課長補佐) 
 「高校生以下をうちだけ無料にするということについては『仁和寺さんやったな』というのはあるかもしれないですけれど、京都の社寺がもっと修学旅行生や若い世代であふれてくれたらいいなと思っています」

 今回、龍安寺が決断した100円の値上げについて、観光客は次のように話します。

 (観光客)
 「観光に来て目的がはっきりしているので特段気にならないかなと。『600円になったからやめよう』とは思わないかなと」
 「良心的だと思いますけどね、100円しか上がらないのは」

 室町時代から続くわびさびの世界を今に伝える龍安寺。苦渋の決断は春からの拝観者にどのように受け止められるのでしょうか。