“関西の雄”は果たして…。例年は関東の大学のみで開催されている箱根駅伝。第100回記念大会となる来年は全国の大学に門戸が開かれました。箱根駅伝出場の切符をつかむべく予選会に挑んだ立命館大学の陸上部に密着しました。

高校3年時に全国高校駅伝のメンバー争いに敗れる 箱根駅伝への強い思い

 滋賀を拠点に練習に励む立命館大学・陸上競技部。関西学生対抗駅伝で27回の優勝を果たすなど、「関西の雄」といわれています。その駅伝チームが新たな扉を開こうとしています。来年1月に開催される「箱根駅伝」。例年は関東限定の大会ですが、第100回大会は全国に門戸が開かれることが決定。予選会の参加へ立命館が一番に名乗りをあげました。
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 エースは山崎皓太選手(20)。箱根駅伝に強いこだわりがあります。

 (山崎皓太選手)「真っ先に箱根駅伝に挑戦したいですと。その一言に尽きるかなと思うんですけど。一度しかないチャンスを挑戦しない選択肢はないだろうって自分の中では思いました」
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 中学生の頃から長距離走を始めたという山崎選手。
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 全国大会に出場するなど、すぐに頭角を現すと強豪の洛南高校(京都府)に進学し、全国の舞台で活躍することを夢見ていました。ところが、3年生のとき全国高校駅伝のメンバー争いに敗れ、補欠に回りました。

 (山崎皓太選手)「チーム内のメンバー争いに勝てなくて、そこの悔しさもありますし、3年間ずっと目標にしてきた大会を走れなかったというのも悔しさがあって、やっぱり大学でもう一度リベンジしていきたいなと」

壁は“1人あたりの走行距離の長さ” 長距離に対応できるチーム作りが必要

 その思いの中で巡ってきた、自力で大舞台・箱根への出場をつかみ取るチャンス。しかし、関西から箱根を目指す道のりは険しいものです。本選出場の条件は、ハーフマラソンの距離21.0975kmを一斉に走り、上位10人の合計タイムで57校中13校に入ること。これまで立命館が参加した駅伝と比べると、箱根駅伝の予選会では1人あたりの走行距離が10km以上長くなります。関東以外の大学は長距離に対応できるチームを作らなければなりません。

 【大学三大駅伝】
 ・出雲駅伝:6区間 1区間の平均距離:7.5km
 ・全日本大学駅伝:8区間 1区間の平均距離:13.3km
 ・箱根駅伝:10区間 1区間の平均距離:21.7km(予選会もほぼ同じ距離)

 また、去年の予選会を突破した大学の選手のほとんどは10km走で30分を切りますが、立命館は山崎選手を含めわずか3人。関東の強豪校との実力の差は大きいものです。

「かなり練習が変わってくる」当初は参加に反対する意見も

 当初は参加に後ろ向きの意見も。主力のひとり、大森駿斗選手(21)も反対したといいます。

 (大森駿斗選手)「長距離っていうのは土台を作っていくんですけど、土台っていうのは1日2日でどうにかなるものでもないですし、やっぱり月単位とか年単位で見ていくものだと思います。箱根予選会の前に全日本インカレとかありますし、出雲駅伝とかもあって、そちらの方に注力すると考えたら、かなり練習が変わってくるので」

 それでも、話し合いの中で、突破できるかどうかではなく挑戦したい気持ちを大事にしようと“箱根参戦”を決めました。

標高1000mの地で合宿 箱根駅伝常連校の姿も

 8月、立命館の選手たちの姿は新潟県妙高市にありました。長距離を走り抜く体を作るため標高1000mの準高地で合宿をはります。
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 朝6時、10kmを全員でまとまって走り、チームの底上げを図ります。山崎選手は先頭を走り、仲間を引っ張ります。
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 (立命大 田中裕介コーチ)「かなり暑い中で蒸している中ですけど、こういう中で予選会も行われていくと思うので、全員でやりきるというところを目指して頑張っていきましょう」
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 午後はタイムごとに分かれ、自身の体を限界まで追い込みます。同じ場所で合宿をはる、箱根駅伝常連校の走りを間近に見て、練習にも力が入ります。今年の8月は例年より1人あたり50km多い750kmを走りこみました。

 夕食の話題も専ら箱根駅伝です。

 (山崎皓太選手)「(箱根駅伝を走るところを)想像しない?」
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 (中田千太郎選手)「山登っている…登るじゃないわ走っているところ、下りであれ登りであれ、箱根の景色を見てみたいなっていうのはありますね」
 (山崎皓太選手)「箱根の山登りでパアっと快走して、ラストに先頭の選手を抜いてゴールしているイメージは完璧です」
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 一方、参加に反対していた大森選手は、慣れないハーフマラソンに不安を感じていました。

 (大森駿斗選手)「やっぱり自分ハーフ苦手なんで、ハーフ苦手で予選会(体力が)もつかなとけっこう不安」

 高校時代、補欠に回り悔しい思いをした山崎選手。「箱根駅伝に出たい」その思いが彼を走らせます。

 (山崎皓太選手)「関東の大学で活躍している選手(洛南高校の同級生)を見て、自分自身もその舞台に立てたらいいのになと思ったこともありますし、やっぱりそういった選手に勝ちたいなとも思いました」

予選会当日 立命館の順位は…

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 そして10月14日、迎えた予選会当日。会場は独特の熱気に包まれていました。

 スタートの合図とともに、665人が一斉にスタート。出場校は57校、この中で13位に入らなければなりません。

 強豪校に囲まれながら力走する山崎選手。箱根予選会に反対していた大森選手は立命館チームの先頭を走り、タイムを稼ぎます。

 留学生の集団が抜け出した15km地点、先頭集団の背中は遠いままですが、大森選手はトップから2分14秒遅れで通過。山崎選手も粘り強くトップと2分56秒差で通過。そして、大森選手が立命館唯一の2桁順位89位でゴール。タイムは1時間3分49秒、トップとの差は3分33秒でした。

 トップから遅れること4分28秒、山崎選手が1時間4分44秒でゴール。2人とも、自身が持つハーフマラソンの記録を更新。最後まで走り抜きました。

 そして迎えた結果発表のとき。

 (結果発表の様子)「第1位、大東文化大学」

 次々と順位が発表され…本選に進めるのは残り一枠。

 (結果発表の様子)「第13位、山梨学院大学」

 立命館大学は34位。箱根の切符を勝ち取ることはできませんでした。

山崎選手「一生に一度の成長の場だった。やり残すことなく走れた」

 (大森駿斗選手)「まあやっぱりしんどいなと思いましたけど、楽しく走れたので良かったかなと思っています」
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 (山崎皓太選手)「自分にとって予選会は、一生に一度の成長の場だったのかなというふうに思います。本当に二度と走ることのない予選会で、やり残すことなく最後出し切って走れたので、本当に今回走って良かったなと思えるような大会でした」

 立命館大学。一生に一度の夢の舞台を目指した経験を糧に、次の目標へ走りだします。