政界を揺るがす、政治資金パーティーを利用した自民党の裏金疑惑。そんな中、かつて自民党の幹事長や石破派のトップを務めた石破茂衆議院議員が口を開きました。12月8日毎日放送「よんチャンTV」に出演し、松野博一官房長官の対応については「誠実な人だと思っているだけに違和感がありました」としながらも、事務総長でも「知らないことがあっても不自然ではないと思う」と話しました。

「松野さんは誠実な人と思っているだけに…答弁に違和感」

――松野博一官房長官が何を聞かれても、キックバックに関しては答えないということでしたがどのように答弁はご覧になっていましたか?

(石破茂 衆議院議員) 松野さんて人をよく知ってるわけじゃないんですけど、すごく誠実で、真面目な人です。その松野さんがああいう答弁しかできないのが、『これ何があるんだろうな』って思いました。他の閣僚はもうちょっと明確に答えていたように思うんです。新藤さんや西村さんも聞かれてました。松野さんだけえらく歯切れが悪い、明確に答えなかったのは、この人何があるんだろうって、人間的には誠実な人だと思っているだけに違和感がありました。

――その姿を目の当たりにして何で答えないと思われますか?

(石破茂 衆議院議員)わからない、わかるんだったら苦労はしない。本人だけの問題じゃなく、誰かに波及することを心配してるのか、全然わからないです。事務総長が全部を事細かに知ってるかっていうと、それは私も難しいところがあるんだと思うんです。

まして、安倍派は100人近い数がいるわけで、事務総長といっても国会議員ですから国会議員の仕事もしていれば、政府の仕事もしているわけです。選挙区にも帰ったりするわけですよ。事務総長は全部パーフェクトに知っているかというと、派閥によって違うんだけども、知ってないことがあってもあまり不自然じゃないと思います。

ノルマ以上の販売で「報奨金のようなものが行くのは不自然でない」

――派閥のパーティー券を売る場合にノルマがあって、ノルマ以上に売った場合は、キックバックがあり報告していないところに問題があるわけですが、これは実態としてはあったとお考えですか?

(石破茂 衆議院議員)あるんでしょう。ただ、安倍派の中身を知ってるわけじゃないので、断定はできないです。ノルマとかキックバックとか裏金にネガティブな響きがあるんですけれど、派閥としてみんなが資金を潤沢に持っているわけじゃないので、1年間回していくために、いくらの費用が要るかを計算して、最高幹部は例えば1000万円とか、閣僚経験者は500万円とか、目標額を配分するわけです。大臣や最高幹部は集金力があるでしょ、当選したばかりの人は売れないでしょう。ノルマというか目標はあります。

(石破茂 衆議院議員)目標より多く売った人は当然いますし、売れない人もいます。だけど、目標額より売った人に報奨金みたいな、そういうものが行くのはそんなに不自然なことではない。しかしそれがパーティー券を買った人にしてみると、派閥の運営費にきっと使ってくれるんだろうと思ってパーティー券を買ったところが、派閥に行かないで、議員個人にいっちゃいましたというと、出した側の意識とは差が出てきます。

収支報告書で「出と入りがはっきりすればいい」だけの話

(石破茂 衆議院議員)もう一つ、収支報告書にきちんと載せて、派閥の収支報告書にこれだけ入れました。余計に売れたから、その分は資金管理団体に戻しますよという、出と入りがはっきりしていれば、それでいいだけの話なんです。

たくさんパーティー券を買った人の言うことを聞くような、そんな政治してませんよねということと、誰がお金出してますかってことをはっきりして、それが政治活動費に使われてるってことさえはっきりしていれば、何もパーティーって違法な行為をしてるわけじゃない。

「安倍派が少ないと言うべきか、他の派閥が多いと言うべきか」

――派閥のパーティー収入をグラフにしました。最も所属議員数が多い安倍派が、収入は異常に少ない数字となっている。どんなふうな感想を持たれますか?

(石破茂 衆議院議員)何ででしょう、わかりません。安倍派が少ないと言うべきか他の派閥が多いと言うべきか、安倍派は安倍さんの影響力で当選した期数の若い人が多いのかもしれませんね。期数の若い人はそんなに売れません、私達だって当選1回の時には全然売れなかったですから。

――石破さんは若手の頃、ノルマが達成できなかった時はどうされていたんですか?

(石破茂 衆議院議員)派閥の幹部の方々、名前を言えばだれでも知っている派閥の幹部の方々が、50枚とか30枚とか買ってくださったんです。それは幹部が、直接買うわけじゃなくて、幹部がいろんな企業に振り分けて、当選1回目なら『パーティー券売れっこないよな。俺が50枚分、30枚分売ってやろう』ってことで、派閥の上の人たちが助けてくださいました。

石破氏は、政党へ支給される金では「賄えない」と即答

――石破さんは派閥に所属されてたこともあると思うんですが、政党に支給されるお金で政治を賄えないってことなんですか?

(石破茂 衆議院議員)賄えません。当選1回だった頃に滋賀県知事をやっていた竹村さん、あるいは鳩山由紀夫さんなど若い議員たちで、一体1年にいくらかかるんだって調べてみたことがあるんです。すると、今から35年前、当選1回生でも平均1年で1億円かかっていた。みんなでびっくりした。

――それは、政治をやるにあたって正当な理由でお金が必要なのであればそれを国民に示して、資金を計算し直すってことはできないんですか?

