紅葉が見ごろになると、食べたくなるのが秋の味覚「銀杏(ぎんなん)」です。茶碗蒸しに入れたり、炒って酒のアテにするなど、様々な味わい方ができますが、その入手方法と言えば、スーパーで買うだけではなく、落ちているギンナンを拾って、持ち帰った経験がある人も多いのではないでしょうか。

 そもそも、落ちているギンナンは勝手に持ち帰っても大丈夫なのでしょうか。「アディーレ法律事務所」の長井健一弁護士に話を聞いてみると思わぬ回答が。何の気なしにギンナンを持ち帰ってしまった場合でも、犯罪が成立する可能性があるといいます。

 長井弁護士「公園や公道に落ちているギンナンを無断で持ち帰ってしまうと、遺失物等横領罪や窃盗罪に該当してしまう可能性があります。」

 では、落ちているギンナンは誰のものなのでしょうか。

ポイントは所有権を放棄しているか

 民家の庭に落ちているギンナンが民家所有者のものであることは明確ですが、公園の木や、街路樹から落ちたギンナンは、誰が所有者になるのでしょう。

 長井弁護士「落ちているギンナンの所有者は、民法88条、89条より、そのギンナンがなっていた木の所有者とされています。すなわち、公園や公道に落ちているギンナンはその場所を管理する自治体の所有物ということになります。」

 なるほど。それでは公園や道端のギンナンを拾っている人は、全員が罪に問われるということになるのでしょうか。

 長井弁護士「自治体が所有権を放棄している場合は犯罪とはならず、拾った人が所有者となります。」

 民法89条では、「天然果実(この場合ギンナンのこと)は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する」とあり、収取する権利を有する木の所有者(自治体)が実の所有者になるとされていますが、他の法令に反しない限り、所有権は放棄することができると考えられています。したがって、木から落ちたギンナンの所有権を自治体が主張していない場合には、拾っても持ち帰ってもよい、というのが長井弁護士の見解でした。

木の上にあるギンナンは「ダメ」

 ただし注意が必要なのは、木になっている状態のギンナンは無条件で自治体の所有物なので、「きれいなギンナンが欲しい」などと言って、叩き落としたり、手でちぎってから、持ち帰るのは法に触れる可能性が高いです。

 長井弁護士「実際に、無断で持ち帰ったからといって罰せられる可能性は低いと思いますが、事前に自治体に確認するというのが最も確実な方法です。所有権を放棄しているかどうかを、自分で見て判断することは難しいので、直接聞いてみるのが良いと思います。」

 ということで、自治体に直接聞いてみました。大阪を代表する「御堂筋」では、色づいたイチョウ並木が秋の風物詩となっています。この『御堂筋沿いに落ちているギンナンを持ち帰ってよいのか』大阪市の担当者に聞いてみました。すると驚きの回答が。

御堂筋のイチョウは全972本

 大阪市によりますと、御堂筋にあるイチョウの本数は、阪急前から梅田新道(77本)、梅田新道から淀屋橋北詰(68本)、淀屋橋南詰から船場中央3(348本)、久太郎町3から新橋(210本)、新橋から難波西口(269本)の合計972本あり、ギンナンのなる雌樹は256本あるということです。

 この、御堂筋沿いに落ちているギンナンは、勝手に持ち帰ってよいのでしょうか。

 (大阪市建設局公園緑化部)「御堂筋のイチョウを含め、市が管理する公園や公道に生えているイチョウから落ちたギンナンを持ち帰ることはご遠慮いただいております。」

 大阪市ではギンナンを勝手に持ち帰ることは禁止されています。ただ、年に1回、11月前半に御堂筋で採れたギンナンの配布イベントをしているので、そこで市民の皆さんに楽しんでほしいとのことでした。残念ながら今年は11月3日に終了してしまいましたが、用意した400袋がすぐになくなるほどの人気ぶりだったそうです。

 この時期、なんだか食べたくなる秋の味覚「ギンナン」。皆さんもぜひ、正しい手順で手に入れてください。そして食べ過ぎにはご注意を。