「担当講師が指導を怠り留年した」などとしてタイからの国費留学生が京都大学を提訴しました。

 タイ国籍のパドゥンタム・ナッタポップさん(31)は、タイの日本大使館の推薦で日本の文科省から奨学金をもらい、国費留学生として3年前に京都大学大学院に入学しました。

 (パドゥンタム・ナッタポップさん)
 「日本とタイとのかけ橋になりたかったんです。いまだになりたいです。どうしてこういうことになったのか」

 子どものころから「公文」に通い、日本語能力検定は1級、漢字検定も2級を取得。日本の教育に関する研究者になりたいと留学を決めました。バンコクでの教育に関するイベントで、留学先として京都大学に興味を持ち、大学側の紹介で女性講師と知り合いました。

 (女性講師)
 「ぜひ京大に来ていただき、私があなたの研究を指導できればうれしいです。効率的に指導できると思います」

 女性講師は指導を約束。しかし…。

 (パドゥンタム・ナッタポップさん)
 「アドバイスを求めても浅いアドバイスとか、そういういろんなことが積み重なって」
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 論文のテーマは「東南アジアにルーツを持つ子どもの居場所に関する研究」。ナッタポップさんは女性講師に指導を頼みましたが、女性講師は「急用が入った」などと言ってゼミを休み、十分な指導が受けられませんでした。その結果、論文は不合格になりました。

 (パドゥンタム・ナッタポップさん)
 「どうして不合格だったのか。全身全霊で論文を書いたのになんで落ちたのか。コロナの中でできる限りの範囲で精一杯やったので」
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 文科省からの奨学金を打ち切られる中、留年せざるを得なくなったナッタポップさんは、大学のハラスメント窓口に相談。大学院の教授や弁護士らでつくる調査委員会が設置されました。そして、調査委員会は女性講師の指導放棄を明確に認定しました。

 【調査委員会による報告書より】
 「論文執筆の時期にゼミに出席せず、執筆状況の確認もしないなど、指導教員として当然果たすべき職務を行わなかった。指導放棄があったと認められる」

 その後、京都大学側は150万円の示談金を提示しましたが、ナッタポップさんによりますと「修士の学位が欲しければ、この示談金で留年した分の授業料を支払うよう」京都大学側に求められたといいます。
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 示談には応じず、弁護士の働きかけでなんとか修士の学位を取りましたが、その後、精神的に落ち込みタイに帰国しました。そして今年4月、ナッタポップさんは京都大学と女性講師らを相手取り、精神的苦痛を受けたとして約1300万円の損害賠償を求めて提訴しました。
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 (パドゥンタム・ナッタポップさん)
 「将来可能性のある留学生に対してもそういうふうなことが生じないように法律に任せないといけないです。複雑な心境なんですけれども戦わないといけないです。だから恐れません。1歩も引かないと思います」

 京都大学は取材に対して「個々の質問への回答は差し控える」などとコメントしています。