世界が注目する超高級バナナ。家庭で多く食べられるバナナの多くがフィリピンなどからの輸入品ですが、そんな中で注目されているのが『皮ごと食べられる京都産バナナ』です。
超高級な京都産「はんなりばなな」とは
きれいな黄色に熟したこちらのバナナ。一見、普通のバナナに見えますが、皮ごと食べられるんです。
(皮ごとバナナを食べた人)
「ちょっと待って!ほんまに食べられる!」
「おいしい!」
そのまま食べるだけでなく、京都にあるカフェ「ブルーブックスカフェ京都」ではパンケーキに使われ、今年6月にはこのバナナを皮ごと使ったジュース店「It's banana?」もオープンしました。
そのバナナの名は「はんなりばなな」。お値段はなんと5本で6480円!この価格にもかかわらずオンライン売り上げは去年の2倍以上。最近では世界も注目するバナナなんです。そんな超高級バナナは一体どのようにつくられているのか?生産する京都のバナナ農家に密着しました。
2年前から「はんなりばなな」の栽培を始めたのは京都市の奈佐貴之さん。京都府亀岡市のビニールハウスの中には立派に実ったバナナの他に何やら見慣れないものがありました。
(奈佐貴之さん)
「これはバナナの最初の段階というか、ここの部分がバナナハートっていうバナナの花の部分になりまして、これが1枚1枚めくれるんですけど、この中に小さいバナナ、成長前のバナナが入っています」
1つの木に1つだけできるという大きいバナナの花。バナナの実は全てこの中でできるって知っていましたか?
(奈佐貴之さん)
「最初バナナっていうのは下に向いて出ているんですけど、そこから太陽に向かって上を向いていく感じなんで。なのでバナナって曲がったような形になっています」
苗の状態から約1年かけて収穫できるまでに成長するバナナ。ハウスには140株あり、1株で200本ほどが実ります。収穫したもの1週間ほど熟成させることで黄色く甘いバナナに。徹底した温度管理など手間暇を惜しまず育てられた結果、はんなりばななは糖度27度の甘さになりました。一般のバナナは糖度21度ほどです。さらに…。
(奈佐貴之さん)
「農薬も使っていないですし、すごく皮が薄い」
そのため皮ごと食べられる京都初のバナナなんです。一般的な輸入バナナの皮と比べてみてもご覧の通り。一般的な輸入バナナの皮は約4mmなのに対して、はんなりばななの皮は約1mmで、皮が断然薄いのがわかります。ちなみに皮にも栄養素が多く、ポリフェノールは実よりも豊富に含まれているそうです。
普段は建設会社の従業員…コロナ禍で「国産バナナ」に商機を見出す
現在では年間3万本ものバナナを栽培する奈佐さんですが実はもう1つの顔があります。
(奈佐貴之さん)
「うちは建設会社もやっているんですけど、お客さんから依頼のあった見積もりをつくっています」
普段は家族が経営する建設会社の従業員。バナナ栽培を始めたのは新型コロナウイルスがきっかけでした。建設業界にも大きな影響が及ぶ中、建設以外で「何か新しいことはできないか」と考え、疫病にも左右されにくそうな食材、そして競合が少ない国産バナナに商機を見出し、農業未経験ながらバナナ農園を営むことを決意したのです。
当時を振り返り、妻の理恵さんは次のように話します。
(奈佐貴之さんの妻・理恵さん)
「ほんまにできるんかなって。バナナは南国のイメージがあったので。珍しいことがしたいとか新しいものが好きみたいな感じやから、さすがやなって思いました」
その後、鹿児島のバナナ農園に出向き、バナナづくりのノウハウを一から学んだ奈佐さん。1年目は大雨による水害に遭うなどしましたが、2022年5月にようやくいまのバナナが実りました。
木や葉は動物園でエサに「他の木よりもおいしいのかも」
バナナの収穫時期はだいたい年に1度。1つの木に1度しか実をつけない為、収穫が終わった木は伐採します。伐採された木や葉はそのまま捨てられることはなく、とある場所へ運ばれて行きます。
やってきたのは京都市動物園。実は動物たちのエサとして寄付しているんです。
週に1回のこの日、特に楽しみにしているのがアジアゾウ。水分の多いバナナの葉や木が大好物だそうで、長い鼻を器用に使いながら次から次へと口の中へ運んでいきます。
(京都市動物園 荒蒔祐輔さん)
「やはりおいしいのか、真っ先に食べにくることが多いですね。バナナの木はとても大きいので、少しずつ剥きながら食べたり、ゾウたちも楽しみながら食べてくれていると思います。(Q5本で6000円超のバナナの木はおいしい?)そうですね。もしかしたら他のバナナの木よりもおいしく感じているかもしれないですね」
食品卸の展示会に「はんなりばなな」出展…バイヤー『中国なら2倍の値段で売れる』
今年5月に京都市で開催された食品卸の展示会「MINATO EXPO 2023」。イベントにはホテルや飲食店関係者など計1500人ほどが集まりました。
そこに奈佐さんの姿がありました。さらなる知名度向上に向けて「はんなりばなな」をPRしようというのです。物珍しい皮まで食べられる京都産バナナに多くの人が興味を示します。
(バイヤー)「なんかリンゴの皮みたいな感じ。シャキシャキしていますね」
2人は中国やシンガポールに向けて京都の食材を買い付けているというバイヤー。「はんなりばなな」に大きな可能性を感じたようです。
(バイヤー)「海外にはまだ出ていないんですか?」
(奈佐さん)「そうですね」
(バイヤー)「これは高いですか?」
(奈佐さん)「うちのオンラインで販売してるのは5本入りで6000円くらいします」
(バイヤー)「農薬とかは?」
(奈佐さん)「農薬は使っていないです」
(バイヤー)「使っていない?無農薬?全く?」
(奈佐さん)「そうです」
(バイヤー)「そこは中国でも売れるんですよ。もう倍くらいの値段で中国で売れるんじゃないですか。富裕層向けの商品なので。社長、海外に行かないとダメですよ」
(奈佐貴之さん)
「海外のバイヤーさんやったので、今後世界にもうちのバナナが広まればよりうれしいと思います」
京都初の皮まで食べられるバナナ。今後は『世界が誇るバナナ』へと飛躍するかもしれません!