兵庫県の三田市民病院の再編統合計画をめぐる問題。再編の「白紙撤回」を公約に掲げて当選した市長と、市長の“煮え切らない”発言に怒る市民。10月22日、計画をめぐり両者が直接対話する意見交換会が行われました。
これまでの経緯 公約めぐる市長の説明に疑問の声
「なんでそんなことするんですか!」
「選挙やり直してくださいよ!」
10月22日、兵庫県三田市で開かれた市長と市民の意見交換会。会場は紛糾しました。その理由は三田市民病院の再編統合計画です。
三田市民病院は19の診療科を持つ市内唯一の公立病院で、24時間対応の救急外来を構え、市内の救急搬送の6割以上の受け皿となっている地域の中核病院です。しかし、医療の維持・充実やそれに伴う医師不足、設備の老朽化などの課題があり、6年前から、病院を再編統合する議論が進められ、三田市などは去年、隣接する神戸市北区にある済生会兵庫県病院と統合させて約5km離れた場所に移転することを決めました。これに対して市民からは「救急搬送が間に合うのか」「アクセスが悪い」などといった不安の声が上がっていました。
そんな中、7月に行われた市長選挙で当選したのは、病院移転の「白紙撤回」を公約の1つに掲げた田村克也さん(57)。
ところが、9月に行われた三田市議会一般質問では…。
(田村克也市長)「公約に掲げた白紙撤回は、情報公開をしっかりして市民の声を聞いて納得を得る。これは市民に対しての私の約束なんです」
田村市長は「白紙撤回とは、再編統合を取りやめるのではなく、市民に情報を広く伝えること」と説明。すると市議からは次のような指摘がありました。
(水元サユミ市議)「辞書などを見ても、『白紙撤回』とは一度決まった事柄を何もなかった元の状態に戻すことの意味とあります」
(田村克也市長)「辞書では…辞書では白紙撤回という、辞書と公約、法的根拠含めて、私は理解は多少というか大きく違っていると思います」
田村市長は「自分にとっての白紙撤回は辞書の定義とは違う」と弁明したのです。
再編統合の『反対派』からは怒りの声 『賛成派』も十分な説明を要望
そして10月22日に初めて行われた、市長と市民が直接対話する意見交換会。再編統合に反対する市民からは怒りの声が上がりました。
(反対派の市民)「投票した市民が望んでいるのは会議ではありません。公約実行です」
(反対派の市民)「まず白紙撤回を撤回するのか撤回しないのか、ここを明確にしてほしい。もし白紙撤回を撤回するような話になるんやったら、選挙やり直してくださいよ。当然でしょ」
(田村克也市長)「白紙撤回を…まあ、いわゆる公約は『地域医療の充実化』でありますということのプロセスで、白紙撤回を公約に掲げた内容については別に私は言っていないというつもりはございません」
市長は、「地域医療の充実化が公約であり、カッコ書きにした『白紙撤回』はあくまでプロセスである」と弁明しました。
(田村克也市長)「白紙撤回が最終目標ではありませんという話をしたとおり、地域医療の充実化のプロセスでの白紙撤回というところを、それは公約を変えたということですか?私が。白紙撤回の撤回をしたということをおっしゃっているんですか?私が?ちょっと理解できないんですけど…」
(反対派の市民)「市長の言っていることも理解できないです」
一方、病院の統合に賛成する市民からも十分な説明を求める声があがりました。
(賛成派の市民)「白紙撤回で完全にやり直しということはできないだろうと思いますし、多くの市民が納得できる説明をもういっぺんきちんとしてもらって」
(賛成派の市民)「方針転換はその都度、思っていること考えていることは皆に伝えてほしいし、もし謝るべきことがあればごめんねって謝ったらええと思うし、ちゃんと知らせてください」
市長「いったん立ち止まるというところについて市民に改めてお伝えしたい」
意見交換会の終了後、改めて市長に「白紙撤回」の真意を尋ねると、次のように説明しました。
(田村克也市長)「現に再編統合についてのプランニングのところでは全部止めていますので、私の理解としてはいったん立ち止まるというところについて市民に改めてお伝えしたい。(Qすでに白紙撤回は済んだと思っている?)選挙の時と市長になってからの情報ももちろん違いますし、なかなか全てが整って公約が実行されるケースとされないケースがあるという理解はしております。極力私ができる限りのことを尽くして、納得感を得られるように動く、これしかないと思っています」
今後、意見交換会は11月20日まで計37回実施される予定で、市民との丁寧な対話が求められています。