子ども服の市場が“激変”しています。厚生労働省の調べでは、去年まで出生数は8年連続で減少していて、少子化が進行。子どもの数は減っているが、売らなければならない…。市場が縮小するなかでの各メーカーの生き残り戦略とは。

「ワークマン」が子ども服の市場に本格参入 “ついで買い”も視野

 今年2月、作業服メーカーの「ワークマン」が子ども服の市場に本格参入することを発表。
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 (ワークマン 土屋哲雄専務)「『ペアルックで着たい』という声が相当強かったのですが、必ずペアで着られる、こういう特徴がございます。(売り上げ目標)200億円までやります」

 ワークマンはこれまでの“作業服”のイメージを一新。2020年に参入した女性向けブランド「#ワークマン女子」で、30~40代を中心に女性客の取り込みに成功し、売り上げを約2倍に伸ばしています。

 (50代の客)「きょう初めて来ました。『いいよ』とは聞いていたんですが、こんなにデザインがかわいいと思わなくて、ついつい全部買いたくなりました」
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 今回参入した子ども服でもTシャツが580円(税込)。耐久撥水性で水陸両用のものも980円(税込)と、低価格を全面に押し出した商品が並びます。
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 (40代の客※子ども2人)「ついつい子どもの服もいいなって見ちゃいますよね。毎日ドロドロにして帰ってくるので、そういうのも遠慮なく着てねって言えますし、タフですしね」
 (30代の客※子ども1人)「高いものはなかなか買ってあげられなくて。物価も高くなっていて、育休中で、その分お給料も少ないので、ちょっとでも安くしていただけたらありがたいです」

 急速な少子化を背景にあえて今、子ども服に参入したのはなぜなのでしょうか?
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 (ワークマン広報部 伊藤磨耶さん)「一緒にキッズ製品も販売することで“ついで買い”も視野に入れております。お子さんは成長が早いので、そのたびに買い替えの需要がございますので、そういったところを取り込んでいければなと思っております」

インバウンドにも人気「ミキハウス」 海外の売り上げが国内を追い抜く

 一方で、海外に打って出る子ども服メーカーもあります。Tシャツが2万円台、シューズ1万円台と、決してお安いわけではありませんが、海外からの観光客がひっきりなしにやって来るのは「ミキハウス」。

 (カナダからの客)「ファストシューズから履き始めて、もう3~4足は履いてます。とても履きやすいので予算とかは考えていないです」
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 (中国からの客)「中国ではミキハウスのブランドが有名なので選びました。日本では中国より少し安く買えます」
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 (ミキハウス心斎橋大丸店 川南美恵店長)「心斎橋という土地柄、コロナ禍が明けてからは、またインバウンドのお客様が戻ってきてくださったという感じです。頭から足の先までっていう形でトータルで買って帰られます」

 ミキハウスの国内店舗はピーク時の2005年には189店舗ありましたが、子どもの数に比例するように減少していき、去年には約半数の99店舗に。一方で、海外店舗はここ5年で倍増し、去年、100店舗を突破し、売り上げは国内4割・海外6割と、海外の売り上げが国内を追い抜きました。

2010年の「上海万博」がきっかけで本格的な海外進出

 ミキハウスは1987年にパリに海外1号店をオープンさせると、イギリス・ロンドンの老舗百貨店「ハロッズ」にも出店しましたが、本格的な海外進出の足がかりとなったのは、2010年の「上海万博」です。日本産業館に出店すると、予想外の反響があったといいます。
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 (三起商行(ミキハウス)MD推進部 齊藤雅人部長)「上海万博に出店してミキハウスの従来のショップにお越しになるお客様が非常に増えて、こんな良いブランドがあったんだっていうことでお気づきになって、売り上げを伸ばしていった経験があったので、積極的に(海外)出店して舵を取っていこうという流れになりました」

 中国でのミキハウス人気はすさまじく、2015年の百貨店では、買って、買って、買いまくる、「爆買い」する中国人の姿もありました。
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 (中国からの客※2015年)「きょうは120万円以上買いました」

全社員の約1割が海外事業の主軸を担う“外国人社員”

 海外事業の主軸を担うのは、中国やベトナム出身などの社員。今では全社員の約1割を占めています。というのも、実は、進出した海外では店舗経営を提携する現地オーナーに委ねていて、重要な日本とのパイプ役を担っています。
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 中国・上海の店舗を担当している、入社4年目の常麗さん。この日は、リニューアルする店舗の内装を現地のオーナーに提案するため、社内の担当者と話し合っていました。設計図を見た常さん、気になる点があるようで…
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 (常麗さん)「シューズ売り場をもう少し…修正していただけますか?結構シューズが多いです、売り上げとしてもシューズの割合が多いから」
 (店舗設計担当者)「何%くらい?」
 (常麗さん)「30%…全体の30~40%」

 中国ではシューズが人気なため、売り場面積を拡大してほしいと要望。
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 (常麗さん)「ミキハウスのシューズは中国ですごく人気があるので、初めてのシューズなら必ずミキハウスのシューズ」

高級路線「ゴールドレーベル」 1着110万円の商品も

 海外店舗を拡大しているなかで、2022年に発表したのが、高級路線の「ゴールドレーベル」。ベビーカシミヤなどの素材を使っていて、一般的な商品と比べて約2~3倍高い価格設定です。
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 なかでも目玉は、アンデス山脈に野生する動物から採取した繊維“ビキューナ”を使用したセーターやマフラーなどの商品。お値段なんと…ベビーマントで税込110万円!目玉が飛び出るほどの高額商品です。

 3月7日、年2回の新作発表会が開かれ、国内の百貨店や海外店舗のオーナーたちが新商品の買い付けにやって来ます。
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 (韓国の店舗オーナー)「新しく出たものみたいよ。母親たちはこの裏地の感触が好きだと思います」
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 (パリの店舗オーナー)「この商品を一つずつ。(Q両方の色ですか?)ええ、重要な商品だわ」

 十数万円する「ゴールドレーベル」の商品も、次々と発注されていきます。希少な“ビキューナ”を使ったあの高額商品の反響は…?
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 (中国・北京6店舗のオーナー)「すごく優しくて、手触りがすごくいい感じです。(中国人は)自分の子どもに対して大事にして、もっといいものを使わせたい気持ちがあるので、みんな喜んで買うんじゃないかと思います」

 こう話す中国・北京店のオーナーは、今回、3000点以上発注したといいます。上海店担当の常さんは、現地のオーナーにリニューアル店舗の最終案を見せていました。
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 (中国・上海店舗オーナー)「すごくすてきなお店が出来上がりました。以前のお店はシューズ売り場が小さかったので、今回のリニューアルで売り場を増やした提案をしてくれて、とても満足しています」

 常さんが提案したシューズ売り場の拡大は喜ばれたようです。
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 (中国・上海店舗オーナー)「常さんからいろいろアドバイスをいただき、今の店の売り上げに繋がっています。とても感謝しています」
 (常麗さん)「うれしいです」

 ミキハウスの社長は、今の状況は想定外だといいます。
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 (ミキハウスグループ 木村皓一社長)「海外50%、国内50%と思っていましたけど、今は海外60%以上になってしまって、やはり考えていたよりも、日本の出生人口がちょっと減りすぎたかなと。今アジアの人が多いので、もっと全世界のみなさんに使っていただけるようになればなと思っています」