大阪・梅田に今年3月、レコード専門店がオープンしました。長らく低迷していたアナログレコードですが、2023年には62億円の生産金額を記録。なぜいまレコードが人気なのか?その背景を探るため、多くの人でにぎわうレコ―ド専門店の1日を定点観測しました。

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 1970年代から1980年代後半にかけて“アイドル黄金期”と言われたこの時代。当時は“レコードブーム”の真っ只中、多くの人が音楽を楽しむため、夢中になりました。そんなレコードがいま時代を超え“令和のヒット商品”に。

 今年3月には関西初となるタワーレコードのレコード専門店「TOWER VINYL(バイナル)梅田店」がオープンしました。

店内には約3万枚のレコード!大半は中古ではなく新品

 お店があるのは阪急・大阪梅田駅すぐそばの「NU茶屋町」内。午前10時。1時間後に迫ったオープンに向けて準備を開始します。
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 (TOWER VINYL梅田店 米山大紀店長)「(Q店内のレコードの数は?)約3万枚のレコードを在庫しています。新品が2万5000枚で、中古が5000枚を取り扱っています」

 中古のイメージが強いレコードですが、このお店の大半は新品。毎週30タイトルほどの新商品が入荷します。テイラー・スウィフトやブルーノ・マーズといった最新の曲だけではありません。
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 (TOWER VINYL梅田店 米山大紀店長)「昔のアーティストもアルバムを出しなおしていて。YMOだったり杏里とか、この辺は昔のものが出しなおされたものです」

 昔のレコードが“新商品”として出しなおされるケースも増えているんだそう。

22歳「面倒くささがあるけど、その時間は音楽に没頭できる」

 午前11時、お店がオープンしました。すると早速、若い男性がやってきました。真剣に何かのレコードを探しているようです。

 「(Qレコードはよく聴く?)そうですね。最近ハマったんですけど。いろんな店を見に行っています。80年アイドルとかが好きで、興味を持って。もともとは全然知らなくてYouTubeとかからハマった。(Q今は何歳?)22歳です」

 いま夢中になっているという80年代アイドル。その時代を知らなくても当時の懐かしさなどを感じられるのがいいんだそうです。

 「一番好きなのは明菜ちゃん、中森明菜さんですかね。『スローモーション』とかが好きです」

 スマホで簡単に音楽が聴ける時代にあえてレコードを求める理由は?
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 「レコードってスマホに比べて若干面倒くささがあると思うんですけど、逆にその時間はその音楽に没頭できるみたいな時間があるのがいいかなと思います」

あなたはなぜレコード店へ?「サントラを探しに」「レコード独特の香り」

 オープン後の店内は多くの人でにぎわいます。目的は人ぞれぞれ。

 「ルパン三世のサントラとかを探していました。再放送で見ていたので。子どもの時に。音楽がいいなと思っていたので」
 「レコードの独特の香りがあるじゃないですか。あれを久しぶりにお店でレコードを聴いて、またほしいなと」
 「ジャケ買いじゃないですけど、ジャケットでかっこいいのがあったら中身も聴かずに買ったりとかはたまにありますね」

 昨今のレコードブームもあいまって店内には…
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 (TOWER VINYL梅田店 米山大紀店長)「中古盤ではALEX BROWNの『In Search Of Love』がいまお店にある中で一番高い商品になります。税込み価格22万円。すごくレアな商品になるんですけど。1970年にリリースされたアメリカのソウルシンガーなんですけど、いわゆる宣伝用に配られたものしか存在していないと言われていて、一般に流通していないということで特に価値が上がっていますね」
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 午後0時30分。店内に仲が良さそうなカップルがいました。最近になって誕生日祝いにレコードプレーヤーを買ったんだとか。

 「お祝いに父親から1枚だけレコードをもらってそれしかなくて、追加できょう買いに来ました。『ホテルカリフォルニア』ってやつ、それ1枚だけをずっと聴いているんです」

 そんな2人が初めて購入するレコードは?
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 「レコードプレーヤーを買ったら絶対にQUEENのアルバムを買おうって話をしていて、きょうやっと見つけたので。今回買うのは王道な曲がいっぱい入っています。サブスクや電子だとシャッフルとかで自分好みの曲とかを選んでくれるけど、こうやってちゃんと1枚のアルバムをしっかり聴きながら、音楽を聴く時間をもてるのはすごくいいなと思います」

「アメリカでは80~90年代の日本のシティポップが人気」

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 来店客の約2割が外国人観光客。海外でも日本の曲はとても人気なんだそう。アメリカから来たという男性に話を聞きました。

 「これは私のお気に入りの曲。杏里、Cindy、亜蘭知子」

 スマートフォンの画面を見せてもらうと、自身で作ったというプレイリストには日本の曲がいっぱいです。
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 「松下誠のアルバムを探していたんだ。松下誠の音楽はすばらしい。とても良い音だよ。アメリカでは80年代や90年代の日本のシティポップがすごく人気。山下達郎など彼らの古いレコードを聴くと、まるで新しい音楽をもう一度聴いているような気分になるんだ。日本の80年代・90年代のレコードは30枚くらい持っているよ」

レコードに興味を持つ高校2年生の娘と来店

 午後3時30分、店内に親子の姿がありました。

 (娘 高校2年生)「私が最近聴いている洋楽のやつもある」
 (父)「洋楽何か聴いているの?」
 (娘)「たまに聴く。好きなバンド」
 (父)「へー」

 なぜレコード店にやってきたのでしょうか?

 (父)「娘がレコードほしいと言うのでちょっと見てみようかと」
 (娘)「昔の曲とかにハマっていて、それでレコードほしいなと思ったんです」
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 ただレコードプレーヤーは家にはなく、今度の中間テストを頑張ればお父さんに買ってもらえるんだって。
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 (父)「平均70点がとれたら考えようかなと」
 (娘)「勉強、今めっちゃ頑張ってます」
 (父)「エサにつられて」

お気に入りは人それぞれ どんな音楽が好きですか?

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 光GENJIに夢中だった姉妹。最近になってレコードプレーヤーを購入したそうです。

 「当時、レコードのデッキがないけど光GENJIのレコードだけ買っていたという感じで。それをずっと何十年も置いていて、いま聴けるという。だいぶ寝かせました」
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 宇多田ヒカルのレコードを手に取る若い人がいました。

 「最初に聴いて好きになったのが宇多田ヒカルの『Flavor Of Life』。小学生やったんですけどすごく曲がいいなと思って、いまでも好きです」
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 母親の影響でパンクロックにのめり込んだという人も。

 「人間らしい激しい感情を表しているパンクロックがめっちゃ好きで。レコードは手間をかけて聴くけど、生々しい音が聴ける利点はすごくデカいと思います」
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 そして午後8時30分。営業時間の最後にやってきたのはマレーシアから来た観光客。

 「スタジオジブリ。友達が好きなんだ」

 ジブリが好きだという友達のためにレコードを日本のお土産にするそうです。

 時代をこえて多くの人に愛され続けるレコード。店内の照明が落とされて、レコード専門店の1日が終わりました。