15日午前、群集の中から岸田総理の立つ方向へ投じられた「爆発物」。周りにいた警察官やSPよりも早く、木村隆二容疑者を取り押さえにいったのは、近くで目撃していた地元の漁師たちだった。3人の海の男に話を伺うと、“とっさの判断”で男の行動を制していた。
1人目「ヘッドロック」で取り押さえた男性(54)
―――当時、どれくらい人数がいたんでしょうか。
200~300人は居てたな。演説を聞くのに前に行こうとしたら、その人(容疑者)がもの投げたのを見て、こいつ何を投げたんかな、と見たら、まだ手元でなんかやっているのが見えて、まだ持ってたんで、取り押さえた。
―――男の近くにいたのでしょうか。
ななめ左前に、2mくらいの距離にいて、もの投げたのを見た。銀色と言われてるけど、こっちからは、「折りたたみ傘」くらいの黒っぽいものに見えたわ。
―――火をつけていたのか。
それもわからん。放ったのを見ただけで火つけてほったのか どういう形か それは知らんで。とりあえず 爆発したのは時間差で。SPが来て、離れた時に爆発してると思う。
―――取り押さえた最初の人ですね。
そうやな。横から 首にヘッドロックをかけた感じ。左手でヘッドロックかけながら、右手で容疑者が持ってるもんを振り払ったと思うわ。男が持ってるもんを見たんで それを振り払おうとしたわ。そのときは無我夢中で 覚えてなかったけのお、映像みたらそういう仕草してますわ。
手元に持ってるもんは、爆発物とか、そんなこと考えることないやん、ほってるものが爆発してないから、とりあえず手元に次のもん持ってるって感じだったので抑えたという感じや。
―――男は抵抗したか。
全然抵抗なし。体に力は入ってなかったな。ひ弱な感じ
―――岸田総理から電話があったと聞きました。
ありました。「本当にありがとうございました」って内容が携帯で。
2人目 頭を取り押さえた漁師の男性
―――当時の様子を教えてください。
爆弾というか、払ってここに飛んできたからわかったんや。SPが払ったそれがここに飛んできたんや。総理にほったやつをカバンで払ったやん。2発目ほろうとしてたやつを捕まえたんや。
―――ひるまなかったか。
そんなんないよ。頭を押さえにいった、無我夢中やな。たかりに行かなアカンからな。
―――容疑者はどんな様子。
抵抗とかは無かった、ただ足はバタバタやってたけど。
―――目の前に爆発物が飛んできましたが。
爆発すると思ったもん でもせんかったからね。20cmくらいのパイプ、煙が出ていたな、導火線が燃えているような。
―――爆発した時は。
後ろを押さえて それでSPが来たんや「下がれ下がれ」と。下がった時に爆発した。1分くらいかかってたんちゃう? 1発目やったときに 爆発せんから2発目しかけたんちゃうかな。それで、つけようとしたときに最初の人間が飛びついた。
―――怖くなかったか。
怖いはないけど 爆発すると思ったら逃げなアカンと思うが、爆発すると思わんだろ。時間かかったからな。すぐ爆発したら俺らもケガしたかもしれない。
3人目は「脚を取り押さえた漁師の男性」
―――男性は最前列にいた。「カラン」と投げ込まれたものに気づき、逃げようと踵を返して後方に向かったが、知人の漁師が男を取り押さえる様子を目撃し、とっさの判断で確保に加わっていた。
僕は最前列で見ようと思っていて、岸田総理が前に歩いて来て、ちょっと喋った後、後ろを振りむいたときに「カランカラン」と上から「爆弾」が降ってきた。それを見て、僕は振り返って後方に歩いていった。
そしたら、(最初の漁師の男性)が取り押さえている人がおったので、僕もちょっと脚を押さえた。後ろに逃げようと思ったが、そういうことになってるなんて思ってもなかったから、こいつ絶対犯人やと思った、足をバタつかせていたから つかみに行った。最初は 離せみたいなことはしてましたけど あとはじっとしてました。
その時、まわりの様子は、ざわざわしていて、なかなかああいうときは 逃げようとしないんですね。怖かったですけど 野次馬根性で 見てようとしてたんちゃいますか。
―――投げ込まれる前の現場の雰囲気は。
初めて僕も岸田さんを目の前で見れるから 楽しみでした。雰囲気はみんなそんな感じで岸田さんが田舎に来てくれるから、って思いきや「カランカラン」ですからね。
―――火がついていたか。
煙ですね、導火線があるから、それに白い煙、花火みたいな感じで、すぐまずいと思いました。2-3m先あたりに落ちたので、爆発したら危ないと、すぐに後ろ行こうと思ったんですけど漁師さんが羽交い絞めにしていた人が後ろにおったから、「もう逃げてる場合ちゃうわ」とは思いませんでしたけど、すぐ行きました。
―――何も考えずにですか。
何も考えずにですね。去年、安倍(晋三)さんの事件があって、家で話しあってたんですよ。実際あの場にいたら自分って逃げるんかな、どうなるんかなという話をしていた。でも、まさかね。いっしょに取り押さえないという気がでてきて、怖さはあんまりなかったですね
―――起こったことについては。
ショックですね だいぶショックです。まさか地元でこういうこと起こるって、ショックしかないです。