(石破茂 衆議院議員)その時に、何にいくらかかるんだろうってみんなで調べたんです。一番かかるのは秘書の人件費でした。ボランティアで働いてるわけじゃない。考えてみてください、東京に本社があって地方に支店が3つあって、従業員が15人いる中小企業をイメージしてください。その会社を1年間やるのにいくらかかりますか?

(石破茂 衆議院議員)支店の家賃、働いてくれる人の給料、電話代、ガス代、水道代、郵便代要ります。会合をやったら会場費を払わなきゃいけない、そういうのを積み上げていくと35年前でも1人1億円かかるんだってびっくりしました

――それを賄うのに、このパーティー券の収入でやらなければならないという構造は問題があるように感じるんですが?

(石破茂 衆議院議員)そのときに我々が提案したのは、3分の1は『自分で一生懸命稼ぎましょうね』ということだった。3分の1はパーティーや、企業献金をいただきましょうってことだった。3分の1は国民の皆様に、お1人様250円ずつご負担をいただいて、そういう分け方をしました。大体今そうなっていると思います。

――今の政治資金パーティーの問題っていうのを石破さんはどう捉えて、自民党にどういう影響があるとお考えですか?

(石破茂 衆議院議員)個人にしてみれば2万円はものすごい大金です。20万円以下は名前を出さないってことになってるわけですね。私は名前出さないけど、応援してるよって人がいらっしゃるわけで、『20万円超えたら大金だから、誰が出したかがわかるようにしましょう』いうことだったんです。それを、派閥と個人の財布って言うのかな、経理の中できちんとやり取りがわかるようにすることが大事なことだったと思います。これからもっと徹底しなきゃいけません。

(石破茂 衆議院議員)あとは利益率の問題。パーティーで2万円出して、ご馳走でるかなと思っていたら、水割り一杯だった、とかあるわけ。パーティーのお金は、飲食とかそういうものの対価をいただいてるのでございます、となっているけど、利益率98%などというと、「対価って言うのかい」っていう問題がありまして、出入りが明確になること、パーティー券買っていただいたら、ある程度「来てよかったな」って思いを持ってもらうのは、努力しなきゃいけないことだと思います。

岸田総理の『パーティ自粛方針』に石破氏「ダメと誰も言ってない」

――岸田総理は自身が岸田派のトップを退くとか、パーティーを自粛する方針を示していますが、総理の対応についてはどのように思いますか?

(石破茂 衆議院議員)だからねパーティーが駄目だなんて誰も言ってないんですよ。誰が出して、それがどこへ行きましたか、ってことを明らかにしてと言ってるのであって、パーティー自粛だとパーティーそのものが駄目みたいだと人々は思うじゃないですか。

(石破茂 衆議院議員)そうすると当選回数が若く、資金がない人たちは、今まで派閥でパーティーやってそこから支援してもらえると思ったのに、今度からどうしたらいいの?って話になりますよね。『パーティーが駄目なんじゃない、出と入りをきちんと明確にしてね』と世の中が言っているのに、パーティー自粛って何だ?忘年会・新年会を全部なぜやめるのがわからない。

――6日に自民党のトップが緊急会合を行い、各派閥からいろんな方々が来られてるんですけども、派閥に所属していない石破さんは今、この問題をどう見てるんですか?

「3人寄れば派閥できる…でも我々は私企業じゃない」

(石破茂 衆議院議員)人間3人寄れば派閥はできるんですよ。会社だろうと、大学だろうと、そういうものなんです。ただ我々は私企業じゃないので、国民から付託を受けて政治やってるわけです。それが国民の言うことよりも、金を出す人の意見聞くんじゃないのって思われちゃいけないので、誰がいくら出しましたか?どう使いましたかを明確にしましょうというのが政治資金規正法なんですよね。

(石破茂 衆議院議員)派閥は私はあっていい、ない方が不自然だと思っているんです。だけど、会社の派閥じゃないんだから、政策の勉強をちゃんとしようねってことが大事だと思うんです。自民党本部で会議やってるのは、来年の税制どうしようか、予算編成どうしようか、ということで侃侃諤諤の議論してるわけですよ。私国会議員になって38年目だけど、次の国会にはどの法律出すの、来年の予算どうするのっていう、目の前のことしか考えないところもあるんだよ。やっぱり派閥で、5年先、10年先、50年先のことを考えようっていう政策の勉強するのは大事なことです。

(石破茂 衆議院議員)「同じ思いを持った人たちが、みんなが選挙に強いわけじゃないんで、選挙にあんまり強くない人のところに応援に行こう、お互い助け合おうねってのも大事なことです。党がみんな面倒を見てくれるわけじゃないんだから。だからそういう意味での派閥はあっていい。だけどお金がどこから入って、どこに出ているのか全然わかりませんとか、政策の勉強もしてません、ということになると、これ何なんだろうねって人が思うことになる。だから人がそう思わないように私達は努力します。(2023年12月8日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)