海遊館のアイドルが引っ越しです。輪のような斑点模様が特徴のワモンアザラシ。繁殖が難しく、飼育しているのは国内で4か所だけです。そんな中、大阪・海遊館で飼育されているワモンアザラシのミゾレちゃんが、繁殖のために北海道・おたる水族館に引っ越しすることが決まりました。約1000kmの引っ越しの様子を密着取材しました。
ワモンアザラシの未来のため…海遊館のアイドルが北海道へお引っ越し
大阪を代表する観光スポット「海遊館」。こちらでアイドル的な人気を誇る動物がいるのをご存知ですか?
つぶらな瞳、丸いフォルム、ワモンアザラシのミゾレちゃん(オス・2歳)です。実は毎日放送とも縁があり、ミゾレが生まれるまでの70時間を密着取材していました。
そんなミゾレが誕生したのはコロナ真っ只中だった2021年4月1日。生まれたばかりの頃は白い毛で覆われ『天使すぎるアザラシ』としてSNSでも話題に。
しかし、生まれた時は命の危険もありました。低体温症と判明したのです。命を最優先する決断をして、日本初の人工哺育で育てることになりました。その甲斐もあってミゾレはみるみる元気に。訪れる人たちに癒しを与える海遊館のアイドルになったのです。
(ファン)「ちょこちょこ見に来て。赤ちゃんの時に一目ぼれして。きょうは夜勤なんですけど早起きして来ました」
(ファン)「東京から来ました。今月も3回目くらいです。ファンサービスがすごくて、とにかく寄ってきてくれる。(自分が)かわいいのがわかってるよみたいな感じで来てくれるのもかわいくて」
そんなミゾレに大きな使命が託されることに。ワモンアザラシの未来のために、パートナー候補がいる北海道の「おたる水族館」へ引っ越しすることが決まったのです。
(ミゾレ担当飼育員 竹内慧さん)「11月下旬に北海道のおたる水族館へ引っ越しすることが決まりました。ミゾレを含めたワモンアザラシ自体が国内でも飼育展示している施設が非常に少ない。その中で今後ワモンアザラシの展示が国内から無くなってしまう可能性があるので、他の水族館で繁殖させてワモンアザラシの持続的な展示を目指していこうという取り組みです」
ミゾレが過ごす最終日には、なんと9000人を超える人が海遊館を訪れました。最後の日までお客さんに癒しを送るミゾレ。
(竹内慧さん)「(Qミゾレ最終日を迎えて思うことは?)やっぱり僕としては寂しい気持ちはありますね。僕の私情を挟んでミゾレの幸せを奪うことは飼育員として失格だと思いますので、おたる水族館でも今まで通り元気に暮らしてくれたらなと思います」
ミゾレを木箱に入れて運ぶ竹内さん『事故のないように、命を最優先で』
そして引っ越し当日の11月28日、まだ日もあがらない午前4時に準備は始まりました。担当飼育員の竹内さんから1日の流れを再確認。
(竹内慧さん)「普段は僕らも引っ越しは頻繁にやる作業ではないし、ミゾレを運ぶのは初めてなので。事故のないように、命を最優先で頑張ろうと思っています」
まずはミゾレを外に出すため運搬用の箱にミゾレを移します。
(竹内慧さん)「ちょっとここからなんですけど、繊細な作業になりますので、撮影の方はご遠慮いただきたいと思います」
取材カメラに警戒するとうまく木箱に入ってくれない可能性があり、ミゾレを安心させるためにも見慣れたスタッフのみで行います。
そして、部屋に入って20分。スタッフたちが部屋から木箱を運び出します。
(竹内慧さん)「(Qこの木箱の中にミゾレがいる?)入っています。(Qおたる水族館まではこの中?)そうですね、やむを得ないんですけど、途中で開けることはしないです」
箱の中には水も入っていません。ミゾレにとってここからふんばりどころです。
(竹内慧さん)「いまは準備で箱をバタバタと動かしたので、ミゾレも落ち着いていないと思うので、しばらく車に積んだ状態で様子を見て、ミゾレが落ち着いている様子なら出発しようかなと思います」
(竹内慧さん)「落ち着きましたね、次は伊丹空港まで」
頑張るミゾレに航空会社からサプライズが!
そして車で走ること40分。到着したのは伊丹空港の貨物地区。
(竹内慧さん)「(Qどうやってミゾレを運ぶ?)ミゾレも動物なので通常の動物の貨物と同じ方法で運ばれる予定ですね」
動物を飛行機で運ぶときは専用のコンテナに積み込みます。
(竹内慧さん)「ミゾレ頑張れよ!頑張れ!」
初めての飛行機運搬に不安を感じる竹内さんたちに航空会社からステキなサプライズがありました。なんと、ミゾレへのメッセージカードのサプライズで、さらに手作りのミゾレ専用搭乗券も用意してくれました。
改めて多くの方から愛されることを感じつつミゾレも飛行機に搭乗。北海道まで約2時間、ミゾレ初めての空の旅です。
無事に北海道に到着…新環境で気持ちよさそうに泳ぐミゾレ
そして午前10時過ぎ、新千歳空港に到着。急いでミゾレの状態確認へ。
(竹内慧さん)「ここが一番緊張しますね。動いているのが見えましたね。大丈夫か?ミゾレ大丈夫か?もうちょっとやで頑張れ。元気そうですね、顔が見えています。良かったです」
そして車を走らせること2時間。ミゾレの新しい家となる「おたる水族館」に到着しました。朝から約8時間が過ぎ、ミゾレの引っ越しもいよいよ終盤。ミゾレは元気に出て来てくれるのでしょうか?
木箱を開けますが…初めて見る場所に戸惑っているのでしょうか、箱の中から出て来ません。
そして3分後、ミゾレは動き出し、水槽に入り泳ぎ出しました。新しい水槽も気に入ったのか気持ちよさそうに泳ぐミゾレ。
(竹内慧さん)「まずは引っ越し完了になります。ただミゾレにとってはこれからが本番になるのかなと思っています。しっかりエサを食べて大阪で暮らしていた時と同じような感じに戻ってくれたら。先の話になると思うんですけど、おたる水族館のメスと子孫を残してくれたらと思っています。まずはスタートラインに立てたということで、これからミゾレが頑張ってくれたらなと思っています」
ミゾレ、そして竹内さん、引っ越しお疲れさまでした。