咳止めなどの薬不足が問題となる中、命にも関わる薬が品薄になっているといいます。それは糖尿病患者用の薬。“やせ薬”として話題となり、ダイエット目的で使用する人が増えているのです。薬局は「本当に必要な方に薬が回らない」と危機感を抱いています。

糖尿病の薬が足りない!薬局「いつ入ってくるかわからない」

 10月19日、大阪市東淀川区にあるコスモスミルフィー薬局で話を聞きました。

 (コスモスミルフィー薬局 宮田憲一薬剤師)「処方どおりに全て渡せないという現状が出ていますね。『GLPー1』、こちらが入ってこない状況になっております」

 この薬、本来なら前日に発注すれば翌日には届くといいますが…。

 (宮田憲一薬剤師)「発注をかけると、(パソコンの画面に)『調整品』と出ていますね。出荷調整がかかっているもので、次にいつ入ってくるかも詳しくわからないです」

 今、足りなくなっているのは「GLP-1」という薬。糖尿病患者の血糖値を下げるために使われます。こちらの薬局には、10月19日朝の時点で約20本の在庫がありましたが、いつも処方される患者用で、新規の患者にはなかなか処方できないといいます。一体なぜ糖尿病の薬が不足しているのでしょうか?

 (宮田憲一薬剤師)「ネットでもだいぶ騒がれていますけど、美容として“やせ薬”、肥満の方の“やせ薬”ということなんですけれども」

 食欲を抑える効果があるため、「簡単にやせられる方法」としてネットで紹介されるなどして使用する人が増え、品薄になっているというのです。

 ネットで検索してみると、次のような文言も出てきます。

 『食事制限・運動不要』
 『我慢も、無理もいらない』

 自由診療のため費用は様々で、1か月分で5000円~8万円と多岐にわたります。

実際に使った人「1週間ちょっとで3kg減った」 その一方で…

 実際にダイエット目的で使った人に話を聞いてみました。

 (20代女性)「1週間ちょっとで3kgくらいは減りました。(Q興味をもったきっかけは?)インスタグラムでインフルエンサーさんとか、いろんな人が飲んでいるなというのもあって興味で飲んでみたいなというのがきっかけです」

 錠剤タイプの「GLP-1」を1日1錠、飲むだけで体重はみるみる減りました。一方で…。

 (Aさん)「内服して数十分、1時間たたないくらいに、冷や汗とか吐き気とか、耳鳴りとかめまいとかも起きていた。ずっと体調が悪いのもしんどかったので、(処方された1か月分のうち)2週間分くらい飲んで、あとは飲まなくなりました」

 飲むのをやめてからも、体調不良は2か月ほど続いたといいます。

 必要な人に必要な分さえも処方できないことに、薬剤師の宮田さんは危機感を感じています。

 (宮田憲一薬剤師)「例えば患者さんに8本処方が出ていても、在庫が3本しかない場合、3本全部渡すとゼロになってしまいますので2本を渡して1本置いておいて。やせるからといって安易に使ってもらうと本当に必要な方に薬が回らない。一番それが困るんですよね。(Q本当に必要な方に回らなくなる事態が近づいている?)かもしれない。それも十分あり得ると思います」