聴覚障がいのある女の子が重機にはねられ死亡した事故、運転手らに損害賠償を求めている裁判の控訴審が始まりました。父親は「法の高い壁を乗り越えた前例のない結果を望んでいます」などと話しました。

事故は5年前、大阪市生野区で歩道に重機が突っ込み、近くの聴覚支援学校に通っていた井出安優香さん(当時11)が亡くなり、4人が重軽傷を負いました。その後の刑事裁判で、重機を運転していた男は危険運転致死傷などの罪に問われ、懲役7年の刑が確定しています。

両親は、重機を運転していた男と勤務先の会社に対して約6100万円の損害賠償を求めて訴えを起こしました。

1審・大阪地裁で行われた裁判では「井出さんが将来得られるはずだった収入(逸失利益)」が、障がいを理由に減額されるかが争点になりました。被告側は「聴覚障がい者の平均賃金で算出すべき」だとし、両親側は「聴覚障がいへの差別だ」と主張。

「聴覚障がい者の収入は全労働者の平均と同程度であったとはいえない」
しかし今年2月27日、1審・大阪地裁は「将来的に様々な就労の可能性があった」としながらも、「聴覚障がい者の収入は全労働者の平均と同程度であったとはいえない」などとして「逸失利益が全労働者の85%にあたる」と判断。男と会社に約3700万円の賠償を命じましたが、両親側は不服として、控訴していました。

「聴覚障がい者の収入は全労働者の平均と同程度であったとはいえない」

しかし今年2月27日、1審・大阪地裁は「将来的に様々な就労の可能性があった」としながらも、「聴覚障がい者の収入は全労働者の平均と同程度であったとはいえない」などとして「逸失利益が全労働者の85%にあたる」と判断。男と会社に約3700万円の賠償を命じましたが、両親側は不服として、控訴していました。

「差別にあたる」公正な判決を求め署名提出

20日から始まった控訴審を前に10月13日、安優香さんの父の井出努さんと「大阪聴力障害者協会」は1審の判決について「差別にあたる」として大阪高裁に公正な判決を求め1万510筆の署名を提出しました。

(父・井出努さん)
「娘を失った気持ちは今でも変わりません。結局1審の裁判は差別で終わったので、とにかく認めてもらいたいです」

10月20日に開かれた控訴審の第1回目口頭弁論で、井出さん側は1審判決の逸失利益の算出方法について「差別が織り込まれた聴覚障がい者の平均収入を前提していること自体が間違い」と主張。一方、被告側は訴えを退けるよう求めました。

「来年は娘の7回忌」

(父・井出努さん)
「来年は娘の7回忌にあたります。1つの節目として来年こそはいい結果で裁判を終えてほしいという思い。法の高い壁を乗り越えた前例のない結果を望んでいます」

次回の裁判は来年1月23日の予定です。