20年ぶりの新紙幣の発行がいよいよ1か月後となりました。新紙幣の流通に向けた準備は進んでいるのか?飲食店や企業に聞いてみました。
20年前…新紙幣に関連した街が沸き立った!
7月3日、装いが新たになった1万円札・5000円札・1000円札の流通が始まります。
(麻生太郎財務大臣 ※2019年4月当時)「新元号の下での新しい日本銀行券にふさわしい人物と考えております」
紙幣の刷新は20年ぶり。前回はというと、1000円札に採用された野口英世の故郷、福島県猪苗代町の銀行に長い行列が。さらに野口英世のそっくりさんも登場しました。
“新紙幣熱”は関西でも。1万円札の裏側に平等院の鳳凰像が描かれたことから、京都府宇治市の旅館や飲食店では1万円均一キャンペーンを行うなど、“1万円の街”として盛り上がりました。
ただ、その一方で流通から2か月経っても新紙幣の対応が追いついていない場面も見られました。
食券の券売機を早くも新紙幣対応に コストかかっても替えるメリットは?
あれから20年。新紙幣の流通を目前に準備はどこまで進んでいるのでしょうか?やってきたのは大阪市福島区にあるラーメン店「中華そば 無限」。こちらの店では今年5月に券売機を新紙幣対応に更新しました。部品交換にかかった費用は25万円ほど。去年から毎月コツコツと貯めたそうですが、この出費は仕方ないと話します。
(店主 岡田久さん)「お札の通り道があるんですけど、その機械をユニットごと全部交換したんですよ。去年の秋に予約して、先月に交換したという形です。新札が使えませんと説明するのにかなり人件費がかかるんですよ。説明するのに仕事の手が止まりますのでね。スタッフを増員するかもしれないとなると25万円は安いですね」
「メーカーの製造が全く追いついていない」
券売機を販売する「エルコム」も対応に追われています。この会社では、飲食店や自治体などと取り引きをしていますが、今年度に入って問い合わせが増加。課題も出てきているといいます。
(エルコム大阪営業所 楠元優所長)「メーカーさんの製造が全く追いついていない状況で。うちが20台とか30台発注しても、実際に入荷するのは5台ずつとか。機種によっては入荷が年明けというのはありますね」
今ですら対応に追われている状況ですが、新紙幣が流通すれば、今後さらに問い合わせが増えるのではないかと危惧しています。
(エルコム大阪営業所 楠元優所長)「思った以上に紙幣の流通が早かったパターンの時が一番しんどくなるのかなと思いますね。お客さんも『早くして』と言ってくると思いますし、メーカーも出荷できないとなってきますし」
機械の更新を諦めた店、キャッシュレスのみにした店も
そうした中で、機械の更新を諦めた人も。大阪市北区の酒店「伊吹屋」では、店先に自動販売機3台を設置していますが、費用面から2021年の新500円玉にも未対応。紙幣が刷新される今回も、今のところ更新の見込みはないといいます。
(伊吹屋 小牟礼隆之さん)「替えなきゃいけないのかなと思うんですけども、いかんせんコストが…すごくいくと思うんですよ。自動販売機3台やったら60万円70万円でしょ。無理ですって。新紙幣はうちの店の中で両替するという対応をとるしかないですよね」
そうした中で東京都品川区にあるコインランドリーでは新紙幣発行を機に大きな決断をしました。
(TOSEI 塚本広二さん)「また新紙幣が発行されますと機械を替えないといけない。そのたびに膨大なコストがかかりますので、キャッシュレスのみにしました」
発行に伴って大きな手間と費用がかかる新紙幣。なぜ、そこまでして発行するのか?経済の専門家はこう話します。
(第一生命経済研究所 永濱利廣さん)「前回の新紙幣刷新の時も現金から違う金融資産に結構動きましたので。そこをさらに後押しする効果が期待できると思います」