国立成育医療研究センターなどの研究チームは、生まれたときの体重と、大人になってからの生活習慣病との関連を調べる研究を行い、結果を21日に公表しました。低出生体重が生活習慣病のリスク因子になることは、ヨーロッパなどの疫学研究で指摘されていましたが、日本人対象の大規模調査で明らかになったのは、初めてということです。

40~74歳の約11万人を調査

 センターによりますと、研究は40~74歳の約11万人を対象に実施。居住地域は、次世代多目的コホート研究の対象地域である秋田県、岩手県、茨城県、長野県、高知県、愛媛県、長崎県に居住する人々でした。

 自身の出生時の体重を自己申告し、心血管疾患および生活習慣病(高血圧・糖尿病・高脂血症・痛風)にかかったことがあるかを回答。研究チームは結果を体重別に4つのグループに分け、それぞれ病気の発生率を調べました。

 その際排除した要素として、地域や教育歴、高血圧や糖尿病の家族歴、受動喫煙年数など、与えうる別の影響を、統計学的に取り除いて、「調整有病率比」を算出したということです。

判明した、出生体重と生活習慣病との関連

 結果、心筋梗塞や脳梗塞など「心血管疾患」では、出生時3キロ台の人に比べて、出生体重2.5~3.0キロ未満で1.07倍、出生体重1.5~2.5キロ未満で1.25倍、出生体重1.5キロ未満の極低出生体重児だったグループで1.76倍高いことがわかったということです。

「高血圧」では、出生時3キロ台の人に比べて、出生体重2.5~3.0キロ未満で1.06倍、出生体重1.5~2.5キロ未満で1.08倍、出生体重1.5キロ未満の極低出生体重児だったグループで1.29倍高くなりました。

 「糖尿病」では、出生時3キロ台の人に比べて、出生体重2.5~3.0キロ未満で1.08倍、出生体重1.5~2.5キロ未満で1.26倍、出生体重1.5キロ未満の極低出生体重児だったグループで1.53倍高いことがわかったということです。(いずれのグラフも、国立成育医療研究センターの資料より)

そもそもなぜ調査を?この研究で何がわかった?

 背景にあったのは、日本では1980年代から2000年にかけて、低出生体重児の割合が約2倍に増加し、その後も高止まりしていること。

 すでにその世代が40歳を超え、生活習慣病を発症しやすい世代になっていく中、日本人でも小さく生まれた人に、生活習慣病の発症リスクがあるのかを明らかにする研究が求められていたということです。

 センターの研究者は、「ヨーロッパを中心とした研究で指摘されていた、出生体重と生活習慣病との関連を、日本人ではじめて調べ、結果、日本人においても発症しやすいことが明らかになりました。」とコメントしました。

 重ねて、「今後は幼少期からの生活習慣への介入など、低出生体重児として生まれた方々の成人期の健康を最適化する研究が必要です」。また、「低出生体重による出産を予防するために、母親の健康と適切なケアも必要です」などともコメントしています。

 研究成果は、今月18日に疫学系の専門誌「Journal of Epidemiology」に掲載されています。